声が届かなければ滑ることさえ出来ない

去年のことだ。妹の家に遊びに行った時、妹の旦那さんがテーブルの上に置かれた書類をひっくり返しながら眼鏡を必死に探していた。
旦那さんからは死角になっちゃったのかもしれないけど、眼鏡は旦那さんのすぐ目の前にあって。「そこにあるじゃん」と声を掛けても、焦っていたのかなかなか見つけられない。

妹が痺れを切らして「あるじゃん!コレ!ほら!」と素早く眼鏡を掴み上げて旦那さんに渡した瞬間、ある強烈な欲求がわたしの中に湧き上がった。

日本語って同音異義語もそこそこあるけど、フレーズの響きが似てるけど全く別の言葉も多い気がする。
小学生だったわたしはある言葉を初めて耳にした時に、全く別の言葉に響きがよく似てるなと思った。
そして、いつかこれをボケに使おうと心に決めた。

そう、いまがチャンスかもしれない。
落ち着け…イメージしろ…よし、想定の通りに会話が進めば25年越しに想いが達成される…

旦「ホントだ!すぐ近くにあったんだね!全く見えてなかったよ!」
(くるぞ…よし、この流れはくる…妹よ頼む…)
妹「マジでしっかりしてよ!よく言うじゃん」
(来た…早く、早く言ってくれ!アレを言うんだ…!!!)

妹「灯 台 も と 暗 し って!」


わたし「ぇえっ!?大正デ(r
???「ピーーッ!ピーーッ!ピーーッ!ピーーッ!」



わたしの悲願であった渾身のボケは洗濯機の洗い上がりをお知らせする電子音にかき消された。


面白いとか面白くないとかではなく、ここまで来るともう執念である。死ぬまでに絶対達成したい。
次回、このボケを発動できるのは一体いつになるのだろうか。

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