【短歌連作30首】かにかまグルーミング

ありがちな燃料を汲みつづけても防げないからひどい寒空

見惚れていたら古くなる雨 古い愛 縁起の良さで脳がもちきり

留守番の椅子の冷たさ噛みつぶすみかんの歯ごたえも虫めいて

泣き踊る夜はおいしい霜味のアイスクリームのようにおいしい

しきぶとん下にとろけるまどろみのちぎれる時はお菓子の重さ

長い冬 こぼされるみず 長い春 よだれかけのはためき 長い冬

客席で季節がひとつ溶けるまで 合唱部員のひらかれた口

人のかたちの布屋さん見たあとはパフェのかたちのぐちゃぐちゃ屋さん

落ち着いてください、の声 もうろくの光 からだに掛けられる水

器からあふれたときの綺麗さでそのまま戻らないで戻らんで

grooming   ぼくがわたしがあたしがおれがひとつになだめられる物語

いっせーのっで歳を取るのにいっせーのっで死ぬのははしたない そんなのって………………

真似っ子のうそつきガールとほんものの正直ガールが出会ってしまう

たてがみを窘めている者同士メイド喫茶で落ち合う手はず

かにかまやプリクラを縦に裂くとき楽しく なく ない? 歯を食いしばれ

スノードームで殴りつけたら血と水と白いキラキラしたものまみれ

ミー・ミーツ・ミーだと語感わるいから流行らないんじゃないって言われた!

電話ボックスが倒れて内臓のように飛び出る電話帳なり

あみだくじには行き止まりなし 舐められた乳首ならやさしく洗うだけ

---✂︎---ダメPassionのキリトリ線---✂︎--- 虹色のぬいぐるみはやたらに目がでかい

金塊と人工少女の人工の歌声混ざりゆく新時代

なりそこないの雪であたまを濡らしつつえれくとりっく・えんじぇうの予知

毎日がたからものです電灯で老婆が照らしだす氷道

好きな人が煙に、でなく煙から好きな人ができたっていいでしょ

出て行かない涙が眼球の底でやぶれかぶれの遊園地になる

僕が見ている僕が見ている僕が見ている僕が見ている僕

全力の死生観なら全力で ホワイトハウスのかたちのケーキ

誕生日プレゼント専門店に昨日のカニバリズムの再来

出口にはドアノブは無い 下の階に 目覚めたらまた下の階に

鏡とのキスで呪いを解くようなおとぎ話に僕がなるだけ


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