読書感想 石野雄一『道具としてのファイナンス』日本実業出版社

実務ですぐに使えることを目指して書かれたファイナンス理論の解説。
実務にあたり知らなくても大きな影響はない理論の詳細部分は省き、難しい計算はExcelにお任せ(Googleスプレッドシートにもだいたいの機能はあることを確認済)。何を説明しないかを実務経験に基づいて考えられている。巻末に参考文献リストがあるので詳細が知りたければそれを読めばいい。私はさらに詳細を知りたいと思うのであと何冊かファイナンス理論の本は読んでみる予定である。

本書はファイナンスの専門家を目指しているのではなくファイナンスの知識を使って何かを為そうとしている人向け。企業の経営者や財務担当者はもちろんのこと、プロジェクトマネージャーや株式投資をしている個人にも有用な知識を得られると思う。

難しいことを省いてあるとはいっても、証券投資理論において高校程度の数学的概念は理解している必要があるので、私のような数学は大学受験までしかやってない人にとっては苦しい展開が後半にあるが、しっかり何度も読めば置いていかれることはないので安心してよい。ブラック=ショールズモデルもなんとなくわかるところまではいける。

著者は三菱銀行、MBAを経て日産自動車の財務部勤務の経験者であり、帯には日産自動車VPの推薦文がある。日産での実例を読むことができるというプラスの面がある一方で、日産での事例に偏っていたらどうしよう(再現性のない手法では)という心配があるかもしれないが、一般的なファイナンスの話が中心なのでそこは心配ない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?