麺の「伸び」ってなに。
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麺の「伸び」ってなに。

中沢製麺 代表取締役 中澤健太

よく飲食店さんなどから「伸びない麺が欲しい」などと要望を貰うことがあります。 「麺が伸びない=良いこと」という考えで凝り固まっている方もいるのでこんな記事を書いてみました。

そもそも麺が伸びるってどういうことでしょうか。麺が伸びるというのは麺がスープを吸うことなどで「麺断面の中心部と外側部の硬さが同じになってしまうこと」です。逆にいうと中心が硬くて外側が柔らかいというギャップで「この麺はコシがある」だとか「硬い麺だ」と思うわけです。

実はこの感覚は普通の方が思っているよりもとっても主観的なもので、やわやわの麺でも中心と外側のギャップさえあれば伸びているとは感じません。(ゆでうどん・そばなどがその典型です。茹でて時間が経ってやわやわだけどゆがいて内と外のギャップを作ることで食べられる状態にしています)

反対に、とっても食感の硬い麺を作ったとしても中心と外側が同じ硬さになってしまうと硬い食感でも伸びていると感じてしまいます。なので、麺が伸びる=麺が柔らかくなっているというわけではないこともあるのです。

また、私が思うに麺の伸びには「良い麺伸び」と「悪い麺伸び」があります。スープなどに麺が入っているとスープを少しずつ吸って麺が変化していきます。この変化でだんだん美味しく感じるようになることがあります、これが良い麺伸びです。すごく美味しいラーメンは基本的に良い麺伸びをしています。悪い麺伸びは食べ進めるほど美味しくなくなっていくことです。最初が一番美味しかったね、という状態ですね。

この良い麺伸びと悪い麺伸びは麺の食感やスープとの相性など複合的な要因で決まっていきます。なので麺が伸びるのが早いほうが良い麺伸びになることもあればその逆もあります。どちらにしても私の個人的な感覚としては「伸びない麺が欲しい」といわれてガッチガチに硬めた麺を作るとあまり良い麺伸びをしない印象が強いです。初めの麺の印象が良くても変化がないので味に飽きてくることが多いです。なので、すごく美味しいラーメンというのは「麺が伸びていくことで変化が生じて一杯のラーメンが飽きずに最後まで美味しく食べられる」ということの方が多いと思います。

さて、ここまでは麺が伸びるというのは単純に柔らかくなっているというだけでは無いということ、それと良い麺伸びについて書きました。なので単純に伸びない麺を作ればいいということではないことは理解していただけたと思います。

とはいっても麺を作るときに伸びないようにするにはどうしたらよいのか、という話をしていきたいと思います。特にうどんやそばで麺が伸びてしょうがないという話は聞かないので中華麺の話を中心に話をしていきます。

いくつか方法はありますが、製麺屋さんと自家製麺のお店では少し考え方は違うかと思います。とりあえずすべてのパターン書いてみます。

①伸びにくいといわれている小麦粉を使う 各製粉会社で「麺伸びを抑えた」といわれている小麦粉のマークがあります。「マーク」というのは製品名です。例えば、日清製粉だと麺遊記や麺無双、あとはあえていえば紫金山などでしょうか。麺遊記はスタートはそこまで硬くないけどゆるやかに変化していく感じです。麺無双はしっかり硬いところからスタートしてある程度硬いまま進んでいく感じで変化は少ないです。紫金山はスタートからソフトでソフトのままソフトに終わっていく印象です。こういう風に「伸びない小麦粉」といっても伸びてないと感じさせる手法が違います。一番初めに書いたとおり紫金山は柔らかいですが変化が少ないので伸びてないと感じさせるわけで、「柔らかい、伸びてるぞこれ」という訳ではないのです。

②卵を使う 自家製麺のお店では生卵を割って入れます。製麺会社では基本的に「乾燥卵白」「乾燥卵黄」「乾燥全卵」など乾燥して粉末化したものを使用します。生卵はサルモネラ菌等食中毒の原因菌がいることと卵を割る手間がかかるので大量生産の製麺会社は乾燥したものをつかいます。なぜ卵で麺が伸びにくくなるのかというと茹でるとタンパク質が凝固して硬くなるからかと思います。なので卵白の方が麺伸び防止効果は強いです。イメージとしては目玉焼きの白身の部分でしょうか。しょうゆをかけても白身ははじきますし硬いですよね。あれが麺の中で起きるので麺が伸びないと思っていただければ良いかと思います。 

③グルテンを入れる これは主に製麺会社が使う手法です。小麦粉からグルテン部分だけを取り出して乾燥した「乾燥グルテン」というものがあります。これを小麦粉の0.5%〜2%の間で添加する方法です。そもそも小麦粉にはグルテンが含まれています。グルテンは小麦粉に水を加えて捏ねて茹でることでα化して麺の硬さが生まれます。下記写真は日本製粉の小麦粉カタログですが、「たん白」と書いてある数値がグルテンの量です。もともと中華麺用だと11%前後は入っています。これでは足りないということで乾燥グルテンを加えて麺伸びを防ぐわけです。

乾燥グルテンにも種類がたくさんあり、単純に食感を硬くするものからソフトでノビをよくするものなどがあります。自家製麺のお店がグルテンを使用しない理由は20kg1袋などのグルテンを購入しても製造量的に使い切れないというのが大きいかと思います。もちろん余計なものを仕入れたくないという考えもあるかと思います。 グルテンといえばグルテンフリーの健康法などもありますが、そもそもそれをやるなら麺なんか食うな、なのでここでは詳しくは触れないでおきます。

伸びにくくする方法としてはぱっと出てくるのはこんなところでしょうか。ちなみに麺の加水量(小麦粉をこねるときに加える水の量)が多いほど伸びにくく、少ないとすぐ伸びると言われています。それは麺の水分量が多ければスープに入れたあとに吸う水分量が減るので変化が起きにくい。逆に低加水の麺はぐんぐんスープを吸うので変化が激しいので伸びやすく感じるということです。また麺の太さももちろん影響します。細い方が伸びやすいのは想像出来るかと思います。

今回は麺伸びについてでした。こんなことを考えながら麺を製麺しています。ちなみに中沢製麺のオーション中華麺とオーション中華麺EXはEXにはより伸びにくい小麦粉を少し足しているのと卵白粉が入っています。気になるようでしたら食べ比べしてみてください☺️




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中沢製麺 代表取締役 中澤健太
栃木県栃木市で製麺会社を営んでます!中華麺・焼きそば・日本蕎麦・うどん等生麺ならばなんでも作っている製麺会社です。noteでは麺についての豆知識や麺を作る上で考えていることを書こうと思います。自分の中の知識で書いているので何か記述に間違えあればご指摘ください。