あれから。

特殊な仕事をしている。
簡単に言えばエンタメ系の専門職とでも言おうか。
あの日から15年ほど経っていた。
気がつけば、そんなにも月日が経っていた。
人生の先輩たちがよく言う、人生はあっという間、とはこのことだろう。
あの日偶然出会ったこの仕事をまさか15年もやることになるとは、私も当時の友達も誰が思っただろうか。今も尚、驚き続けている。

タウンワークで応募し行った先は、現実世界とは180度違う世界だった。
飽き飽きしてた大学生活、就活への興味の無さ、バイトへのつまらなさ、その全てを一気に払拭した世界だった。

朝、始発が1番早い駅に間に合うように早朝から自転車を漕いだ。
あんなに無意識に夢中になったものはなかったかもしれない。
現実世界と架空世界のようなギャップに混乱していた。
パラレルワールド的感覚だったのかな。
家に帰って、シャワーを浴びながら髪を洗いながら泣いていたことを覚えている。
たった1週間くらいのお手伝いの仕事だったと思う。
夢のような、夢の世界のような、架空の世界に足を踏み入れたことに受け止めきれなかった。
なんで私が、なんの変哲もないただのしがない大学生が、あんな世界に行ったのか不思議で嬉しくて、困惑して、泣くしかできなかった。
感情は泣くことでしかなかった。
そんな出会いではあったけど、夢のような気持ちがずっと続いたわけではない。
過酷労働、やりがい搾取、お礼奉公。
時代錯誤の言葉がまだ生き残っていた瀬戸際の時代だったんじゃないかな。
〜ハラスメントなんて言葉はまだ出てきてない。
ただただ、何かを求めて、何かに出会いたくて、何かになりたくて、何者かを知りたくて、ただそれだけを探していた時代だったからこそ頑張れて感銘を受けられた。
あの時、あの場所に出会えて、泣いた自分がいたから、私は今ここにいるんじゃないかと、今思う。
好きとか嫌いとかはとうに超えている。
ただ、いられるか、居続けられるか、だけのこの場所でしかない。
選んでるような選ばれているような。
仕事とはそんなもんだと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?