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【最強の写真学習】これで基礎を固める  第9章. より深く見つめる

おはようございます。
アラスカの中島たかしです。

今日も、米国で写真学習しつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説をしてゆきます。

10回にわたって行っているのは、海外の写真参考書 Creative Nature & Outdoor Photography という最強の写真教科書についての解説です。

この第9章でも、著者ブレンダの本書のゴール「撮影の前に感動のワケを考え、それを伝える術を学び、いま読んでいるあなたがそれを習慣にすること」を見据えて、、、

☆いま学んでいる基礎的要素は、表現にどうつながるのか

ということを、【表現ポイント】という形式で、記事の中でハッキリわかるようにしていきます。


【まえおき】

この9章では、「写真に潜む裏側を考える」ということを取り上げています。伝えるのは難しいのですが、トライしてみたいと思います。

【今日の結論】

「少なくとも自分だけは、撮る対象の奥の奥を見つけて撮影し、知っている状態にしておく。それで写真を作品として完成させる」ということになります。

blog 目次用の枠_第9章

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今日の内容1
【より近づいて見る】

新しいものごとというのは、フィジカルに近づいてみる、あるいは一歩下がって遠のいて見てみると、なにか発見があるものです。

小説家の村上春樹さんも、「夢を見るために僕は毎朝目覚めるのです」というインタビュー集のなかでこういっています。

「ものごとは、近づいてみれば見るほど現実とは違ってみえる」

こうすることで、より対象を多面的に見ることができる。つまり対象をより深く見ることにつながってゆきます。

そこで写真に置き換えたときに、どうするかということで出てくるのが、クロースアップ写真です。マクロ写真といってしまうと、マクロレンズに限定されますが、クロースアップ写真という言い方をすれば、広角レンズを使っても、望遠レンズを使っても、普段われわれが見ない大きさで対象を捉えることはできるので、この「対象により近づいて撮る」ということができます。

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マクロレンズで世界を切り取る面白さはここにあります。普段見ない自然の光景が目の前に写し出されるわけなので、新鮮さも加わり、さらに自然写真の真骨頂ともいえる「Scence of Wonder」(おどろきの感覚)をも引き出しやすい写真とも言えます。

クロースアップ写真というのは、それだけインパクトを与える可能性の秘めたジャンルであり、また、写真というメディアを面白くするひとつの手法でもあると言えます。つまり、遊べる写真です。その極みは、顕微鏡写真ですね。

本書で取り上げているアイテムのこともお話しておきましょう。

▶Diopter :普通の広角、標準、望遠レンズの前にフィルターのように付ける、マクロレンズフィルターです。
・利点:明るさを失わない。
・欠点:レンズごとに買う必要がある。

▶Extention tube: レンズとカメラ本体との間に取り付けることで、焦点距離をきわめて付か付けることができる、エクステンション・チューブ。
・利点:どのレンズでも使える
・欠点:光のロスが大きく、暗くなる。

僕はエクステンションチューブを使っていた頃がありましたが、いまはマクロレンズを借りて何度も使い、購入を予定している段階です。やはり、取り付けるタイプのものは、写真の質という点で納得がいかず、作品に結びつかない。そこは僕が(やや偏重に)こだわっているところでもあるので、ある意味特殊ともいえるクロースアップ写真を作品として作るには、あくまで僕の意見ですが、マクロレンズを買う必要があると思っています。


【表現ポイント】

普段の被写体に、グッと近づき、目で見るよりも大きくものを切り取ってみる。すると詳細が見えて、対象をより深く理解でき、あたらしいテーマが見つかりやすい。

クドいようですが、クロースアップ写真が「あなたにとっての表現」には必要なのか、それは考えてください、と著者は言っています。

今日の技術的なお話の中核でもあるクロースアップですが、ここで著者ブレンダは、よりクロースアップを効果的にするための、撮影条件リストをあげてくれています。

【クロースアップ写真の基本撮影条件】
・拡散光で撮ると良い。逆光は次のステップで、対象をドラマチックにするために使うと良い。
・雨上がりや嵐の後に外に出るのをオススメする。
・霧のある朝の草原では、水滴が雲や花や岩についていて、良い対象を見つけやすい。
・とにかくシンプルに大きく!が基本
・背景に気を配ること。背景の色はどうか、ボケ味はどうか。これによって、1枚の写真が大きく変化してしまう。
・色のバランスを考える。

