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「夏物語」

川上未映子 著

「乳と卵」の語り部のその後でもあり、これまでについても詳しく語られている。

AID、精子提供による子供を考え始める夏目夏子が、人と出会い、問い、話を聞き、傷ついて、喜んで、を重ねていく。

善百合子が印象的だ。夏子が善百合子を呼び出して、産むことを決意したことを告げる場面は、絶望的でたまらない。生きていくために生まれてくることを否定することが必要だと、告げる百合子にどんな言葉もかけられない。

途中から一気に読めた。それぞれの登場人物が割合とはっきりした考えを持っていて夏子にぶつけることになる。目が離せない。「ああもうすぐ終わってしまう」と残ページの厚みを感じながら思うことになる。

ただ、個人的に最後があまりピンと来なかった。それまでは全編感情移入しまくっていたのだけれど。

自分自身が、自分の子供は欲しくない、と思っているからかも。子供が嫌いなわけではないし、人様の結婚や出産にはなんの文句もなく応援しているつもりだ。でも「自分の子供」は欲しくない。

だからなのか、ラストのシーンは「ああ良かったね」としか思えずに拍子抜けしてしまった。よく考えれば、夏子の欲していたことが、無理のないいい状況で実現できたのに。急に、母になること、子を持つことが至高、という物語に思えてしまって…

勝手なことだけれど、何か別のラストを期待していたのかもしれない。

とても面白かった。考えることもたくさんあって、再読したくなりそう。私はラストで拍子抜けしたけれど、それぞれの自分の考えによって、読後感がずいぶん違うかもしれないということでもあると思う。再読した時、ラストも含めて違う感じを持つかもしれないなと思う。

以下追記:

生き方とか、自分の考え、感じ方には、間違いなどはないのだと思える本だった。救われたなと思う。

読後に色々と考えが浮かんだり、感じ方が変わったり。面白いな。

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