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超巨大生物発生時における民間の保険会社の対応に関する推察/ゴジラに保険はききますか?

なこです。こう見えても、保険会社で働いていたことがあります。

ところで、『シン・ゴジラ』をご覧になった皆様の中には、こうお考えの方も多かったのでは。

「ゴジラって、保険きくの……?」

と。

俺の家、俺の車、ゴジラに踏まれたらどうしよう、と。

そこで、一般のひとよりは多少は保険のことを知っているなこが、ゴジラなどの超巨大生物が発生した時にはどうなるのか、ざっくり解説していきます。

※ネタバレが若干含まれますので、未見の方はご注意ください。

<はじめに>

保険専門用語について。

保険金:家が壊れたり車が壊れたりした時に、保険会社から支払われるお金のこと。

(保険契約者が保険会社に払うのは「保険料」)

保険証券:保険を契約した後に保険会社から渡される、個々の契約の内容が記載されている書類。ぶっちゃけ、なくても色んな手続きはできます。

保険約款:保険の内容について詳しく書いてある冊子。だいたい字が小さい。

特約:スタンダードな契約プランにプラスオンして、保険契約の内容をアレンジする「特別な契約」のこと。おおまかには、支払い可能な範囲が広がるが保険料が上がる「拡大特約」と、範囲を狭めるが保険料が下がる「限定特約」の二種類がある。


<保険全般についての話>

保険がきく(=保険金の支払対象になる)ことを保険会社の人は「有責」といいます。

保険がきかない(=保険金の支払い対象にならない)ことは「無責」または「免責」です。

そして、あらゆる保険について言えることは、保険約款において「免責」である、と明記されているものに関しては、保険がききません。

これは、保険約款の一番最初の方、または、目次のあたりにある「重要事項説明」っていうところに書いてあるので、保険にご加入の人は確認してみてください。

保険にもいろいろありますが、大体の保険が「免責」である、としているのは以下のケースになります。

・地震

・津波

・噴火

・戦争や紛争

つまり、災害の規模が大きくなりそうなときは無理ですよ、ってことです。

なので、ゴジラで保険が使えるかどうかは、ゴジラが上記のうちのどれかに当てはまるかどうかで決まります。

そして、映画をご覧になった方は御存知の通り、ゴジラは「自然災害」でもなければ「戦争」でもない、という解釈を官僚の皆さんがしていましたよね。

そう、ゴジラは有責なのです。

ただし、あなたがご加入の保険約款の免責条項に「超巨大生物による被害」等の文言がなければ、ですが。


<保険の種類ごとに、具体的に考えてみる>

1.生命保険

生命保険にも数種類ありますが、ここでは「死んだら死亡保険金が出る」タイプの保険に限って考えてみます。保険レディのおばちゃんが売りに来るやつです。

あと、住宅ローンについてる団体信用生命保険(団信。死ぬとローンがチャラになるやつ)もここに含みます。

結論から言いますと、これはたぶん出ます。

前述した通り、ゴジラは免責条項に含まれないからです。

余談ですが、大手生命保険会社各社は、東日本大震災では免責でありながら例外的対応として地震や津波による死亡を支払対象としました。

ただ、東日本大震災以上の被害規模と見込まれるゴジラ襲来。

保険金払いまくって、保険会社が潰れないの?っていう話は、またのちほど。


2.損害保険

損害保険っていうのは、わかりやすく言うと「モノ」にかける保険です。

自動車にかけるのは自動車保険。

これは、自分の車両の被害をカバーするもの、対人事故で相手の治療費をカバーするもの、対物事故でぶつかった塀や車の損害を賠償するもの、車に乗っていた人の治療費をカバーするもの、などいろいろあります。

今回のケースですと、アクアラインで自動車を置いて避難して、その後車が水没してこわれた!または、都心を移動中に車を乗り捨てて避難したら、ゴジラに踏まれて壊れた!なんてことになれば、車両保険で対象になるかもしれません。

お家にかけるのは火災保険。あ、火事じゃなくても対象になりますよ!

