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『細雪』と『無色』

今日は、谷崎潤一郎の『細雪』を読み始めた。

昔、ある大学に通わなくなったとき、下宿でひとり『春琴抄』や『痴人の愛』を読んだことがある。

感想は、あいかわらず、この人、文章うまいだった。

もう最初の一文から引き込まれ、20ページくらい読んだ頃にはすごい小説だということがわかった。

『細雪』は、大阪船場の旧家の4姉妹のお話なのだけど、思わず、自分の母方に引きつけた。

ぼくの母方は、長男であるぼくのお祖父さんの7人の兄弟姉妹と、お祖父さんの娘である長女のぼくの母と2人の弟が同居する大家族だった。

その7人の兄弟姉妹のうち、4人が女性で、『細雪』と同じである。

ぼくは、母からよく子供の頃の話をよく聞いたし、その7人の親族とも度々会っていて、その結束が強いことはよく知っていたが、谷崎の観察眼は、さすがであると唸らされた。

うちは旧家でもなんでもないが、わずか20ページ読んだだけでも、姉妹の特徴がにじみ出ている。

出色なのが、三女を主人公にしたところだろう。

谷崎は、三女の雪子を引っ込み思案だが、意志が強い人物として造形しているが、そのとおりなのだ。

ぼくの三女の大叔母は、もう80近いはずだが、健康診断の数値はすべて正常値だと、けらけら笑って母に語ったらしい。

そういう感じなのだ。

なかなかできることではない。

まだ読み始めたばかりだけど、つづきが楽しみだ。


そしてもう一つ、今日は、長田結花さんというイラストレーターの描かれた『無色』という同人誌の小冊子を読んだ。

これはセリフなしで、絵だけの学園もののショートストーリーなのだけど、結構心を打たれた。

ぼくはというと、一人っ子なのだけど、思春期に入ってから、特に高校では友達を作るのに苦労した。

ぼくも引っ込み思案なのだ。

『無色』では、主人公のおさげの女の子が、ほぼ黒塗りの無色で描かれるが、同じクラスには友達がいないらしい。

でも、よそのクラスにいるショートカットで同じく黒塗りのかっこいい女の子と、なにか文書を交換したり、見せ合ったりしている仲良しらしい。

ぼくは高校では結局友達づくりに失敗したが、中退して、再受験して行った慶応大学時代、早稲田大学に東京生まれで東京育ちの、ちょっとシャイでかっこよくて、やっぱり友達の少ない男の子と友達になった。

ぼくは、その時の経験から、じぶんが尊敬できる友達が一人でもいると、とても心強いのと、じぶんが少し強くなるのを知っていた。

だから、『無色』もやはり20ページくらいの短い話なのだけど、決して暗くない、読んで力が出る話だとわかった。


長田結花さんのサイトで販売していると思うので、よかったら検索して探してみてください。

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