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【RP】「小曽根真ジャズ・ライブfeaturing 松井秀太郎」〜直前の雑感とともに〜

(別アカウントの過去記事をアーカイヴする為にリポストしています)

<はじめに>
6/4「小曽根真ジャズ・ライブfeaturing 松井秀太郎」@横須賀芸術劇場に行ってきました。
このnoteは角野隼斗氏に関する内容が多いのですが、さすがに小曽根真氏のコンサートの感想に角野氏の事を書くのは失礼に感じて憚られます。
が、6/2の角野隼斗氏の「かてぃんラボ(有料コンテンツ)」からコンサート直前までの思考が驚くような偶然で関連してしまい、それを抜きにはコンサートの感想が語れない状況のため、「直前の雑感」とさせて頂きました。


直前の雑感

6/2「かてぃんラボ」の内容はNYでの状況報告と質問への回答というものだったのですが、特に気になったのは下記の2点です。
(有料コンテンツのため、前後の話の流れはあえて記載しません)

●ジャズピアニストの様式的分類において
 小曽根真氏=トラディショナル(≠コンテンポラリー)とされていた事
●プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番

実は、私が考えている小曽根真氏の分類は角野氏のものは違っていました。
小曽根氏ご自身もルーツはディキシーランド・ジャズと度々おっしゃっていますし、カッコいいNY仕込みのモダンジャズも演奏されます。
けれど、私にとってはクラシック音楽との関係性の中で独自のジャズ表現を試みていらっしゃる所こそが一番好きな音楽なので、分類としては断然コンテンポラリーなのです。
コロナ禍「Welcome to Our Livingroom」で小曽根氏のことを知り、大量のアルバムを試聴するも「Welcome 〜」で感じた質感やイメージとは違うことを疑問に思いながらその後にリリースされた「OZONE 60」を愛聴していました。
後に角野氏のファンになり、その違いは「クラシック曲の演奏」にあっただろう事を「はやとちりラジオ」でのゲスト出演で知り、納得・謎が解けたという経緯があります。
小曽根氏の多岐にわたる活動でビバップやモダンジャズ寄りの演奏をされていたとしても、私が一番好きで最も強く印象に残るのはジャズをクラシックの文脈と分離せず現代の音楽として捉えるコンテンポラリーな表現、という事になる訳です。
Blue noteでの海外の著名ミュージシャンとの共演はモダンジャズの要素が多く、No Name Horseは、ビッグバンドによるトラディショナルなスタイル。
FROM OZONE TILL DAWNでの共演の場合はお若い方との共演ということもあり、モダンスタイルとコンテンポラリーの中間位の印象です。
以前(「小曽根 真ソロコンサート(パルテノン多摩〜」)拝見した時に感じましたが、コンサートホールでのソロコンサートプログラムこそ、私が大好きなコンテンポラリー要素多いジャズだと感じるのです!
クラシック専用ホールで演奏されるのですから、ある意味当然です。
※ここまでは6/2ラボ配信を観ながら感じたこと。

翌日(コンサート前日)、話題に出ていた「プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番」の演奏をSpotifyで試聴したのですが、人気作として上位に表示されるピアニストの演奏をいくら聴いても、どうにも納得しがたいのです(本当に私はピアノのストライクゾーンが狭い)。
第1楽章の中盤少し前にリズムが際立ってくる部分はドライブ感が感じられないと興醒めです。
また、第3楽章の後半の部分はより躍動感のある曲調にも関わらず、それが均一なテンポで演奏をされていると、「曲名思い出せないけどアノ感じのノリじゃない!、アレじゃないと気持ち悪い…」みたいになってしまい、延々とSpotifyを彷徨いました。
そしてようやく気持ちよく聴ける音源に辿り着くと。バーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団演奏、指揮者ミヒャエル・ギーレン「ミヒャエル・ギーレン/リスト & プロコフィエフ名演集」(Spotifyでリンク 2〜5曲目が該当)というコンピレーションでした。残念ながら初出は不明。
ピアニストはなんと1900年生まれのFriedrich Wührerという方で、戦後は演奏より教育に携わられた方とのことなので、たぶんモノラル録音をステレオ化した音源かと思われます。
ちなみに、気にしていた比較部分をこの音源で指定すると第1楽章は4分過ぎ、第3楽章は5分位から。
とにかくSpotify上位に表示される現在のピアニストとは全く違う印象です。

