瀬戸の空家改修PJ

通常、設計のプロジェクトは単発的に終わってしまいます。もっと継続的に関わる仕組みがあれば、もう少し地域との関わりがあれば、と思うことがあります。今回の瀬戸の住宅改修プロジェクトは単発的に終わらすのではなく、町全体に波及する様に組み立てていきたいと考えています。

設計をする際、豊かな環境を作っていきたいと常に考えています。
固有性ー瀬戸の持っている古い住宅
持続性ー町にある資源を再利用する(空き家対策)、新しい技術との接続
繋がるー作り手のコミュニティを作っていく・みんなが職人さん
楽しさー作ることへの参加・即物的であること

空き家事情

これからの建築を考える上で、建築や不動産の外部環境を見てみると、少し違和感を感じることがあります。日本の人口は、2008年にピークを迎え、その後は、毎年20万人以上減少しています。また、2023年には世帯数もピークを迎え、その後、減少に転じるといわれてます。
一方で、新築着工戸数は90万戸弱、空き家は846万戸、中古住宅流通は17万戸。今後も良質なストックとして、新築住宅を一定数つくる必要はあると思いますが、なんともバランス悪いように思います。
瀬戸市も例外ではなく、現在空き家が12%以上ある。2016年で全国の平均値13.5%となっているので、全国平均よりは低いものの、街を歩いていると使われていない家(空き家)が目立ちます。その一方で、新たなに宅地開発をし、分譲しています。このアンバランスな光景をなんとか出来ないものだろうか、とお節介を焼きたくなってしまいます。

瀬戸市の住宅事情


瀬戸市の土地の坪単価はsuumoによると20万円/坪程度です。名古屋市の平均は50万/坪以上なので1/2以下。実際は1/3以下というのが実感になると思います。
夢の新築マイホームを建てるには、名古屋市ではキツいが、土地の安い瀬戸であれば選択肢が広がります。
古い住宅は土地が広いので、土地を分筆して分譲住宅を販売するとハウスメーカーさんはそこそこ儲かる(はず)。その一方で40坪程度の土地は元々の土地代が安い上に建物の解体費が必要となるので壊して売ってもそれほど収入になりません。それどころか解体費分、支出になってしまうだけかも…。という問題があったり、高低差の多い街なので擁壁が合法ではなかったりとなかなか問題を含んだ土地が多いという背景もあります。

私の住宅歴

今まで住んできた建物は古いものばかりです。
実家は私が生まれたくらいに建てたというので築40年程度。dNbを建てるまでは築40年以上の築古物件ばかりを借りて手を入れて住まいを楽しんできました。その経験から古い建物で起きる住む上で困ることは身を以て経験しています。古い建物において発生する問題は以前書いたのでこちらをご参照ください。
せっかくの体験と知識なのでこれを活かさない手はないとも感じていますし、そもそも、真新しいものに対してあまり好意を抱くことがない…。そして、地域との関わりを持ちながら設計活動を行なってみたいとも思うようになってきました。

というわけで、瀬戸にぼろ屋を妻が購入しました!
(妻は瀬戸市出身です。)

不動産屋さんとの対話


地元の不動産屋さんとお話をしていると、空き家を所有している困っている人はたくさんいるそうです。そのままで売りたい人は多いのだけど、瑕疵のことを言われると面倒で売るに売れない。となるそうです。(2020年の民法改正で、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変更され、売主への請求権の範囲が広くなりました。)
多くの市町村で空き家は問題だ!と言われていますが、その空き家をどのように使うのか、壊すのかという具体策は講じられていないのが現状です。空き家は個人所有だから、所有者がどのようにするのかを決めなければいけないので、なかなか前に進まないのもよく分かります。市が買い取ってくれれば良いのに、という声もよく聞きますが、10%を超える空き家を買い取ったら財政がパンクしてしまうでしょうし、民間が知恵を出し合って解決していかないといけない問題に感じます。
行政が出来ることは住まいに対する、これからのグランドデザインではないかと思いますが、青森市がネガティブに報道されたりしてしまうとなかなかそこに対して切り込んでいくのも難しいかと推測します。その一方で全ての空き家を再利用していくのが良いのかと言われれば建物に付属するインフラの整理、維持の問題もあるのでしょうから、どこかで線引きが必要ではないかとも感じます。個人で所有する土地の価値を著しく減少させることは、行政としては決め切れないとは思いますが、考える余地はありそうなポイントです。

瀬戸市のこれから

瀬戸市の高齢化率を近隣の市町村と比較すると高いので、今後空き家問題ももっと表面化してくることになるはずです。空き家問題以上に高齢化による独居問題なども噴出してくることが予想されます。
空き家に対してはもちろん、市として、空き家対策委員会があり、対策をねり、実行もしています
やはりボトルネックとなるのは、あくまで土地の所有は個人であることであり、市の対策が浸透はしづらい側面があります。

では、どのようにこの問題を解決していくのか?
・古い建物が持つ価値を理解してくれる人を増やしていくということ
・瀬戸市が定義づけているツクリテさんにとって豊かな住宅を一緒に作ること
瀬戸という街は古い!万博のおかげ?で新しい建築もありますが、基本は世の中と一周おくれ気味に古い。古いというとネガティブな感じもするのですが、これが瀬戸の良さになっていると感じます。

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