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中村修平のリミテッド解読「ファイレクシア:完全なる統一」

authored by Shuhei Nakamura

※当記事を、事前の承諾無く複製・転載・加工・配布・再出版等することを禁止します。

(1)「ファイレクシア:完全なる統一」全体の印象

書いてあるは異常なまでにカードパワーが高いが、セット全体のデザインにより、通常レベルにまで抑え込まれている環境。極度のアーキタイプ推しで、非常に高速ぼんやりとしたデッキに生存権はない。

タッチしてまで欲しいカードも特にないので、一部の青と緑以外は基本的に2色。それとマナフラット受けが少なく、頭蓋爆弾がある事情などもあって、土地は16枚にしがち。

その他、セットの特徴を箇条書きにするとこのようになる。

・マナレシオ的には4~5マナ域が非常に強い
・除去は少なめで特にインスタント除去が少ない
・毒性デッキの一噛み目(毒性の1点目)の価値がとても高い
・タフネス1の脆弱性
・P1P1(1パック目の1手目)でのコモンの価値が著しく低い

これらを掘り下げつつ、各アーキタイプの解説へと進んでいく。

(1.1)環境定義サイズ

まずマナレシオだが、2~3マナ域についてはいつもの2マナ2/2、3マナ3/2or2/3となっている。進展があるのは4マナ圏から。全色に3/4+クラスが存在し、5マナ圏にいたってはもうめちゃくちゃ。

コモン…?

赤はおまけ付き4/5速攻だし、白は3/3飛行にダニトークン2体が付いてくるし、通常なら最もクリーチャーサイズの小さい青ですら飛行4/3と5/5警戒と、通常のセットだとアンコモンクラスのカードが大盤振る舞いとなっている。

2/2は無料の時代に

だが、主役はこれらではなく、もっと早いターンの小型クリーチャー達。低マナ域はスタッツこそ平凡ではあるが、大盛無料くらいの気安さで毒性なり増殖が付いていたり、もっと大胆に2/2が無料だったりする。装備品のはずなのに、なぜかその装備品が付いている状態で、おまけとして2/2が付いてくる。正直、何を言っているのかわけが分からない。

その中で、最も環境を規定している要素は毒性。白・黒・緑と、幅広く軽いところが毒性付きクリーチャーとなっているので、そもそもで相対する頻度も多く、毒カウンター3つで向上する堕落というキーワード能力の影響も相まって、序盤の毒に対する心理的負荷は非常に高い。

理論上はパワー2、毒性1だとライフと毒が等価になっているのでそれほど問題ではなさそうに見えるが、そのルールを突き破ってくるダニトークンや、黒や緑に点在する高コスト高毒性カード、更に環境に無造作に転がっている増殖のおかげで、毒が1つ付いてしまうと以降は勝手に呪文で毒が増えていくという構図にもつながりやすく、毒死というのはかなり身近に発生する。

これにアーキタイプドラフトによる上乗せがあるというのが環境のスタート地点。つまりは、2ターン目に出てくるであろう毒性クリーチャーに対してちゃんと解答を用意しないといけない環境となっている。

この点に関しては、いつもの通りクリーチャーか除去となるのだが、環境にある除去の絶対数が少ない上に、2マナ以下で対応できる軽量除去は《呪い金の斬撃》、《苦痛ある選定》、《次元の撹乱》の3種類しかなく、《呪い金の斬撃》以外はいささかもったいない。無難だが、堅実なクリーチャーには同じコストのクリーチャーで返すというのが理にかなっている。

その《切歯の滑空機》。ちゃんと堕落できる?

このところ全くお勧めできないサイズであった1/3も、相手のクリーチャーを止めるという要求だけで考えるならば、それなりに使える機会がある。また、クリーチャー同士のすり潰しになりやすいというのもあるが、相手の毒性クリーチャーのためにブロッカーを残し続けられるという事情から、警戒の価値が上がっている。

スタッツにおけるマジックナンバーは4。4マナ域は全色に3/4クラスがあるが、逆説的には4マナ域までのほとんどがパワー3までしかない。《ギタクシア派の猛禽》のような、より速いターンでのタフネス4にはかなりの安心感があるし、殴りに行く際の《ヴァルショクの割り斧》はだいたい相打ちに持っていってくれる。この辺りは、実際にドラフトしてみて点数が上がったカード。

青、赤にサイズを先行されている《非道なティラナックス》も、2体ブロッカーが並ばない限りはだいたいそのまま殴りにいけるので、当初思っていたより強い。中盤までの4/4は、戦場を支配できるサイズ。

それこそ、3ターン目あたりに出てくるとほぼほぼ触れない存在なのだが、
5ターン目あたりから更に上の5、特にタフネス5が出てくる。このサイズにまで到達すると、サシの戦闘ではまず死なない。場合によっては、ブロッカーが2体いても問題がないサイズとなる。2/2、2/3クラス2体や、《ヴァルショクの割り斧》の付いた2/2を《焼炉の徘徊者》が乗り越えていくのは、殴っている側としては最高に気持ちが良い。

ギタクシア派の解剖学者》も、紙装甲の後続を守る壁としてかなり評価できる。逆に思っていたよりかなり弱かったのは、その後続である《水銀の魚捕り》。ちゃんと殴れる盤面に持っていければ期待通りの活躍をしてくれるのだが、青が全体としてアグロ性能が高くないので受け身になりやすく、一度守勢に回ってしまうと、仕方なしにより低マナのカードとの交換をせざるえなくなってしまう。

同じ4/3でも、《格子刃のカマキリ》は色的に2ー3マナが良スタッツなため、押し負けることなく疑似警戒で積極的に殴りにいけるのと比べると、ここまで差があるのかと驚いてしまう。

(1.2)タフネス1の脆弱性

それとタフネス1に関しては、弱いクリーチャーはなるべく使用を控えたい。ダニトークンに対してブロックができないという理由もなくはないが、大きな要因として、プレイアブルな2種の1点オール、《危険な爆風》と《燃えがら斬りの荒廃者》の存在があるから。

クリーチャーが並びやすいこの環境で、2:1以上の交換をされるのはカードアドバンテージ以上にテンポアドバンテージ的に立ち直れない。《危険な爆風》はコモンなので赤いプレイヤーはサイド込みで複数枚取っているし、第1ゲームでタフネス1をたくさんプレイしたらまず間違いなくサイドインされる。

アンコモン以上の低マナクリーチャーにタフネス1がそれなりに多く、そもそも白だとダニトークンが出やすいというのもあり、どうやっても嵌るときは嵌ってしまうのだが、不必要なところまでリスクを取りにいくことはない。

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