次にコンサート当日の朝のこと。
前日が主にリズムやビートに関することを中心に考えていたとすると、この日は朝から「響き」について考えていました。
クラシック音楽の中で、浮遊感を感じる不思議な響きで印象強いのが「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 第1楽章」の冒頭の鐘の音を模したというあの響き!
Spotifyで試聴してみると、またもや「えええ??? イメージと違う!!!浮遊感や不思議な感覚がない!!!」と。。。
私の中では、角野氏が年末年始に「ジルベスターコンサート」で演奏された響きが基準です。
改めてその時の録画と色々な方の音源を聴き比べました。
何度もと聴き比べてみると‥どうも下記のような違いがありました。
「1オクターブの同じ音の内、多くのは高い音が強いのに対して角野氏は低い音の方が強い。」
「右手、左手、右手、、、と交互に演奏されていく際の左手の音が長く響いて右手の音の下にまだ聴こえているうえ、その右手の音はアタックが弱めで左手の響きを消さない」…等々。。。
左手の音を長く伸ばされる方がいたとしても右手のアタックが強いと不思議な響きにならないとか、和音のオクターブのちょっとしたバランスでも印象が違うとか…冒頭の部分だけを色々な方で1時間位確認していたのです。
まさか、コンサート冒頭に「あんな事!」が起きるとは想像しておらず。。。

小曽根真ジャズ・ライブ

<小曽根真ジャズ・ライブ 第一部>
移動中は小曽根氏モードにするために大好きな「OZONE 60」 「OZONE 60 (STANDARD)の2つのアルバムを聴きながら移動しました。
会場の横須賀芸術劇場はステージに拡声器型反響板のあるステージ、しかも周囲は木壁ですから、これは期待大!
(約1年半の鑑賞経験でわかったことは、ステージ上の天井が余り高くなく昔ながらの拡声器型反響板がある所の方がピアノの音が上に上がらず正面に綺麗に聴こえます。ステージが低めに設定されている&天井に反響版を設ける等の工夫があればばまだしも、通常のステージ高で客席と同じ天井を共有するタイプのホール1階の音は期待できません)

開演の合図として複数の鐘がカランカランとランダムに鳴り響いてきました。
開演サインとして作った音源というよりどこかの教会の鐘の音をそのまま採取したような音で、朝の聴き比べ時の右手と左手の響きの重なりは実際の鐘に通じるのかも…なんてことを思いながら聴いていました。
ですが、、、
その鐘の音が鳴ってもなかなか開演しないのです。
すぐ後ろの70代位のおばさまお2人の方が大変なおしゃべり好きで、「こんなに始まらないコンサートは今までしらない」「何かあったのかしら‥」とかおっしゃるので、こちらも段々心配に。。。
時間は測っていませんが、普通は合図後5分で開始するという条件から考えると結構オーバー気味だったと思います。
すると、ようやく会場が暗くなってきました。
ステージも含めて会場全体が真っ暗でなにも見えな状態に聴こえてきたのが、なんとなんと、あの「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 第1楽章」の冒頭(と思われる音)が……ええええ〜〜〜〜〜???!!!!
「ジャズ・ライブ」と銘打った冒頭にラフマニノフってどいういうこと????!!!
不思議な浮遊感、というより靄のような上昇感を伴う美しく不思議な響きが真っ暗な会場に満ちていきました。
音階が上がっていくと、原曲を超えてもまだ続いていくのです。
こ、これってもしかしたら「胎動方式(仮称)」の即興ってこと???
以前も小曽根氏のコンサートで、まるで角野氏へのカウンターでは?なんて思ったことがあったのですが、あの…もしかして、小曽根氏は2日前の角野氏のラボをご覧になったとか?!と頭をよぎります。
いやいや、そんなことはとにかくもう二度と聴くことはできない今この音楽に集中しなければ!!!
ステージも段々と青い光が感じられ、薄暗い中から演奏される小曽根氏が浮かび上がってきました。
美しいピアノの響きから、クラシックに通じる流れる様な展開があり、やがてジャズの軽やかなリズムが刻まれていきます。
ジャジーな表現でかっこよく盛り上がると、またスーッと引く様にクラシック的な表現になり、最後はやはり鐘の音を模した様な音で終わりました。

