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中村修平のリミテッド解読「機械兵団の進軍」

authored by Shuhei Nakamura

※当記事を、事前の承諾無く複製・転載・加工・配布・再出版等することを禁止します。

(1)「機械兵団の進軍」全体の印象

一言で表すなら盤面優勢。これを常に意識し続けなければいけない環境で、二言目としては高レアリティ。デッキの完成形については、選択肢はそれほど多くなく、色というよりもどのアーキタイプを中心にデッキ構築するか、という形になる。

大別すると、招集系デッキか培養系デッキ、それとキーワード能力によるいくつか、あるいはそれらのミックスが候補。土地枚数は、マナフラッド受けカードがそれなりにあるので基本17枚だが、ほぼ4マナまで構成できるというときは16枚を検討する。

(1.1)盤面優勢の背景と重要性

まず盤面優勢についてだが、理由としてキーワード能力が賛助、招集、バトルと、ほとんど全てが戦場のクリーチャーに絡むので、2ターン目パスが許容できないレベルとなっている。2マナ以下のアクティブカードは通常セットでは5枚が目安だが、この環境では最低6枚は欲しい。

また、除去の質は高いものの、数が多いとは言えない。後々出てくるレアへの対処として使いたいので、序盤のクリーチャーはクリーチャーとの交換で済ませておきたい。

新機軸のバトルに関しては、原則裏面は無視して表面の盤面寄与度だけで考えた方がよい。たしかに、表面からの即裏面が決まったときのインパクトはとても大きいが、それを達成するためには盤面がかなり優勢でなくてはならず、まともな相手になればなるほどそんな局面になることは少なくなる。

そもそも、50%程度で訪れる後手番はだいたい押されている状況になっているはず。いずれ盤面が優勢になりそうというときに、1ターンの本体ダメージと引き換えに追加戦力を手に入れられるくらいの使用感をお勧めする。

(1.2)環境定義サイズ

マナレシオは、いつもの2マナ2/2、3マナ3/2or飛行で2/2から、4マナで3/4+、5マナ4/4+といったところ。近年の高カードパワーセットに比べると、サイズ上昇はかなり控えめなものになっている。

環境基準ゲコ

環境基準点は3マナ3/2。とても中途半端に見えるかもしれないが、基準が3/2なので2マナ2/2が通りやすく、ここに+1/+1カウンターが乗っかってくるので、4/3というサイズに対してどう対処できるか、というのが基準点となる。

この点で、割を食うサイズになってしまっているのが3マナ3/3。一見、2マナ2/2が素で止められてカウンターが乗れば4/4となることがメリットに見えるが、2マナ圏はそもそも3/1や変身で乗り越えてくるし、強化してしまうと無視されるか除去が当てられてしまう。そもそも論で、強化先としてどうせ強くするならもっと大きなクリーチャーで無双したいと考えてしまうし、なんとも微妙な立ち位置。結局、3/2サイズと相打ちで良しとなってしまう。

戦争歴史家》、おまえのことだぞ

他方で、カウンターを乗せないでそのまま殴る/守る、という立ち位置で考えると割りと具合が良い。4/3に対しては優位な存在ともいえるし、環境のコンバットトリック修正値が軒並み+2/+2止まりなので、3/4~4/4クラスに対して3/3×2体だと安心感が高い。除去もケアするなら2/2でトリプルブロックをすれば盤石にはなるが、そこはその場の雰囲気でやってしまってください。

このなんとも言えないどんぐりの背比べが、場合によっては5マナ圏に入っても続いてしまうというのがこの環境の特徴。サイズ上昇がそれほどでもない代わりに、+1/+1カウンターを乗せて殴ってくる先手側と、ややパワー側に数値が振られていることで盤面イーブンを保とうとする後手側によるせめぎ合いなので、序盤のターンパスが雪だるま式に盤面を悪化させてしまう

2ターン目の重要性については、これまでの攻略記事でも繰り返し言及しているところではあるが、この環境ではここだけで環境理解の30%を占めると言ってしまっても良いはず。ともあれ盤面の維持、そのためには2ターン目にちゃんと展開して後続を絶やさないこと。サイズは大きくないが、カードパワーは高いので低コストでもなんとかなるし、そもそも、そのためにあるのがキーワード能力によるアーキタイプ。デッキの組み方については後々説明するとして、この意識を持っておいてほしい。

残念ながらドラフトブースターからは出現しない

そんな世界から解脱するために必要なサイズは5/5。ここまで到達してしまうと、戦闘前の賛助程度では超えられないし、先ほどの環境コンバットトリック修正値問題もあって、パワー3以上しか殴りに行きづらくなるので手札を読みやすい。それでも全員で殴ってくる場合は、概ね限定除去との1:2交換。一応は全体除去という可能性も考えた方が良い。

何はともあれ、5/5を効率良く捌く手段は非常に限られており、環境に数少ない確定除去か、あるいはそれ以上のことをしてくれるシステムやスタッツを持つもの、例えば戦闘前のプラス補正が1ではなく2以上であったり、おまけにボーナスがついていたり、そもそも5/5なんか超越したスタッツを持ってたりと、要はレアカード。

この部分が残りの内40%くらい。なんであれば、機械兵団の行進というセットの最大の特徴ともなっている。

(1.3)レアリティ

ドラフトをやっていると、たまにレアとフォイルレアが出現したという経験はないだろうか?個人的な経験で強烈に印象に残っているのは、初代イニストラードのドラフトをしたときに、1パック目で《ヴェールのリリアナ》と《情け知らずのガラク》とフォイルの《情け知らずのガラク》を引いて思わず声が出たという経験があるが、この環境では1パックで2枚のレアが出現するのは日常茶飯事

それこそ先ほどのレア3枚出現というのも、8人テーブルなら1人か2人くらいは体験することになってしまう。なにせ各パックに2枚ある両面枠と、多元宇宙の伝説枠の都合3枚のスロットの内、バトルと多元宇宙の伝説に関しては確定でアンコモン以上、もう1枚の両面枠も頻度的にはかなり高めでアンコモン以上。この3枚中1枚のどれかがレアになるだけで、レアorレアという選択に直面することになる。

もちろんレアの中にもいわゆるハズレ枠が存在するので、必ずしもその2択ということにはならないはずだが、ちょっと待ってほしい。レアがそれくらい大量に出てくるという事情を理解してもらった上でもう一つ理解してもらいたいのは、これらの枠がコモンを削って存在しているということ。

1ブースターの土地以外14枚中、通常のレア枠1アンコモン枠3に加えて、バトル枠1と多元宇宙の伝説1に未確定ながらアンコモン以上になりうる両面1、つまり6~7枚のアンコモン以上に対して7~8枚しかコモンのスロットがない。ドラフトとは1パックあたり7~8枚のカードを集めるというゲームなので、理論上はほぼ全員がアンコモン以上のレアリティだけでデッキを組むこともありえる

自分も含めて、アンコモン以上だらけで構成されたドラフトデッキを評して「(デッキは強いが)再現性がない」と言った物言いをすることがあるが、この環境ではむしろそうなるのが当たり前。むしろコモンで求められているのは極々一部の優良除去と、それと同レベルにある《羽づくろう勇者》くらいで、あとは白のほとんど全てのカードのようにマナ域を埋めるために必要なカードであり、レアリティ上位のカードがあればだいたいにおいて差し替わるものとなってしまう。

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