選挙というお祭りの中に入って熱を浴びる。

10月24日土曜日。柏駅12時の東口のダブルデッキは、いつもの週末の様相と変わらずに、行き交う人で賑わっていた。少し違うのは15名ほどの報道陣の姿だろう。狙うカメラの先は山下洋輔、柏市長選立候補者だ。千葉でも5本の指に入る人口の柏市で10年間市議を務め、た元教員。お堅い人物かと思いきや、柏のスケボーパークの実現への尽力や、バスケ3on3の促進など今の若者文化への意識も高い。バランス感覚に優れた好傑物である。

と、ここから普通なら山下洋輔柏市長候補の政策の話に移るのだが、今日は横道にあえてされようと思う。というか、それずにはいられない、I can not help 〜ingだ。

まさにこの時間、このダブルデッキで僕は、腕まくりをしようか迷っていた。朝8時半の段階では少し肌寒かったのだが、昼にもなるいっぺんし、雲ひとつない青空と煌々と輝く太陽が、まるで松岡修造氏のように君臨していたのだ。

同じく山下洋輔柏市長候補のビラ配りに勤しむ友人のHをチラリと見ると、彼は汗を微塵も感じさせない爽やかな笑顔で働いている。

朝のHは「なんだよ、ヒートテックを過信していた!今日は寒いわ!」と柳井さんが聞いたら「ちょっと君!こっちで詳しく話を聞かせてくれ!」と別室に連れて行かれ、その後「君の平熱は?汗腺はどこに全集中してる?あ、そもそも代謝量はどうだ?え、ああ、なに!?今日朝に羊羹食べた?いや、それは良くない、よくないなぁ、もちろん粒あん?えー、こしかよーこし派なのー?と、もうキリがない妄想は辞めにするが、そんな文句を言っていたのだが、今ではその彼が羨ましかった。

きっと僕がパタゴニア のTシャツに、ノースフェイスのパーカーを着て、パタゴニアのベストを着てきた罰だろう。アメリカンサンド。間の具材となったノースフェイスの逆襲に違いなかった。これはうなぎとスイカを食べるとお腹を壊す、それと同じくらい自明だ。「いや、ベスト脱げばいいじゃん?」と思うかも知れないが、勘のいい読者ならお分かりのことと思うが、僕の悩みは「腕まくり」、つまりベストはすでに脱いでいる。これがベストアンサーだ。

普段なら汗をかいても気にしない館だが(あえてあぶない変換ミスをスルーして、ゆうじ、タカ懐かしいなぁ、もっともがベスト。木の実ナナさんも)、今は山下洋輔柏市長候補のビラを配っているわけで、そのビラが汗でシワシワなのはどうにも具合が悪い。彼にシワは似合わない、若々しくエネルギーに満ちている。もし濡れたまま渡したとして、「うわっ!このビラ濡れてるじゃない!」「いや、水も滴るいい男なんですよー」「ああ、そう言うことね、じゃあ1票いれるわね」「へい!毎度!」こんなやり取りは起きないだろう。

そもそもが通路の脇に立ち、人が来たらスッと間合いを詰めて、ビラを持つ右手を差し出す行為なのだ。43歳の丁髷のおっさんが額に汗をいや、なんなら汗をスプリンクラーのように振り撒きながら寄ってきたら、僕が要人のSPだったら、間違いなく射殺しているレベル。レベルEだ。そしてまた撃たれたビラ配りの僕は(ややこしいが)、膝から崩れてかけながら、こう言うんだ、「や、やました、よう、す…けにきよき、いっぴようを…」そして、その手には、汗でグズグズになったビラが握られていてるのだ。これはすごいPRになるのではないか、ローカル局だけではなく、民放キー局が報道に躍起になり、山下洋輔の名は全国に知れ渡る!まあ、柏市民にしか選挙権はないのだけれど。

しかしだ、この顛末が起こり得るのが0%と言い切れるだらうか。否。それは、金田一にだってわからないだらう。だから、ここはまくる。確実に腕はまくる方がいい、ROIは1000%を超える、当然の意思決定だ!

満足な答えが出た一方で、僕の手の上のリーフの山下洋輔柏市長候補の笑顔が「この逡巡の間、一枚も減ってないね」と、まるでストア派の哲学者のように語りかけていた。

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