見出し画像

中村修平のリミテッド解読「イニストラード:真紅の契り」

authored by Shuhei Nakamura

※当記事を、事前の承諾無く複製・転載・加工・配布・再出版等することを禁止します。

(1)「イニストラード:真紅の契り」全体の印象

カードパワーは低く、環境にある除去の種類の歪さから中~低速デッキがやや有利、あるいはそれに対応したアグロデッキという環境。

基本的にはアーキタイプ環境なので色を足す合理性は薄く、2色構築、土地はマナフラッドを防止する血・トークンがあるので17枚寄り。

画像1

(2)環境序説

(2.1)環境定義サイズ

まず先にクリーチャーのスタッツの話をすると、ごくごく標準的といったところ。2マナ2/2、3マナ3/2or2/3というここのところおなじみのラインナップから、4マナが3/3+、5マナが4/4相当と「イニストラード:真夜中の狩り」に比べて高マナ域の急激な上昇はなく、5マナ圏のクリーチャーも、それ以下とわりあい簡単に2対1交換で死んでくれる。

画像4

ゲームの中心は、前環境と同じくパワー3。引き続き4/4も序盤を支配できるサイズではあるが、戦闘においては前回ほどの信頼感はない。頭でっかちのパワー4に出くわす場面もそれなりにあるし、白には《旅する聖職者》なんてのもいる。また、今回はコンバットトリックもまあまあ打たれる。タフネス5までいってようやく安心できるサイズとなる印象。

画像5

壁役の3マナ1/4についても同上。壁として割り切るなら2マナと軽く、だいたいの同マナ域に対して一方有利で、3~4マナ域とも相打ちが取れる《鋼纏いの霊》の方が使い勝手がよい。

画像2

飛行の数は前回に比べて多め。特筆すべきは、青の4マナにボーナス付き3/3飛行が存在していること。そのかわり常連であった5マナ3/4飛行が今回はおらず、それ以外のほとんどの飛行クリーチャーが2/2相当なので、このクリーチャーが飛行戦力の基準点となる。

画像3

到達持ちはコモンだと《名射手の弟子》のみ。1/4の状態であればあたり負けが発生しないので、それほど深刻な問題にならない。

(2.2)除去の性質と環境の速度感

さて、冒頭の除去の種類の歪さへと話を進めていくが、端的にいうと質の良い低マナ除去が多く、他方で無条件除去が少ないことに起因している。

画像6

低マナ除去としては、まず赤の《削剥》と《炎恵みの稲妻》、黒の《牙の天稟》の3枚の質が抜けている。特に、《削剥に至ってはほとんど4マナ域まで対処できてしまう傑物。それには劣るが、《貫く光》や、デッキを選ぶものの《激情の報復》も充分にプレイアブルカードとして機能する。

画像7

一方で、高マナの無条件除去については枚数自体がかなり少なく、完全に信頼できるものが《削剥》と双璧のカードである《骨の髄まで》のみ。条件付きで《狼の一撃》と《シガルダの拘禁》、更に厳しい条件で切除の《激情の報復》や《忌まわしき儀式》があるが、クリーチャー設置条件の《狼の一撃》はともかくも、《忌まわしき儀式》などは盤面から除去するのに6マナというのはさすがに重すぎて複数枚投入するのは憚られる。

画像8

シガルダの拘禁》も《平和な心》として優秀ではあるのだが、完全除去としてみるならかなり微妙なカード。システムクリーチャーを処理するには3+5マナと《忌まわしき儀式》にすら効率で劣ってしまうし、貼り付けただけで放置してると濫用されてしまう事態も多々ある。

つまり、2/2クラスがとても死にやすいのに対して中盤戦のカード、というよりタフネス3以上にマナ損なく処理できるカードがかなり少ない。もちろん序盤をちゃんと高速デッキと渡り合えるという条件が必要ではあるが、最速構成を目指すよりワンクッション置いてやや上のマナ域からゲームを展開していくデッキ、中速が構造的に恩恵を受けやすい。

画像9

余談ながら、このギャップを最も上手く付いているカードが《安全の揺り籠》。よく《残酷な目撃者》に張り付いてゲームセットという展開を見ると思うのだが、そもそもタフネス3に対応できる除去が少ないところで、1回守った上にサイズアップで《削剥》が届かなくなってしまう。

画像10

中略》も環境の隙間を埋める役割を持っている良いカード。2ターン目の除去としても機能するし、後半でも1対1が取りやすく、追放効果にもかなりの価値がある。

前環境に比べてリソースを回収する手段が多く、序盤を凌げたら後半にマナフラッドを回避する手段が豊富にあるというのも低速有利に働いている。ちなみに、この環境のピックの優先順位は明らかに除去。ここでのティアがそのままピックの優先順位となる。

(2.3)アグロの生きる道

画像11

とはいえ、アグロデッキが完全に死んでいるというわけではない。鍵となるのは序盤の手数。《無謀なる衝動》は軽いデッキであればあるほど使い勝手が向上するまさにアグロ用のカードだし、《旅する聖職者》や、裏面が非常に強い《ランタンを携える者》、狼男や白緑訓練での《うなる狼》といった1マナ圏を使っていくという形が目指すべきところ。

画像12

コンバットトリックも軽い方が良い。環境の除去が軽いので、そこに対応するには2マナだとどうしても重く感じてしまう。環境で一番強いコンバットトリックは間違いなく《巨大な力で、他の同種カードとは1ランク強さが違う。

アグロデッキの雛形となるのは、いつもの白のクリーチャー軍団、赤黒吸血鬼、赤緑狼男あたり。白に関しては、厳密には人間とスピリットで分かれるので4種類とした方がよいか。ここにアーキタイプ補正をかけ合わせていくのがアグロ側の基本路線となっていく。

アーキタイプの解説に入る前に、各キーワード能力について概要を軽く説明していこう。

ここから先は

9,481字 / 49画像

¥ 500

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?