凄すぎてちょっとあまり記憶にないのですが、その直後のMCでさらに驚いた事がありました。
バークリー同期のブランフォード・マルサリス氏とジェフ“テイン”ワッツ氏とクリスチャン・マクブライド氏と小曽根氏がつい先日ライブをされたそうで、そこで「ジャズ魂に火がついた。だから一曲目に即興演奏をした」という様なことをおっしゃったのです。
えええ???ジャズというよりクラシック味が強く感じられる曲なのに???
たぶん…冒頭に横須賀芸術劇場のHPをリンクしていますが、その書かれているコピーそのままなのでしょうね。
「ジャズ、クラシック問わず、縦横無尽に駆け巡り、常に挑戦しつづけるピアニスト小曽根真」
小曽根氏にとって一番「挑戦する」という行為がジャズからクラシックに向かう表現性であって、その「挑戦する」というお気持ち自体を「ジャズ魂」というお言葉で表されたのではないか、と解釈させて頂きました。
静かに始まり静かに終わるこの曲のなかに、沸るような「ジャズ魂」が込められている!
それを改めて感じると「挑戦」が本当に凄すぎて…当日の私の感想Tweetは「小曽根氏のピアノも美しくアグレッシブ!」という冴えないものになってしまいました。苦笑
この「アグレッシブ」というのは、演奏の「押しの強さ」ではなく、音楽に対する小曽根氏の姿勢がすごくアグレッシブ!という意味です。
もし、私の妄想が当たっていたら、角野氏への「挑戦」「カウンター」!苦笑(あくまでも妄想です!)
あの実績とご年齢で、本当に凄すぎるしカッコ良すぎる〜〜〜〜!!!

ちなみに自分の言い訳ですが、私は絶対音感があるわけでも楽譜が読めるわけでもピアノが弾けるわけでもないので、冒頭の「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 第1楽章」だと感じた事には強い確信がある訳ではありません。
キーが違うとか音を変えているという事は当然考えられますし、オマージュというかその即興のモチーフとして用いられていると感じたとことです。
たまたま当日朝に1時間以上延々とこの部分を聴き続けたためわかったに過ぎません。
会場の開始の鐘の音がとても印象的で、この場で演奏される「即興的必然性」も十分あると思うのです。
(ちなみに、開始が遅いと少々文句をおっしゃっていたおばさま方、思った事を素直に口にされるので、一曲目終了後に「すごいわね〜〜」を連発されていました)

以降、当日のセットリストはこちらから。

次は「Ozone 60」から「Need to Walk」
リズムと不協和音が本当にかっこ良い!
コンサートホールだと足拍子がとてもよく響くので、それもすごく心地よかったです。
アルバムだとシンプルな(右手と左手が単独に演奏されることが多い)オールドジャズ系のノリなのですが、この日は音の厚みがすごくて、響きのあるコンサートホールならではの表現!という事なのかもしれません。
MCでは、チック・コリア氏と7年前にご一緒された事も披露されていました。(このタイミングだったのかちょっと微妙)

3曲目は、星野源氏に捧げられた「Original of the Stars」。
奥様の神野三鈴氏が脳動脈瘤を煩われ、星野源氏から素晴らしい先生を紹介して頂いたお礼として作曲されたのだそう。次回のアルバムに収録予定とのことです。
ポップでキラキラ、たしかに自分が知っている小曽根氏の曲というイメージとは違っています。まさに星野源!笑
最後は星が瞬いている情景描写のような表現でした。
アルバム収録されたらしっかり聴きたい〜!

そして4曲目が4/21にリリースされた「A Night in Tokyo (Live at Bunkamura Orchard Hall 2013)」の2曲目「My Witch‘s Blue」です。

このアルバムこそが先ほど「ジャズ魂に火がついた」とおっしゃられたメンバーの皆様とのアルバムで、10年を経てリリースされる記念にライブが行われたという訳です。
blue noteでの小曽根氏のライブの多くは配信されるため、このライブは私も楽しみにしていたのですが、この少し前に機材トラブルがあった様で約2ヶ月以上配信停止され、つい先日再開されたばかり。とても残念でした
この曲、冒頭は三拍子+所々変拍子が入る曲です。
で、コンサートで流れてきた瞬間に「プロコフィエフ 2番 第3楽章で欲しかった質感、ちょっと鬱屈としたメロディと右足と左足に交互に体重移動しながらヒョコヒョコ弾むリズムの組み合わせはまさにコレ!と気づきました。
重要なのは、右左でねじれ感のある軽やかな質感ということ。
このアルバムのなかでは、とにかくこの曲が好きでこればかり聴いていたので、たぶん刷り込まれていたのでしょう。笑
で、プロコフィエフのマイナーの調の中に感じるリズムにこのジャズ的な質感を求めてしまっていたのだ!とコンサートの最中に気づきました。笑
もちろん、この二つの曲のメロディやリズム、スピード感も全然違うのですけど、イメージするものに共通性を感じていたわけです。