以上はチェックリストとしても使えますね。


今日の内容2
【本質を見つける】

ここで著者のブレンダは、「あなたが写真に撮る対象を見つけた時、あなたの心が開かれていれば、それだけ深く多面的な物事を読み取ることができるわよ」と言っています。

これはどういうことでしょう。

ジブリアニメでのたとえになってしまいますが、もののけ姫のなかでアシタカはこんなふうなことを言うシーンがあります。

「曇りのない眼で見定め、きめる!」

かっこいいんですよね…。(また話が逸れますのでここで止めましょう。

写真を撮るときも、この感覚は重要です。自分の先入観だとか、思い込み(曇り)があると、表現は定まりますが、広がりは出ない、つまり物事の本質を捉えにくくなるか、あるいは狭い見方しかできなくなります。これは写真に限ったことではありませんよね。

ブレンダが第1章で話をしていたことも思い出してほしいです。「自分の世界は拡張する事ができる。」ということを。

曇りなく広く見るために、具体的にどうするのか。

そこでブレンダは、ひとつ課題を提案します。「一輪の花に、個性はあるか?あるのなら、それのエッセンスを見いだせますか」と言っています。

▶エッセンスとは、それがあることで、それが何であるかを物語るもの。
つまりそのものの本質です。

まずは文だけでイメージしてみてください。白樺の木が他でもない白樺である理由はなんでしょうか。名の通り、「白い肌の木」ということが一つ言えそうです。

よく考えてみると、白肌をしている木って、他にあまりないですよね。さらに、白樺の中でもペーパーバーチという種類の白樺は、樹皮が紙のように剥がれ落ちることで、成長してゆきます。まるで爬虫類の脱皮のように。

その白樺の樹皮が向ける様子と、内側で顔を出した、新しいとてもなめらかな木目のみえそうな木の表面なんかを写し撮ると、白樺のエッセンスを捉えた良い写真に仕上げることができます。

どうでしょうか。言葉で探っていくと、今回のタイトルにあるように、より深い世界の見方になっていきませんか?

【表現ポイント】
対象を撮る際に、自身に問いかける。その被写体のエッセンスは何か。それを見出した上で、それがわかるシーンを一枚撮影してみる。


もう一つやってみましょう。次の例は、抽象的なテーマです。
では、「秋」で考えてみましょう。

秋のエッセンスはなんですか?言い換えると、「何が秋を表現しますか?」このあたりから個人的な印象が反映されるようになってくると思います。

本書ではこの箇所で「パンプキンだ」と言っています。西洋の人たちはハロウィンもあるし、西洋的ノスタルジーの中にはローカルな農村での収穫祭のイメージもパンプキンに代表されます。

日本的に言い替えれば、葉がほとんど落ちた柿の木でしょうか。こうした季節を捉えるのは、日本人の方が繊細だと思うのは僕だけでしょうか。より日本文化に馴染みのある方は、季語をテーマに考えてみるのも悪くないですね。


今日の内容3
【世界に対して開かれた窓をもつ】

さて、「あなたがもし写真に行き詰まっているとすれば、第一に考えられるのは、何を撮ってよいのかわからない、という閉ざされた心です。」(著者)

そんなときは、楽しめてもいないはずなので、分析せず、シンプルにエッセンスを探しに外へ出かけましょう、とブレンダは言います。

何も考えずに、カメラを持ち出してみるのが良いと僕も思います。
これを読まれているあなたは、写真が好きであることに間違いないのですから。

スケジュールのことなど忘れて、好きな小道をカメラ片手に歩き回りましょう。何が撮れたって構わない。成果ゼロだって、気ままに出た散歩ですから、気にしない。

ときにこういうゆったりした時間をつくるのって、とても大事ですね。

すると不思議と開けてきますから。あなたの心から開けなければ、その写真を見た人が開放的に心地よくなるなんてことは、ありえないでしょう。

強力なブレンダの言葉を引用してこのパートを締めましょう。

A photographer's most important guide is his or her emotions because you make a great picture with your soul.

