テレビゲームの進化と体験価値。

TMNTをご存知だろうか。「え?ティーエムネットワーク?ああ、それならアスファルトタイヤを切りつけながら、暗闇走り抜けたわ、昨日」とコメントしようとした方、残念ながらそうではない。僕はそんなメビウスの輪から抜け出せない年頃でもない。TMNTまたの名を「ティーンエイジミュータントニンジャタートルズ」、1984年に生まれたアメコミだ。日本でもテレ東がアニメ化したり、数年前に映画が上映されたこともあるので耳にしたことがある人も多のではないだろうか。目隠しのバンダナを身に着けて悪の組織と戦う亀の忍者の物語である。彼らは4人組でリーダーのレオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテロとそれぞれルネサンス時代の巨匠や芸術家にちなんだ名前をしている、非常にアカデミックな存在だ。亀の忍者という設定から製作者の日本好きが伺えるが、好物はピザなのも面白い。しかし彼らの師匠であるネズミのスプリンターが好きなのは寿司であり、少しずらした設定にもクリエイターの妙技が光る。昔から鶴は万年、亀は千年というが、コンテンツの移り変わりが激しい現代において、ロングヒットを続けているのも亀がモチーフであるからだろう。まあ、鶴が主人公のアニメーションや漫画は知らないが。

このTMNTのスーパーファミコンのゲームを今プレイしている。名前は、「タートルズインタイム」。横スクロールのベルトアクションゲームで、ベアナックル2スタイルといえば馴染みがいいかもしれない。いや、それを言うならファイナルファイトか。息子がYoutubeでTMNTを見まくっており、歌を口ずさんでいるのを聞いて、嬉しくなり2,500円を出してメルカリで購入した。裏にマジックで以前の持ち主の名前こそ書いてはなかったが、まあまあ年季の入った代物である。これはある種の投資で、シンカリオンZやアースグランナー、ディノコアを覚えるよりも効率がよく彼の心の中に入っていける、むしろ「マウントが取れる」「父親の威厳が保つことができる」効率のいいコンテンツと言っても過言ではない。

タートルズインタイムは非常にシンブルなゲームで、Yボタンで攻撃、Bボタンでジャンプ、YとBの同時押しで必殺技とこれが全てである。せっかくのLとRボタンもこのゲームでは飾り、と言うか裏技で利用するのみだ。リリース日は1992年、実に30年前のゲームだ。簡単でサクサク進むし、5歳の子がプレイするには最適だろうと思っていたが果たしてこれは、最適な投資と言えるのだろうか。今世の中をみれば、ニンテンドースイッチが大流行であり、その昔SwitchというドリンクのCMで中田英寿選手が「スイッチ入れろ」と言っていたが、あの時のセリフはこの時代を予見していたのではなかろうかとすら思えてくる、まあ、そのドリンクは消えてしまったのだが。任天堂の株価は単位株で5万円を超え、よもやだれも花札を作っていた会社とは思いもよらないだろう。そんなニンテンドーであらずんば、ナニヤッテンノー?とでも言われそうな世の中においてスーパーファミコンに興じている僕ら親子は、いくらニンテンドーの系譜とはいえ、タイムトラベルも甚だしいのではないだろうか。テクノロージーは進化して、グラフィックも操作性も内容もアップグレードは凄まじいレベルとなっている。ボタンの量も増えて、コマンドも複雑化している。つまり、この操作を憶えてマスターする方が指の訓練にもなり、ひいてはピアノやギターのそれと同じように脳に良い影響を与えるのではないかとすら思えるのである。

ただ、操作が難しくなればなるほど、クリアすることも難しくなり達成感を味わうという事も容易ではなくなる。その意味でおいてシンプルなゲームで何度もクリアをすることは、達成感の醸成をするのに最適であるとも言えない事もない。とは言え、先端のテクノロジーがある中で、あえて30年前の物をプレイするということは、車が登場した時代にあえて馬車に乗ることと同義である気がする。もちろん、将棋やオセロ、トランプのように普遍性のあるものもあるが、あれは「対人」という点において戦略や定石が年月と共に研鑽されることによって、時代に合わせて進化がされているといえる。タートルズインタイムは進化しない。亀の忍者は今でも、Yボタンを押すと、剣を振り敵にダメージを与えるだけだ。ここまで書いて思ったが、ゲームを単なる暇つぶし、余暇と考えずに「達成感を味わう」「複雑な操作をして脳を鍛える」という点に重きを置いて考えるのであれば、スーパーファミコンだけでなく、他の先端の技術にも触れさせればいいのか、確かにそうだ。オキュラスのスターウォーズは没入感がすごく、ダースベーダーが話しているときに僕は怖すぎてずっと下を向いた地蔵のようになっていたのだが、ああいうVRゲームで新しいことにチャレンジをさせるのもいいかもしれない。新旧混合というか、どちらか偏重ではない暮らし方をすることで、大事なことを漏らさずに成長できる気がする。子育て論とまではいかないが、いまはこの説が正しいかPDCAを回して行こうと思う。

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