屋根の上の2人


海外に出ると、その国でどうやって生きていくかと目に前のことに集中してほかのことが見えなくなることがあります。その段階でも、他の国の人と接する中で逆に日本という国を見直すこと、考え直すことがあります。きっかけは、日本に対する理解の低さや誤解、よいことも悪いこともです。また、自分よりも日本の何かを詳しい現地の人に会うなどです。そして、もっと日本のことを勉強しておけばよかったなどと強烈に思うものです。
また、本当に外から日本を見るということがきっかけで母国に対する見方が変わることもあります。私の場合、留学中は音声を切ったままのCNNなどの映像でした。まずは、奥尻島の津波。その映像は全く日本の話とは思えず、どこか知らない遠くの国のようでした。だいぶたってから日本の災害だとわかったときには大きな衝撃を受けました。日本のサリン事件は別とすると、次は阪神淡路大震災です。最初CNNでニュースが流れ始めたとき、あまり大きな被害はないように見えました。つぶれた建物の中から男女のカップルが手を取り合って屋根の上に出てくる映像が繰り返し流され、ああ、あの建物は多分ラブホテルで休憩中に巻き込まれたのだろうと。そのような距離感、心持ちでした。その後、かなり時間がたってから、横倒しになった高速、火災、そして、極めつけだったのは、火災後に焼け死んでしまった家族の骨を探し、手で拾い集める映像。現代の時代で日本という国では、想像もしていなかった映像でした。そして、確実に自分の感覚が変わっていくのがわかりました。単純に愛国心とは言いたくありません。今でもうまく説明できませんが、海外から日本の惨状を見たことによる私内部の変化です。この感覚はその後もずっと続いています。
この変化の経験を思い出すたび、いつも、CNNで何十回も流された屋根の上の二人を思い出します。あの二人は今どうなっているんでしょうね。





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