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中村修平のリミテッド解読「ニューカペナの街角」

authored by Shuhei Nakamura

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(1)「ニューカペナの街角」全体の印象

友好2色の5種(青黒、黒赤、赤緑、白青、白緑)。より正確な表現を取るならば、3色に跨った各一家のキーワード能力の中から、核となる各友好色と相性の良い要素を取捨選択してまとめ上げるアグロ主体のアーキタイプ環境

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数少ない強カードである友好2色のコモンマルチカラークリーチャーの中から一つを選び、それにプラスして隣接する友好色をタッチしてどちらかの一家を選択する、あるいは2色のままでまとめる、というのが基本路線。

アーキタイプ環境であることからそれ以上の多色にするメリットは薄く、選択肢が5種類しかないので、8人ドラフトの場合は特定友好色を独占できる2人に座れるかというのが大きな意味を持つ。

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ピック優先度は、最上級の除去である《殺害》、《絞殺》を除くと進むべきは2色のマルチカラーカード。とにかく後ろのプレイヤーに対してドアを閉じることが重要となる。

(2)環境序説

(2.1)環境定義サイズ

まず前提として、一部突出したカードはあるもののセット全体としてのカードパワーは低い。クリーチャースタッツは、近年で最もカードパワーが低かった「フォーゴトン・レルム探訪」並かそれ以下。

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2マナ2/2クラスはリミテッドでは動かせないところなので特に変化はないが、《宝石泥棒》、《鼓舞する監視者》に目を奪われがちなものの、他の3マナ域はいたって平凡な3/2と2/3。

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そして、4マナ域が壊滅的な低サイズというこの環境最大の特徴が待ち構えている。そもそも数が少ないのもあるが、コモンで盤面に出たときにタフネスが3を超えているのが《こだまの検察官》と《煌き売り》のみ。平均値でみると3/2があるかないかといったところで、実質的に3マナ圏と差がない。

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5マナ圏は、標準やや下といえる4/4+。近年の環境に珍しくコモンで6マナ以降が複数枚存在するが、サイズ的には5/5+程度と、出すための労力とサイズの増加分が割に合わないので、それに加えて使うための理由が必要になってくる

環境既定値は4。とにかく4マナ域が大きく窪んでいるので、タフネスが4あれば中盤を支えることができ、かつ後述の除去の壁を超えていることとなる。4/4サイズともなれば、5マナ圏までフリーパス。場合によっては延々と殴り続けられる。

だが、お手軽簡単にアーキタイプの上乗せでそれを作れるとは言い難い。環境的にはサイズで勝負するのではなく、コモンのマルチカラークリーチャーを中心として各一家から特定方向に特化させたアーキタイプデッキを構築するというのが基本的なドラフトの流れとなり、このような事情が手を広げた多色というのは構築しづらい。

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可能性の塊

(2.2)除去の質

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除去の質についても随所に抑え気味。《殺害》と《絞殺》は優秀なのだが、それに続くカードの質については標準以下。純粋な数の上でもインスタント除去は少なく、ほとんどがソーサリータイミング。そして振りが大きいか、純粋にカードパワーが足りていない。

2点ダメージが同マナ域ですら倒せないこともそれなりにありつつ、犠牲が2で使いづらく、ソーサリーな上に本体に入らない《着火》を見ていると、この環境の除去の駄目なところを全て体現している。

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基本アンプレ

追い打ちとして、斡旋屋のキーワード能力である盾カウンターも除去にとって厳しいものになっており、それが原因でアグロ主体、というより攻撃的に動く以外に選択肢が持てないという環境になっている。

(3)キーワード能力や特色

(3.1)盾カウンター/斡旋屋

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さきほどの除去というカードタイプそのものに対して、大きな障害となっているのがこのキーワード能力、盾カウンター

セット全体を見渡してみると、この盾カウンターというキーワード能力が環境を規定しており、例えば盾が無駄遣いされづらいように複数枚のクリーチャーが出るカードの種類が少ないといったような配慮がされているのだが、そもそも存在そのものが除去の天敵のようなもの。

盾1枚がそのままカード1枚の交換になりやすいという現実はなんとかして受け入れるにしても、その1枚が初手級の《殺害》となってしまうというのは精神的に果てしなくつらい。

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これが高カードパワー環境であれば、コモンの除去を破壊から追放に書き換えるというアプローチでバランスを取ると思うのだが、今回は犠牲の餌にされるという分かりやすいデメリットがあるのにも関わらず、マナを払えば外れる《平和な心》なあたりに、ちゃんと盾が機能できるようにと念には念を入れている感がある。

一応は盾カウンター側も総じてあまり強そうなサイズではないように、特にタフネスが低めに作られており、レアを除いては全て《交渉の難航》で撃ち落とせるタフネス3以下となっているところに配慮を匂わせているが…。

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なのでマトモなサイズ感のが出てくると泡吹いてしまう

それが逆に環境既定値、つまりタフネス4が全然触れないという問題に繋がっているし、《殺害》ですら0.5枚分という悲しい現実から除去自体に信頼を置くことができず、この部分が従来型のコントロールが構築できない決定的な理由となっている。

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