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うろろんとまものくん

「うろろんろん」
うろろんが大好きな、メロンパン。
近所のパン屋さんが新装開店したので、買って貰ったのです。
前と同じ味かな、それとも、おいしくなってるかな。
ぱくり「うろろん!」
前と同じ味!だけど、ちょっと美味しくなったかも。
あと、少し、小さくなったかも? 

「…」

そんなうろろんを、物陰から見ている存在があります。
そいつは、うろろんが大事に、少しずつ、美味しそうに食べているメロンパンが、気になって仕方がないみたい。
「…うろろん?」
うろろんは、半分くらいメロンパンを食べたところで、その視線に気がつきました。
きみ、だれ? 

そいつは、ちょっとうろろんに似ていて、うろろんと同じくらいの大きさ。
うろろんと違うのは、にょきっと手が二本、生えていること。
ぐりっとした目で、じいっと、うろろんが手に持っているメロンパンを見ています。
「…ろろん?」
これ?欲しいの?
と、うろろんが差し出してみると。 

「うろろーん!うろろん!」
なんと、うろろんが大事に食べていたメロンパンを、にょきっとした手で奪い取ってしまったのです。
「ろろん!ろん!」
そして、がぶり!と、大きな一口で食べてしまいます。
「…うろろん」
大事に食べてたメロンパン、なくなっちゃった。しょんぼり。 

メロンパンをぺろっと食べてしまったそいつは、満足そうに手に残った砂糖粒を舐めています。
みなさん、もう分かったでしょう?
こいつの正体は、まもの
みんなの欲しいものが欲しくて、奪い取ってしまうんです。
「うろろん?」
メロンパン、おいしかった?
まものは、こくりと頷きます。

あのね、あれ、メロンパンっていうの。
うろろん、あれ、大好きなの。
まものくんは、メロンパンって、食べたことあった?
「ろんろん?」
まものは、ふるふると横に震えます。メロンパン食べたの、初めてなんだって。
「うろ、ろん」
おいしかった?
「…ん」
こくり、と、まもの。 

次の日、うろろんとまものは、一緒にメロンパンを食べました。
今度は最初から、半分こ。
「ろん、ろん」
半分こなら、半分しか食べられなくても、おいしいね。
「うろ、ろん」
まものくんは、手が二本もあっていいな、と、うろろん。
それから、まものとうろろんは、友だちになりました。 

<SpecialThanks だくてんまる様>

参考:
まものがたり | だくてんまる http://www.pixiv.net/member_illust.php?illust_id=58861083&mode=medium

まものがたり2 | だくてんまる http://www.pixiv.net/member_illust.php?illust_id=58861195&mode=medium

まものとりんご | だくてんまる http://www.pixiv.net/member_illust.php?illust_id=59494913&mode=medium

まものととけいのはり | だくてんまる http://www.pixiv.net/member_illust.php?illust_id=58923778&mode=medium

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