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2023/3/13 今年の冬

気象庁から、3/2に今年の冬の分析結果が発表されています。

冬の期間の気温は、12 月後半や1月下旬は顕著な低温、1月中旬や2 月上旬後半は顕著な高温となるなど、1か月程度の周期で大きく変動した

r04_2nd_gidai2_202303.pdf(以下同じ)

1月後半、強烈な寒気が入って寒かったのが記憶に残ってますが、そういわれれば高温の時期もありました。
なんでそうなったかというと、難しい図と解説が載せられているので読んでみます。

1末の寒い時期については、一言でいうと偏西風の蛇行で寒気が流入したということです。テレビの天気予報などではそれぐらいの説明で済ませてますが、なんで蛇行するのかはかなり難しい。

数週間以上持続する気圧や大気循環の偏差は、遠く離れた地域にも伝搬するパターンが見つけられており、これをテレコネクションパターンと言います。1月末の寒い時期にも偏西風が南偏するパターンが顕著にみられたということです。

p23

この図ですけど、よくわかりませんね。

OLR(外向き長波放射量)
「外向き長波放射量(OLR:Outgoing Longwave Radiation)は、極軌道衛星によって観測された地表面や雲頂から放射される赤外線のエネルギー量のことです。一般に物質はその温度に応じた赤外線を放出しており、温度が高いほどそのエネルギーは強くなります。」

対流が発達すると、雲頂高度が高くなるため、衛星から観測される温度は低くなります。なので、放射されるエネルギー(OLR:W/m^2)が小さくなるということです。

ψ200(200hPa面の流線関数)
「水平方向の風は、回転成分(非発散風)と発散・収束成分(発散風)に分けることができます。回転成分の風(uψ, vψ)は流線関数ψを使って、次のように定義されます。
 uψ = -δψ/δy,  vψ = δψ/δx 」

正の場合、右回りの流れなので北半球では高気圧性循環、負の場合は低気圧性循環になります。

これだけ準備して、さっきの図をもう一度見ます。

緑色の破線の部分、ベンガル湾からインドネシア、南シナ海あたりのOLR偏差が負になっています。つまり積雲対流活動が平年より活発です。これは、ラニーニャ現象が続いていた時期なので太平洋西側で海面温度が高いことに起因しています。
海面から蒸発した水蒸気がまた水に戻るときに凝結熱を出しますが、これで対流圏中層が過熱されます。そうすると対流圏上層(200hPa付近)で強い発散風が発生します。下層で低気圧による風に収束が強ければ、上層での発散が強まることは直感的にも理解できる。
こんどはψ200偏差を見ると、緑破線の北側、中国南部付近で正偏差(見づらいですがHと書いてあるあたり)になっており、高気圧が強まっている。ここは亜熱帯ジェット気流(偏西風)沿いなので、その下流の日本付近は相対的に低気圧になる。

対流圏中層(500hPa)を見ても日本付近が低圧部で気圧の谷になっている。西高東低で寒気が入りやすい。偏西風の日本の下流はまた高圧部になり、これがブロッキング高気圧になり、極渦の分裂に寄与したということもあるようです。(最初の図)

緑破線部分の積雲対流活動から、少し北の大陸南部に高気圧性の渦ができるというのは、上層で発散した大気が下降することで高圧部になるということだと思いますが、なぜ北側で励起されるのかには、もうちょっと理由がある。

季節予報研修テキストH24all.pdf

空気塊が北に変異すると惑星渦度(2Ωsinψ)が増加するので、相対渦度が小さくなり高気圧性の循環が強化され(渦度負が高気圧性循環)、定常ロスビー波の励起に寄与するということです。ただし、上の図で北の方が絶対渦度が大となっているのがよくわからない。絶対渦度は保存されるのではないのか。もうちょっと勉強します。

いずれにせよ今年の冬の周期的な寒暖の繰り返しは、ラニーニャ現象などによって生じた各種波動の重なり合いの具合によって生じたようです。この定常ロスビー波はラニーニャ現象の典型パターンではあるようですが顕著に表れない年もあり、まったく波動とは玄妙なものです。数学勉強しないとちゃんとはわからんな。

それから、鉛直方向にも波の伝播によって成層圏突然昇温が発生したそうです。一気に40℃ぐらい昇温しており、これも興味があるところですが、いったんさておきます。興味がある人は資料を読んでみてください。

p27


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