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中村修平のリミテッド解読「団結のドミナリア」

authored by Shuhei Nakamura

※当記事を、事前の承諾無く複製・転載・加工・配布・再出版等することを禁止します。

(1)「団結のドミナリア」全体の印象

カードパワーは非常に高く、ゲームスピードも高速。そしてかなりクセがある環境。ドラフトの指針となるものが少なく、油断しているとすぐにデッキの全体像がぼやける

デッキ構築はなるべく簡単、簡潔にすべき。マナサポートが弱めなので、過度の多色は否定的。本質的には2色環境で、いけてフラット3色まで。ただし、キッカーと版図のために必ずしも必要としない、あるいはほんの僅かだけタッチをする偽多色というべき構成が基本となる。

(2)環境序説

(2.1)環境定義サイズ

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クリーチャーのマナレシオは全体的に高く、1マナ上昇におけるスタッツ上昇も非常に大きい。とはいえ、さすがに2マナは2/2クラスというのは変動がない。一応で、序盤は相打ち性能が重視されるのでパワー1以下の価値が低くて、環境にある除去の特性としてタフネス3には価値があるといったくらい。

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3マナ圏から徐々にインフレが始まるが、3/3なのにほとんど見向きもされない《沼アナグマ》が可哀そうに感じるといったところ。プレイアブルには、パワー3相当に加えてタフネス3程度以上の何かが必要となる。それと、この辺りまでのクリーチャーは従来だと高マナ域の前に沈黙しがちであったのに、後援のおかげで牙を剝いてくるというのも特徴となる。

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4マナ圏からはだいぶおかしい。地上の最低ラインが、3/4後援持ちの《連合の戦暴者》。あくまで最低ラインでこれである。この環境では、呪文にもわりかし適当にと思えるほどカードを引くと書いてあるのだが、クリーチャーも適当に死んだら《手練》したり、4/4に到達がついていたりと大分やりたい放題となってくる。

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そして、5マナ域は凄まじいと表現するしかない。ちゃんと構築できていれば、各色にある7~8マナ5/5クラスシリーズの1枚目が唱えられるのがこの辺りからとなるので、各色5/5プラスアルファがあたりまえ。しかもこのシリーズは、以降の同系がどんどんとマナが軽くなっていく。アーキタイプカードが仕事をしないこの環境では、むしろこのシリーズこそがデッキの核となりやすい

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飛行に関しては、コモンだと4マナ圏の青と白に1種類ずつと、同じく3マナの青と白までがプレイアブル。《戦闘バエの群れ》は、条件付きで利用といったところ。黒マナの負担がなんだかんだで厳しい。飛行は全体として数が少なく、雑に到達持ちな《マグニゴスの歩哨》という障害はあるものの、ダメージの通り自体は良い。

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いわゆる壁役に関しては、今回は期待していない。一応3マナ域までは4、4マナ域までは5というラインこそあるが、高マナ域のスタッツの高さはもとより、低マナ域も後援での自力サイズアップをしていくので、ただタフネスが高いだけでは仕事ができない。序盤はクリーチャーを出し合っての相打ちか、除去との交換となる。

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タフネス1に関してはトークンが出るカードが相当数あるのだが、全体に1点ダメージを与えるカードがサイドボードとしては優秀な《塵と化す》くらいなので、最低限の仕事はしてくれる。というより、トークンを出すコストが高めで、どのみち序盤に相打ちなりで消化する役回りとなるので、トークン生成の有無はあまり気にならない。

(2.2)環境の速度感:高速環境だがアグロデッキ優勢ではない

デッキに速さを要求しつつも、クリーチャーを最速展開するタイプのデッキでは生態系の上位にはなれない。より正確に言うならば、序盤の出遅れがそのままずっと取り戻せない状態になりやすいので、結果として高速な環境となっているだけ。ただの小型クリーチャーは、より大型のクリーチャーに簡単に踏みつぶされてしまう。

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原因としては主に2つで、1つ目はキッカー。中でも、通常モードでも及第点なクリーチャーにキッカーがあるタイプ。相手より少し早い軽いor相手より少し遅くて重い展開というのがこのゲームで勝つための定石で、そのためのテンポやマナカーブなのだが、これらはそれをいとも簡単に実現してくれる。

もし相手が早い展開であれば、こちらはそれに合わせてキッカー部分を切り捨てればよく、少しゆっくりめの展開や中盤以降であれば、キッカー付きでボーナスを得るというゲームプランを取れる。

