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もうフィンチャーは巨匠だ

当方、45歳なのですが、そのくらいの年齢だとフィンチャーっていう監督の作品は「青年期の原風景」みたいなところがあると思うんですけど・・・

僕らは何度彼にヤられるんでしょうね?

記憶はファイトクラブまで遡ります(セブンは置いときましょう)。この作品はマッチョポルノとも言われ「あまりにも暴力的」という評価を得てしまったある種のカルトムービーなんだろうと思うのですが、あの映画が一部から忌避された理由っていうのは「ちょっとした社会主義への傾倒っぽい何か」だったのだと僕は認識しています。

おそらくフィンチャーはマンクにおいて「そこら辺の諸々を結実させてしまったのではないだろうか?」という気持ちになっています。

社会主義と共産主義はきちんと切り分けされており、今回はバイオレンス的なものは無し。そういうの無いんです。あまり過激な描写っていうのが無いです。これは文句が言いづらい。アルコールの描写にはレーティングかけてもいいかもな?くらいな感じの作品です。怒鳴り合いみたいなのもなし。セックスの描写も・・・ないっすね。ちょっとだけ倫理面で考えさせられる部分があるにはあるのですがイリーガルとまでは言いがたく、それでもこれだけ印象的な作品ができてしまったというのは「もしかしたらネットフリックスもまた脱皮しかけているのではないだろうか?」とまで思ってしまうんです。これでは文句は言いづらい。

社会主義っぽい考え方は、アメリカや、敗戦後は米国に追従してきた本邦においては相当なタブーなのだろうと想像していますので、本作品をもって「トランプ時代のホニャララ」みたいな感じでは片付けられないんじゃないかと。もっともっと根幹のところを揺さぶってきている作品なのではないでしょうか。これはサンダースみたいな人が出てきたこともあり、機は熟していたのかもしれません。彼も結局、何もできませんでしたが。

ここまでダラダラと物語めいた話を続けてきましたが、そういうのもある意味どうでもよかったりします。映画のプロダクトそのものについては完璧で、白黒の映画を数本見ていたりすると楽しくて仕方のない感じ。見た事なくてもきっと楽しい。やってる事はVFXにカネかけまくるのと同じ事を昔っぽい手法でやってるだけだったりするのですが、その全てがカッコよく、まんま昔の映画ではなくてきちんとアップデートされており「なにこれ!?」ってなっちゃうシーンやショットやギミックがたくさん。とにかく楽しい。

本作品はまずそういったプロダクトの手触りを嗜む方がベターなような気がするくらいの出来栄えで「こんなの巨匠の仕事じゃん」と思う事しきり。もはや「フィンチャ=鬼才」というワードには違和感を覚えるしかないレベルにまできているのではないでしょうか。

けど肩の力抜いてください。これってダラダラ見る事を許される作品でもありますから。ハーフオブイットで名画を見てるシーンがありますが、ああいう感じで見ても全然大丈夫な気がするんですよね。エモくならなくっても全然大丈夫。

青年期の原風景がまたアプデされてしまったなあ、とちょっと感慨深くなっているワタクシでございました。マル。

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