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かぼちゃスープ


心がぽかぽかするものが食べたいなぁと
冷蔵庫のなかを思い浮かべ考える。
かぼちゃがあったはず。豆乳もある。
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たまねぎとにんじんをバターで炒めて
かぼちゃといっしょに煮込むといいらしい。
よし。決めた。

かぼちゃにラップをかけて電子レンジで
あたためているあいだに、
たまねぎをざくざく刻んでいく。

いて…いててて。
涙がとまらなくなってきた。
あ。寝不足でコンタクトがうまく入らなかったから、きょうはめがねをかけていたんだ。
たまねぎ切って涙がでたのなんて何年ぶりだろう…と窓の外の桜色に染まった夕空をみつめる。

たまねぎを切って涙がでる理由は、
包丁などで切るとたまねぎの細胞が壊れて
刺激物質ができる。
それが蒸発して鼻や目の粘膜に届き反応した
神経が「涙を出して洗い流さなくちゃ」という信号をだすから、らしい。

コンタクトは眼球をおおってくれているから
たまねぎを切っても涙がでないんだな。
いままで何年も何回もたまねぎを刻んできたあいだ、涙がでなかったのはコンタクトが私の眼を守ってくれていたからだったんだ。
ずっと気がつかなかったなぁ。
気づいたことがうんと前にあったのに、
もうすっかり忘れてしまっていたのかも。

たまねぎをバターでいためながら、
単身赴任で懸命に働き家族を支えている夫のことを想う。父を亡くしたときの母を思い出す。
守ってもらっていることに気がつくときは、
いつもすこし遅れてくる。

コンタクトをつけていても、
たまねぎで涙をながさないでいられることに
想いを置くことができるひとになりたい。

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