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富良野での仕事のあれこれ ②

昨日の続き

アスパラの収穫時に私たちはハサミを使います。
後から知りましたが、他の多くの農家さんは鎌を使うそうなのでやり方は様々です。

ハサミと物差し(30cmくらいのもの)を持って物差しの長さまで育ったアスパラをハサミで切って収穫をしていきます。

細いものから太いもの、まっすぐ伸びてるものや曲がってしまっているもの、アスパラにも個性があって見てるだけで面白いです。

次に収穫したアスパラは選果します。
選果にも2通りあって

農家さん自身で選果をする"個人選果 通称:個選"と農協や組合にお願いして、大きい工場で他のアスパラ農家さんと合わせて一気にまとめて選果する"共同選果 通称:共選"です。

選果とは?と言うと
めっちゃ簡単に説明すると、1本1本色んな形をしている多様性の塊のアスパラを、なるべく同じ商品になるようにサイズや見た目ごとに仕分けてまとめていく作業のことです。

アスパラの価値の優劣としては“重さ“が大きく関わってきます。
簡単に言うと、重たければ重たいほど高値で売れるのです!
☆みかんは甘ければ甘いほど高値だょ!

サイズごとに3L→2L→L→M→S→2Sとわかれていてそれに追加して、さらに細かく等級が定められており上から秀品→優品→A品と格付されています。

重さは計量器に乗せたらすぐわかるのですが、収穫したアスパラはどの様に等級が分かれているのでしょうか。

分かりやすい例として…

スーパーに並んでいるアスパラを想像してみてください。

色が悪いもの、曲がっているもの、キズがついているもの…
そういったアスパラが並んでいることを見たことありますか?
もしくはそういったアスパラが並んでたら買いますか?

どの作物も大体そうですが、その様な"見た目が悪いもの"はあまりスーパーに並んでいませんよね。

大体スーパーに並んでいるものは"秀品"が多いです。
これは一つに、スーパーみたいな不特定多数の人たちに選んで、買ってもらおうとなると味に影響がなくても見た目で選んでしまう人が多いから、という事が大きく関わっているからです。

私もみかんの選果をしているときに
「あ、私が知ってるみかんって誰かが選果したもので、綺麗なものをずっと見てたんだな」って思った時がありました。
そのくらい、ワザとじゃなくても傷がついたりたまたま色が悪かったりするものがでてくるからです。

「スーパーに並んでいるものが秀品だとすると、優品やA品はどこにいくの?まさか棄てる…?!」


なんて思うかも知れませんが…
実際、1日の収穫量から出る優品やA品の量は3〜4割くらいあります。
なのでその量を棄てるなんてもったいないことはみんなしません!
A品のものでもしっかりと収入に繋げていきます。

等級が低いものは冷凍食品などの加工品になったり、丁寧に処理をして使ってくれる飲食店に卸したりなどちゃんと販路があります。
色んな農家さんを見てきましたが、その辺りのロス管理はしっかりとされている印象でしたね。

そして、最終的に
サイズと等級を選別し終わったら、1束(約155g)に計量して結束して箱に詰めたらおしまいです。
適当に誤魔化して選果したりすると、最終チェック(農協や組合の方がされます)でハネられて、手元に返ってきたりすることもあるので、地味な作業で一番時間と手間がかかるのですが選果は侮れません。

特にアスパラは鮮度が命!日数が経つにつれ、食感や甘さが落ちていきます。
自分たちで手間隙をかけて、その日のうちに個選でやりきるのか
ちょっと時間のかかる共選で全部やってもらうのか。
この辺りは農家さんの天秤次第です。

今の農家さんは個選と共選は半々くらいでやっています。
共選は諸々やってくれるのですが、他の農家さんの分も合わさって量も多いのでその日に取れたものを全部選果し終わるってのは難しく、収穫した日から+1〜2日程日数がかかります。
それに、個選よりも自分たちが育てたアスパラが最終どうなるのか見えない→やりがいに欠ける!と考えているからだそうです。

1つの農家さんに長い間関わってくると、そういった様子も見えてきて
もちろん、本物の味を作り出してる農家さんには尊敬しかなく、なによりも人と人との繋がりで成り立っている場面を見ることがあって、色々と考えさせられることが多く、学びの日々です。


そんな中
いつも心掛けていることは"こうやれば楽なのに(早いのに)"とか"前にこうやって習いました"とかそういった発言は農家さん側から聞かれるまで基本NGです。

揉めるキッカケになりますし、やり方も十人十色でみんなプロの方達です。もちろんプライドもあります。
自分が経験したことある作業でも、こういう時は「郷に入っては郷に従え」と割り切っていくのがコツです。

お互いを尊重し合える関係が築けたら素敵ですね。