実際のコンサートの演奏でさらに驚いたのは、アルバム以上にテンポや間合いが自由自在!
角野氏「サントリー1万人の第九 ラプソディ・イン・ブルー」のソロでも、その間合いとテンポの自在さが会話的で演劇の様だという印象を持ったのですが、それ以上の自然さと洗練された自在さというのでしょうか。
角野氏は会話的な自在なテンポと間合いを感じがたのに対して、小曽根氏のこの時の演奏はそこからさらに様式性を取り戻したようなパントマイムの様な印象を受けました。
面白いのは、直接的にパントマイム的に感じたのではなくて、一旦とてもナチュラルな会話的な間合いから再度様式化・洗練化されたような印象を持った事です。
とにかく説明が難しいのですが…もう…ちょっとこのリズム感というか間合いを何と表現したらよいかわかりません。
上記音源でも十分に特徴的な間合いなのですが、もっともっと臨場感がある表現です!
軽やかな音とウィットに富んだ繊細な表現、でも決してわざとらしくなく、あくまでも自然です。
(パントマイムも本当に上手な方はとても自然です)
また、音源は中盤にわざとオールドジャズっぽい表現を入れていらっしゃるみたいなのですが、そこがたぶんちょっとさらにホールの響きが際立つ様なクラシックっぽくなっていた気がします。
詳細は余り覚えていないのですが、スタインウィエイなのに内部奏法されていた記憶も(違う曲だったらすみません)。。。
また、曲中盤〜後半の他楽器の方とのアンサンブルをお一人で表現されるべく、その強さと広がりにもヤられました!!
そしてまた、最後は軽やかに戻ってきて、ちょっと「死の舞踏」みたいな終わり方です。
ちなみに、このnoteを書くために調べたところ、オリジナルは2012年「この曲名を冠した小曽根氏のアルバム「My Witch's Blue」が最初でした。
なるほど、このライブをされた当時にリリースなさったアルバムのメイン曲だったのですね。
こちらの演奏はちょっとモダンジャズっぽい印象です。

次は「No Siesta」という曲で、とにかく明るくて楽しい〜!
調べてみたら、小曽根氏オリジナルではなく通常はビッグバンドで演奏される曲のようです。
手拍子や足拍子などもふんだんに入っていて、ちょっとラテンっぽいノリの曲。
一部の最後として大盛り上がりの楽しい一曲でした!

<小曽根真ジャズ・ライブ 第二部>
第一部のMCで、第二部にゲストの松井秀太郎氏が出演されるとおっしゃっていたので、いよいよ生で松井氏のトランペットが堪能できる〜〜!と期待でワクワク。
しかも、ステージ下には階段がしつらえてあり、これはブルーノートの「FROM OZONE TILL DAWN」のように歩きながら登場されるのではないか…と、ワクワク!(私のお席はその階段のある通路からすぐ近く!)
第二部は最初にお話から入り、このホールの響きの素晴らしさについて「音が飛んでいくのが見える!」とおっしゃっていました。
私も、音が飛び込んでくるのが見える!その位に、ピアノの音がダイレクトに伝わってくるのです。
もちろん、響きは大きく広がっているのですが自分の席に音が直接届いてくるのがわかるのです。

1曲目はチック氏とのお話があり思い出の「Snap Shot 」をとご紹介。
水がながれるような質感やトレモロ?トリル?のようなところがあったり…と思っていたら、なんと後ろからトランペットの音が!!!
ヤバい!!!!!!!
コンサートホールに響き渡るその音は、今まで経験したことのない本当に美しい音色で、本当に鳥肌が経ちました。
その美しい音を期待して行った訳ですが、その想定をはるかに上に行くすばらしさです!
改めて、先ほど一部を書いたTweetを全体として表示すると、はこんな感じです。

MAKOTO OZONE Lazz Live #小曽根真 氏ソロコンサートにゲストトランペッター #松井秀太郎 氏 松井氏は配信で何度か拝聴していますが、コンサートホールでのソロは想像を超えた異次元級の音。初めの一音でワシ掴みにされました!小曽根氏のピアノも美しくアグレッシブ! #横須賀芸術劇場 音響最高!

