読書と感想の季節

こんばんわ。
本の感想、です。


米澤穂信先生の作品
『本と鍵の季節』と『栞と嘘の季節』を読みました。
米澤穂信先生の作品は、氷菓から入り
古典部シリーズと小市民シリーズを読んでいます。

まず『本と鍵の季節』『栞と嘘の季節』まとめて
【図書委員シリーズ】とシリーズ付けつけられましたね。
主人公は「堀川次郎」の主観で進みます。
観察と言葉や行動の裏の真意に鋭く、
本人は善意や正義感で動いているつもりではなくても、
根本は正義感が強く人に寄り添う≒人をぞんざいに扱うことはしないタイプです。
個人的には中学生のころ読んでいた「三毛猫ホームズの推理」の作者である、赤川次郎先生に名前が似ているのでなんかすっと入りこめました。
ややお人よしで温和な性格も片山刑事似…はさすがに考えすぎか。

相棒として「松倉詩門」
彼はどちらかというと行動派、積極的にというわけではないですが、
目的のためなら多少の手段は選ばない風に見えます。
行動派ですが、主人公の堀川と同じくらいの推理力を発揮、差異は情報の差だったり着眼点だったり。

内容については詳しく書くとネタバレになってしまうので書きませんが…
この「堀川」と「松倉」のスタンスと性格が見事に微妙なずれを持っているにもかかわらず、きれいに推理が進んでいくのが心地よいですね。
出てくる情報のほとんどに無駄がなく、羅列で出てくる必要のない情報は「この情報は特に着眼するものではない」と結構親切に書いてあるので、推理の邪魔をしない。
それなのに気付き辛い角度で出されているヒントから物語が進み、解決へと進んでゆく。
図書委員シリーズと銘打つだけあって、本も何冊かタイトルが出てきますが、内容に沿って何かが起こることはないので詳しくない人にも優しい。

面白いのは、この主役二人が全く油断しないこと。
もっと気を抜くときはあるだろうと思いつつ、必ず何か違和感を感じている。
そしてさらに、この二人は互いへの信頼はありつつもただで信じるというわけではないところ。
表面上受け取るが、違和感は必ず覚えている。
事件が主役の外側だけではなく、主役二人の事情にも絡んで進んでいくので、なんで関係ない事件に首を突っ込みの?と感じにくい。

2冊とも読んで「嘘」がかなりのキーワードになっていると感じました。
物語の事件には必ず本当の気持ちがあってその筋に沿って動いています。
そしてそこをそらすために嘘をつく。
その嘘から、少しずつずれた違和感の正体をこの二人は追っていき、やがて真意にたどり着きます。

また「嘘」はついていなくても「本当のこと」は喋っていないというシーンもいくつもあります。主役二人にも。
当然そこには秘匿したい事情や心情等、聞けば納得できる理由があり、
どうしても行き詰ったときに内側を探すことで新たな突破口が見えてきたりします。

構成としては本当に「こんな小説書いてみたい!」のお手本で、
一度出た情報も後に出た情報が1ピース加わるだけで新たな方向に導いてくれたり、仮置きした仮定もあっていることもあれば覆されることも大いにあります。
無駄な部分を省いているからか、進み方から解決までがとにかく華麗なのに、不自然には感じない無理な理屈を感じづらく、作者の事情が見えない意味でとても入り込みやすかったと感じます。

結論、とても面白かったです。

図書委員シリーズの次のお話も楽しみです。
もちろん古典部シリーズも小市民シリーズも。

古典部シリーズや図書委員シリーズは普段推理小説を読まない方もかなり気軽に読むことができる作品だと思います。
興味がある方はぜひ、お手に取ってみてください。

…僕は電子書籍でしたが。

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