翻訳:フォトグラファーにとっていちばんの大切な導きは、あなた自身の感情です。それは、あなたの本心こそが良い写真を形づくるからです。

【表現ポイント】
逆説的だが、「行き詰まったら、表現なんて考えない」勝手気ままに出かけて撮る。そうしたリフレッシュが、あたらしい感性の窓を開いてくれる。

今日の内容4
【ビジョンを強化する】

今日の最後のパートです。

小説を書くような作家は、作家ならではの「書けない壁」に時として突き当たことがあるといいます。

写真家は、「見ることができなくなる壁」というのがありそうです。どこに行ってもつまらない写真しか撮れなくなるということは有りえます。僕自身、何度か経験したことがあります。これがひどいときには、もう写真を撮るのをやめてしまおうと思うことすらありました。

それでも退路がなく撮りつづけていると、結局ある一点に立ち返るのです。

「僕は動物、植物、生命あるその営みが、やっぱり好きだ」

という根源のモチベーションです。

著者のブレンダも本書の中で励ましてくれます。

「私達には、私たちそれぞれにしかない世界の見方というものがあります。そしてそれはユニークなものです。そのユニークな眼差しが、あなただけのものが、必ずあるはずだということを忘れないでほしい」

これは壁に突き当たったときに、希望になりました。

壁から這い上がるためのビジョン訓練リストも掲げてくれています。量は多いですが、見ていきましょう。

・一つの対象について20枚の違う写真を撮ってみよう。
・概念、メタファー、対比を用いて、文学的に撮ってみよう(これはやや難ですね)
・広角レンズをつかって、クロースアップを実践してみよう
・望遠レンズを使って風景写真を撮ってみよう。
・どこでも良いので4m四方の四角を決めて、そのなかで15枚撮ってみる
・とにかく低い位置、ローアングルで今日の一枚という感じで撮ってみる
・よく撮影に行く場所で、今までに考えたことのない見方を考えてみる
・湖面とか窓ガラスとかに映る反射を撮影する
・モノクロ写真をとってみる
・ボケを最大に引き出すように開放絞りで撮影
・数時間、すべてピンぼけで対象を撮影してみる
・マクロレンズをよく使うのであれば、広角レンズを一週間使い続けてみる
・望遠レンズをよく使うのであれば、標準や広角レンズを使用してみる。
・野生動物を撮る人は、人間を、人を撮る人は、野生動物の撮影を試みる
・4枚の組み写真で自然の中の物語をつくってみる。

最後の物語をつくるのなんかは大変面白そうですよね。ぼくも何度かやったことがありますが、またやってみたくなりました。


今日の内容4
【本書から学んだ僕の作例9】

対象からエッセンスをしぼりだす

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桜がほんの数日間に全力を注いで花を咲かせる花だとすれば、写真のヤナギランは逆です。一つの花穂でみたときに、下から順に、夏の間ずっと花を咲かせています。北方では夏は短く、虫が動く季節も短い。その短期間の夏、花粉を運んでくれるあらゆる昆虫に、「ここに来たらいつでも花蜜をさしあげますよ」と言っているのです。

ただし、この写真のヤナギランは季節を「間違えて」しまい、咲き始めが遅かった。花の上ではツボミがすでに咲く準備をしていますが、場所は冬の兆しがすでにみえる渓谷、朝は氷点下に気温が落ちる季節となっているため、ここまで。花の下にある少し膨らんだ子房も、種を飛ばすまでいけるかどうか。

それが、僕が見るヤナギランのエッセンス、つまり、①夏の間ずっと咲いている花 ②季節を間違えたヤナギラン これらが本質であると判断し撮影したわけです。言いすぎかもしれませんが、植物も懸命に生きている。



以上になります。

ブレンダの書いたこの章を読むと、僕はいつも外へ飛び出して撮影にでかけたくなります。いまこれを書いているデスクの前の窓からも、斜光が差し込んで、とてもフォトジェニックなんです。では、少し出かけてきますね。

これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。

ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!

                            中島たかし
              Nakashima Photography 公式ホームページ

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