サークルでのTweetのため埋め込みではなく引用 6/4

強く美しい音から弱音までその間は滑らにつながり、そして会場に響き渡っていく、、、、
ステージ上の小曽根氏のピアノと客席を移動される松井氏のトランペットは、会話のような掛け合いが行われます。
通常ならきっとミュート器を使って出すだろうユニークなプウォンプウォンする音すらも、トランペットのみで表現されていました。
音楽全体として聴かなければならないのですが、余りの衝撃で今となってはほぼ「音」の印象しか残っていませんでした。すみません。
とにかく本当に素晴らしいとしか言えないトランペットの音。
演奏後には、近くの方が「音がきれい〜」とつぶやかれている声が聞こえました。

2曲目は「Mirror Circle」。
この曲は、3月にベースのアヴィシャイ・コーエン氏とのブルーノートでソロ演奏されたのですが、本当は一緒にやりたい!とおっしゃっていたかと。
著名なベーシストの方とのライブということもあり、全体がモダンジャズ系の曲が多いなか、エキゾチックな質感、配信アーカイブでも最後まで何回も聴いていた、私にとってド・ストライクの曲でした。
このコンサートでは、小曽根氏の繊細なバッキングにトランペットの音が重なるのですが、配信時よりも短調→長調→短調→長調→の移行が印象的でした。
また、途中松井氏の驚くほど長いロングトーンには拍手も!
ハノンやバッハのような早く細やかな音フレーズと伸びやかで広がるトランペットの音のの組み合わせは初めて体験する感覚でした。
バロックのことを調べた時にホモフォニーとポリフォニーとハーモニーという言葉が出てきたのですが、この三つのバランスが、たぶん普通聴く音楽とはちょっと違うような気がします。
私に音楽的な知識があれば説明できるのですが…すみません。

そして、小曽根氏にから松井氏氏を紹介されるお言葉がありました。
「4年で大きく変わった事」「クラシックからジャズの言語をしゃべれる様になった事」。
卒業試験のエピソードとしてこの「Trust Me」が演奏され、リモートで音も悪いのにその音楽が伝わってきたとのこと。
これが、題名のない音楽会ご出演時の「4年生の卒業試験の時に僕はもうノックアウトされた」ってお話ですね。笑
松井氏からは、直後に小曽根氏から直接お誘い(たぶんFrom Ozone Till Dawn)の電話があり、大変驚かれたとのお話も。
そして、昨年8月の「From Ozone Till Dawn」で私は松井氏と衝撃の出会いを経験したのでした。笑

次は松井氏のソロだと説明があり、小曽根氏は客席で聴きたい!とステージを降りていかれ、空いているお席へ着座。
松井氏は集中を高める様に大きく息を吸った後、会場の端端にまで行き渡る素晴らしく美しい音で「Trust Me」が始まりました。
美しいとか綺麗とかだけでは語り尽くせない音。
もう、感情ではなくて涙腺が緩む。。。
実は「From Ozone Till Dawn」ではギタリストの山岸竜之介氏名義の曲としてリリースされていて、松井氏はfeat.として小曽根氏がハモンドオルガンを担当されています。
このハモンドオルガンからは、祈りの様な教会のオルガンをイメージする所があったのですが、この時の松井氏からの演奏は、さらにもっと「信じる事=祈る事」という実感のようなものを受け取りました。
強くしなやかに無限に広がるかの様な音楽からは、支えになるような存在そのもの(神とは限らない)の確信を感じたのです。
演奏後の大きな拍手に歓声、スタンディングオベーションの方も!!まだコンサートの最後ではありませんが、本当に感動!!!
そしてステージに戻られた小曽根氏の言葉もまた洒落ていて素敵。
「客席で空気の波動を感じた」「ピアノは沢山の音を自由に鳴らせるけど、1音でもっていく、ズルい!」と。笑
たしかにそういう考え方もある…と、改めて思ってしまったのと同時に、小曽根氏の中ではこの「1音で持っていく」感覚をピアノでも表現したい、と思われたのかしら…と。
私の勝手な解釈ですが、この「ズルい」からは小曽根氏の「挑戦」への原動力のようなもを感じたのです。
素晴らしさを讃えるとともに、できない事をも欲する貪欲さからくるチャレンジ精神みたいなものです。
それをちょっとしたユーモアで語れる所が本当に素敵な小曽根氏!笑

