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ニューヨークからの贈り物

メトロポリタン美術館展
もう行けないと思ってた。
でもどうしても行きたかった。
だから行ってきた。
美術館はそれはそれは大勢の人で賑わっていて、芸術の力をまじまじと見せつけられている気がした。
コロナなんてもろともしない、そんな偉大な力を。
あまりにも人が多いためか、時間ごとに入場制限が設けられていた。
30分ごとに更新される入場時間と、列の長さ。
ついさっきまで最後尾にいたはずの私の目の前に、いよいよ入り口が近づいてきた。
600円を支払い、音声ガイドを手に入れ、私は西洋500年の歴史と対峙した。
メインビジュアルのカラヴァッジョ作“音楽家たち“ ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作“女占い師“が並ぶ。
メインビジュアルになるだけあって、一目見ただけで視線が固定された。
カラヴァッジョ、人生はあんなに破滅的だったのに目の前に描かれた少年の耽美さに驚きと感動に包まれる。
さて、圧巻の存在感を放つベラスケス作“ある男の肖像”、大好きな奥さんをモデルに描いたレンブラント作“フローラ”に足をすすめる。
レンブラントと奥さんのエピソードを聞いてから見るこの作品。レンブラントの愛妻家っぷりとラブラブっぷりにクスッと笑ってしまった。
次は、緻密に計算された構図と画力で見るものを釘付けにしたルーベンスと、静寂な風俗画が日本人に大人気のフェルメール唯一の寓意画を目に焼き付ける。
フェルメールのこの時が止まった感覚になるような品のある絵画。
きっと擬人化したら素敵な女性なんだろう。
人の波に押されてたどり着いたのは、破天荒さで有名なクールベ先輩。セルライト増し増しに描かれた若い女性の絵画を前に尊敬の念を抱く。
イギリスの大天才、ターナーのヴェネツィアの風景画は、行ったこともない土地の風を感じた。
そして数々の感動を既に覚えていた私はついに印象派のコーナーに足を踏み入れた。
ルノワールの絵画とは思えない美しい透き通った肌をもつ“海辺にて“の美少女、モネの代名詞とも言える“睡蓮“の圧巻のオーラを感じ、そしてなにより1番大好きな画家であるエドワード・ドガ作“踊り子たち、ピンクと緑“を前にする。
こんなふざけた題名つけやがって、相変わらず踊り子の目線はこっちに向いてない覗き見みたいな構図だし、油絵なのにパステルみたいなフワフワした表現するし、それでカメラで撮ったみたいな動きのあるデッサン。
全てが最高だった。
もう、作品の前から離れることができなかった。
離れて、私。
時間が迫ってるから。
となんとか言い聞かせて、出口を探す。
あぁ、やっぱり来てよかった。
美術はいつでも私の味方だ。

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