文舵練習問題④問1

 結局顔なのねって華さんは鏡越しに笑った。右の頬に笑窪が浮かんで僕は吸い寄せられるようにそこを見つめるけれど鏡越しだからそれは本当は華さんの左頬にあるんだ。すきバサミが鏡の中で軽やかに踊って「相変わらず髪多いね」ってまた笑窪。鏡の中に黄色い花が咲いたみたいな気持ちになって意味わかんないよなーとか頭の中で呟いて。「今から減り出したらやべーでしょ」っていうと別に面白くもないのに華さんは手を叩いて笑う。大口開けて笑うから鏡の中の白い歯に太陽が反射して目の奥を刺す、なんてことはなくてただたんに僕のハートがまた射抜かれただけだった。あほくさ。あーまじタイプっすよ。どこが? 顔、あと笑窪。結局顔じゃん。

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