もし相手が遅すぎるのであれば?その時は、キッカーなしでイニチアチブを取ればいい。とりあえずで、アグロデッキ以外がアグロデッキと同じサイズを序盤から出せてしまう。

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もちろん、理論上はアグロデッキもこの恩恵を生かして、例えば白赤2色で《ケルドの急襲隊》を3マナ/5マナで柔軟に攻めることができるのではあるが、青赤ミッドレンジが《理想的な浜方》から《トレイリアの噴出》で3点回復された上で、《ケルドの急襲隊》のキッカーでトークンを2体並べられるのと比べると、どうしても見劣りしてしまう。

このような運用をされてしまうと、単純な速度だけを追求するのは分が悪いし、色違いの土地を何枚か差すくらいでも意外となんとかなってしまうお手軽さというのも困ってしまう。

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ちなみに、キッカーだけの運用なら《水晶の岩屋》が非常に良い仕事をしてくれる。《進化する未開地》がセットにない中、数少ない全色カウントができる土地であり、版図以外に裏目がほぼない。戦場に出たときの占術効果も優秀で、1~2枚なら喜んでデッキに入れる。

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令和の《グレイブディガー》であり、雑キッカーの化身

もう1つが、カードパワーは高いが運用にクセがあるカード達の存在。具体的には、マナレシオでも触れたコモン各色にあるコスト低減付きの大サイズクリーチャーで、機能させるには下準備に複数ターンを要求するのだが、それが必ずしもクリーチャーの数とは限らない。クリーチャーサイズであったり、土地タイプ、特定の墓地にある枚数と、アグロデッキが掲げる理想の展開とは方向性がかなり違うが、それでいてやはりスムーズな序盤の展開を要求する。

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例えば、《のたうつ分解者》だと5ターン目に召喚したいのであれば第2、3、4の3ターンで2体分の死体が必要となり、召喚酔いを考えると2ターン目からクリーチャーを展開して、ちゃんと相打ちで墓地を肥やしておかないと適正ターンに打席へ送り出すことができず、逆に相手に適正ターンに召喚されるとそれだけでゲーム終わってしまう可能性がある。

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この環境では簡単についてしまう差を取り返すのが本当に難しい。もちろん、手堅く《不気味な魂の守護者》のようなもので墓地カウントの近道をするのも忘れてはいけない。

だが、そこで更に考えなければならないのは自分のデッキ構成。切削での運用を考えるのであれば、青にもあるので青黒でデッキになりそうとドラフト中は思ってしまったりするが、《のたうつ分解者》を使用する条件としてデッキ内の総クリーチャー数を確保しておかなければならない。となると、非クリーチャー呪文の枚数をある程度下げる必要があり、そうなると…というのがこの環境のドラフトでは頻発する。

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なお、青黒では呪文を濃くしがちなので、だいたい《トレイリアの恐怖》にして《のたうつ分解者》は解雇されてしまう運命にある。

ギミックはなるべく簡潔に、できる限り簡単に。ただでさえ複数の要素を詰め込むことになるので、自損事故を起こさないようにするというのも非常に重要な要素となる。

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(2パック目初手で初めて《巨竜戦争》を引いて色替えした結果、それはもうとんでもないことになった何か。今のところ唯一の0-3)

(2.3)除去、威迫と護法、そしてコンバットトリック

除去は、役割に応じてほぼマナコストが固定化されている。軽量除去は2マナ、サイズ無視は4マナが基本値

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見た目こそ3マナの《市民の拘束》や1マナの《骨の粉砕》だが、実際の運用コストは4マナ程度と考えている。《市民の拘束》はソーサリータイミングなので、4マナ以降の巨大サイズクリーチャーを対処しようとすると2アクションが難しくて実質的にやはり4マナ域と変わらないし、《骨の粉砕》もクリーチャーを設置する手間を考えると、分割払いとはいえ状況は変わらない。むしろ、唱える前のクリーチャーを設置する手間がそのまま死にターンとなってしまうので、それを軽減できるトークン系などがないとかなり使い勝手が悪い。

環境特性として、低コストのクリーチャーでも後援などのおかげで簡単にパワーを上げてきてしまう。従来の1ターンパスしてより大きいクリーチャーで止めるという戦略は機能しづらく、クリーチャーとクリーチャーの潰しあい、もしくは除去での対応が必須となる。

ここでもまた、出遅れることで簡単に死に近づく環境と言えるのだが、除去の性能評価はここを基準としてこの壁を越えられるかどうかにかかっている。

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