ただし、火災保険の場合、どんな場合に対象になるのかが契約ごとに異なるので、これはご自身で保険証券をご確認下さい。たとえば、火災・落雷・爆発・風ひょう雪災のみが対象の保険の場合は、それ以外の被害では保険金が出ない、ということです。

かなりしっかりとした契約で「偶然の事故による被害」までを支払いの範囲として契約しているとしたら、ゴジラが来ても火災保険で対応できそうですね。

損害保険には生命保険と異なり、事故について「急激・偶然・外来」の三要素を満たさなくてはいけない、という前提があるのですが、これも、ゴジラは急に来たし、たまたま自分の家や車がゴジラの進路にいて被害にあったわけだし、ゴジラは海から来たし、おっけーそうです。


3.第3分野の保険

第3分野の保険っていうのは、わかりやすく言うと個人の病気や怪我について保険金を支払う保険のことです。

主に入院や手術を補償する医療保険、怪我を補償する傷害保険、怪我や病気で働けない時に保険金が出る所得保障保険、などです。

特徴としては、生命保険会社でも損害保険会社でも扱っている、というところ。

これも、重ねてのご案内になりますが、免責条項に当たらなければ対象です。

ただし、一部の保険では「放射線被曝」が免責になっているため、例えばゴジラによる強い放射能を浴びたことで白血病になったら、免責になるかもしれません。

<ゴジラが来た時の保険金の支払いは、本当にできるの?>

東京、壊滅してましたね……。

ただ、大手の保険会社はどこも、全国に拠点があるので、おそらく他の地方にある拠点でカバーできると思われます。

最近のトレンドは大規模災害対策ということで、一つの拠点が使えなくなっても、他の拠点で同等のサービスができるように、全国に人員を分散させたり、書類関係をオンラインで見られるようにしている会社も多いようです。

(東京にしか拠点のない、少額短期保険会社などだと、復旧するまで難しいかもしれませんが……)

実際の保険金の支払いについては、おそらく、想像されているよりもスムーズかな、と思います。

大規模災害の時は、通常の手続きの時に必要な書類が一部省略できたり、行政の方からも様々な配慮がなされるはずなので、落ち着いて手続きしてくださいね。

<ゴジラの被害で保険金を払ったら、保険会社は潰れないの?>

潰れないといいなあ……。

でも、ご安心ください。

ご加入の保険会社が潰れてしまっても、その保険が全くの無駄になってしまうことはないんです。

基本的には、資本に余力のある保険会社が保険契約を引き継いで保険金を支払ってくれますし、万が一、日本中の保険会社が破綻してしまっても、「生命保険契約者保護機構」という機関が保険会社に代わって保険金の支払いに責任をもってくれる、ことになっています。

なので、まあ、日本が滅亡しなければ大丈夫。

ただし、加入していた保険会社が破綻してしまった場合、若干保険金が減額されることもあるそうです。


<ゴジラが来たあとの保険会社の対応>

ゴジラが来たあとに作られる保険は、基本的に超巨大生物の来襲及び攻撃による被害についてはすべて免責になると思われます。

当然ですよね。

もしまたゴジラが来たら、保険金支払いまくるの、むりだと思いますし。

もしかしたら「超巨大生物による被害も補償する特約」みたいな特約ができて、それをつけたらゴジラの被害もカバーしますよ、なんて保険もできるかもしれないですね。

(もちろん保険料は上乗せされます)


<その他行政サービスについて>

死亡証明の迅速な発行や、被災証明の発行、及び、生き残った被災者へは税や国民健康保険や国民年金の減免および納付猶予等の配慮があると思われます。

死亡証明があれば死亡保険金の支払いのための手続きができますし、被災証明があれば火災保険の支払いのための手続きができます。

被災者の医療費の当面の無償化や、将来的には労災保険から業務中に被爆した人たちへの医療サービスの提供も行われると考えられます。


<地震保険でなんとかならないかな……?>

大きな爪痕を首都圏に残したゴジラ。

でも、限定的な火災保険や地震保険では対応ができなさそうです。

ただし、被害の大きさと被災者の生活の再建のために、政府が特例として地震保険を今回のゴジラ被害の対象とせよ、なんていう特別法を発令するかもしれないです。

地震保険って、保険会社の儲けはほぼゼロで、政府の代わりに火災保険と一緒に民間の保険会社で募集してるっていう感じでして。(なので、どこの保険会社で加入しても地震保険に関しては保険料は同じです)

まあこれは、あくまでも希望的観測として。

というわけで、ざっくりとゴジラと保険について、ご案内いたしました。

なるべく業界用語を使わないで説明したつもりですが、分かりにくいところがあったらご遠慮無く聞いて下さい。
また、このnoteを読んでくださった方々が、ご自分の保険について改めて考える機会になれば、とても幸いです。

最後にもう一度。

ゴジラは有責!

(ただし、個々のご契約内容によって異なってくる場合がありますので、今一度お手元の保険証券および約款をご確認下さい)

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