編集とは大きな暗闇に光を当てていくような作業だと思った -仕事百貨の編集ゼミに参加して

先々週、(もう2週間たつのか…)日本仕事百貨の編集ゼミに参加させていただいた。感想を書いておこうと思いながら時間が経ってしまって反省…。思い起こしながら振り返ってみようと思う。

日本仕事百貨は、たまたま見つけた求人サイト。かれこれ3〜4年ほど、たびたび訪れている。記事に優しい雰囲気が漂っていて、特に仕事を探していなくても、読み物として楽しませていただいていた。こんな仕事があるのね、このお店にいってみたい、などと呑気に思いながら。

わたしは息子を授かったことを機に、1年ほど専業主婦をしている。息子はくる4月から保育園に通う予定で、また仕事を始めようと思っていた。漠然と、書くことを仕事にできたら、と考えていたら仕事百貨の編集ゼミの開講を知った。なんてタイミングだ、と参加を決める。

お義母さんと夫の協力を得て、都内の夫の実家から3日間のゼミ通うことになった。こんなにも息子と離れるのは、はじめての経験。そして社会、的なものに参加するのも久しぶりすぎて、どぎまぎしながら出かけるわたしを横目に、楽しそうに見送る息子。嬉しいけどちょっと複雑な気もする。

そんなこんなで、久しぶりに通勤電車なるものに乗り、ゼミが開催される清澄白河のリトルトーキョーへ向かう。

緊張をよそに、ゆったりとした雰囲気でゼミは始まった。1日目は、仕事百貨の編集についてのマインドを受けて聞くことに徹し、2日目はインタビューと記事執筆の実践、3日目は完成したものを読む、というもの。わたしのちっぽけな身にはとても余る、刺激たっぷりの3日間だった。

1日目、聞く日。編集長の中川さんは、編集のことを山、と言った。頂上までのいいルートを見つけて、それを読む人に伝えること。最短が必ずしもいいわけではなく、途中には絶景スポットや急な坂、穏やかな道なんかがあるかもしれない。どこを選ぶかで、見える景色や匂い、感じ方が変わってくる。

私にも、ゼミを終えたあと、しっくりくる比喩が見つかるといいな、と考えながらインタビューの実践が始まった。20名ほどの参加者と代わり番こでペアになりながらインタビューしあう。単純に、参加しているみなさんの好きなもの、こと、人生、を聞くことが楽しくてついついインタビューだということを忘れてしまう。でもきっと、心から相手を知ろうとすることって、こういうことなんだろうなと、仕事百貨のマインドを受けて思う。

2日目、書く日。インタビューから文字起こし、構成、編集。ハードだったけれど、書き始めると結構スムーズに進んだ。印象的だったことを中心に言葉を並べていたら、構成のようなものができた。編集長の中川さんに見てもらえた。さっと目を通しているのに、的確にアドバイスをいただけた。すごい。私は読むのも考えるのも時間がかかってしまうので、どう読んでいるのだろうと後から聞いたら、書くことと読むことはどちらもを繰り替えすことによって、自分のスタイルというものが作られていく、ということだった。書く力と読む力はお互いに磨きあっていく。

アドバイスを受けて、構成に肉付けをしていく。ふと、目の前の席に座ってインタビューしたぺアの方を見る。文章を書きながら私はその人のことを思い、同じようにペアの方もきっと私を思って書いているんだよなあ、と思うと不思議な気持ちになった。

なんとか記事のようになったので、この日は区切りをつける。帰って布団に入ると、ことばが、ああでもない、こうでもないと頭の中をぐるぐるとしている。きっと、文章を書くということは、ずっとこういうことの繰り返しで、終わりがないんだろうな。でも、そういう、文章のことを考えているのはとても楽しかった。

そして迎えた最終日、読む日。何名かの方の記事を、正面のスクリーンに映し出してみんなで読む。みんな素敵な文章すぎて、たじろぐ。果たして、わたしの書いたものは、文章として成り立っているのか。

そもそも、わたしにとって書くことは、とても個人的なもの。文章を人に見てもらうのは、本棚を見せたりプレイリストを見せたりするぐらい恥ずかしいし、怖い。でも同時に、外に放ちたい気持ちもある。思えばずっと、あった。読み物と近い仕事をしたりしながら、実際、書くことはずっとできなかった。勇気がなかった。

そんなことに思い当たりながら、参加者でペアになって文章を読んでもらったり、編集者の真利奈さんに文章を読んでもらったりする。自分が書いたものを誰かに読んでもらうのはとても勇気が必要だったけれど、自分以外の視点で読んでもらうことで、なんとなく置いた言葉の雑味に気づけたり、流れを堰き止めていた石ころのような言葉が整理されていく。文章の流れがスムーズになっていく感覚がわかった。すごい。途中、好きだといってもらえた文章の一節が勇気をくれた。アドバイスをもらいながら、また書きたい気持ちが膨らんでいく。読んでもらって、よかった。

宿題をいただいて、3日間の日程が終わった。たった3日だったけど、同じ濃厚な時間を過ごしたから、参加したみなさんに勝手に一体感みたいなものを感じていた。暖かい空気が流れるリトルトーキョーを離れるのが名残惜しかった。また、みんなと会えたらいいなあ。そう思いながら、帰路につく。通常運転に戻っていく我が家。溜まっていた洗濯物を干しながら、遊んでいたはずの息子に目をやると、なんとはじめてのひとり寝をしていた!息子もこの3日間で成長していたようだ。


ゼミを終えて、ひとつのものを書き終えてみて、わたしにとっての編集は、暗闇のなかに光を当てる作業みたいだなと思った。取材対象の全てを知ることも、全てを伝えることもきっとできない。宇宙みたいに大きくて。文章というツールを使って、その大きな暗闇に光を当てて、相手の姿を映し出していく、みたいな感覚だった。正解はわからないし、自分の書いたものが文章として成り立っているのかは今もわからない。でも、ひとつのものを書けたということが、わたしに勇気を与えてくれた。

今回のゼミで貴重な場をいただいたことを感謝して、自分なりの、書くことを続けていきたいと思った。

またみんなに、会えるといいなあ。

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