ここで松井氏は退場され、小曽根氏のソロ演奏としてチック・コリア氏の「Christal Silence」が演奏されました。
自分の中に「Spain」の印象があるからなのか、ちょっとスパニッシュ的な民族色のある哀愁のようなものも感じられました。
この曲の演奏も、わたしが好きな民族音楽やクラシック等の影響が様々に感じられるテイストなのですが、調べてみるとこういう方向性のジャズ自体がチック・コリア氏がきっかけだったようです。
残念なのは、初めて聴いた曲だと曲の詳細が余りわからないってことです。。。

最後は再び松井氏が登場され「Three Wishes」。
初めは小曽根氏の即興で何の曲かわからず。。。
しかもジャムセッション=即興って、普通はコードを基準にお二人が音楽が奏でられていくはずなのに、小曽根氏のピアノからはそういう「共通言語」「とっかかり」というものがなないフレーズが始まりました。
この後どうするのかしら‥と思っていたら、松井氏はそれに会話で返すような掛け合いになったのです。
すると、やがて「Three Wishes」のメロディに!NO NAME HORSESでは必ず演奏されるのでは?という位に自分にとってはメジャーな曲でした(最初は全然わからなかったけど)。笑
もちろん昨年リリースの「NO NAME HORSES "THE BEST"」にも入っています!
この日はビッグバンドではなかったですが、あのワクワク感が沸き上がってきて、もうノリノリ〜!!!
後ろの方には申し訳ないですが、これで体を揺らさない方が難しい。
ラストの曲として大盛り上がりで本当に楽しく大満足!!!
(noteを書く際に調べたらもともとはトリオのための曲で、だからThree Wishes」なのですね。てっきりビッグバンド用の曲かと思ってました。。。)
最後の拍手もスタンディングオベーションもすごかった!!!

そしてアンコールは、「Steps of the Blue」という曲。
セットリストを見ると松井氏の作曲ということですが、初めて曲とすでに日にちが経ってしまったこともあり…記憶がすっかり抜け落ちてしまいました。
さすがに我ながらショック・・・
この前までの曲もそうなのですが、結構忘れていても自宅で同じ曲を聴くと、「コンサートの時はこういう感じだった!」みたいな記憶の引き出しが開けられるのですが、それがないと本当に思い出せない。泣。。。
なんとか思い出そうと思って足掻いたものの…諦めました。
最後がこんなことになり本当に残念な感想なのですが、大・大・大満足の素晴らしいコンサートでした。

松井氏は7/26にavex classicsからデビューされます。
このアンコール曲「STEPS OF THE BLUE」がタイトルになっているアルバムです。
小曽根氏の「My Witch‘s Blue」と同じく「BLUE」が用いられているので、もしかしたら小曽根氏の「My Witch‘s Blue」も「STEPS OF THE BLUE」も、この日の演奏にはなにか特別に関連づけるものがあっのかも…と考えてしまうのですけれど。。。
あああ、それなのに記憶が飛んでいるなんて……泣


実は松井氏、このコンサートの前日までKing Gnuのツアーに参加されていていた様です。
あちらのコンサートもこの日が最終日、多くの方に松井氏のトランペットを聴いて頂きたいし、最終日に参加できなかったのは少し残念な気もしました。
そして、バックのホーン関係の皆様をまとめていらっしゃっただろう真砂陽地氏のTweetを拝見し、本当にその通り!って思ってしまいました。

私が松井氏の演奏を聴いて最初に思ったのは、「ガーシュウィン:ピアノ協奏曲 へ調」のソロを松井氏に演奏してほしい!!!!!!という事でした。
オスカー・レヴァント盤から30年この曲を聴き続けていても、誰一人として第2楽章のトランペットのソロが満足に感じられたことがありません。
クラシックの美しいトランペットの音色だけだとジャジーなエモーションが感じられず、ジャズっぽさを強調するようなパオパオする崩した音だとあの美しいメロディにとっては雑味でしかないのです。
今回松井氏の演奏を改めて生で聴くことができて、私のファーストインプレッションは間違いない!と。
例えば…松井氏が「ガーシュウィン:ピアノ協奏曲 inF」を演奏されたらその後はトランペッターのゲストソリストを招いて演奏するスタイルが定着するとか(その位に絶対素晴らしいことが保証されていると確信している)。
私にとっての「 in F」は、その位にトランペットが重い曲なので、そういう世間一般の認識すらも変わって欲しい!という期待を持っています。

松井氏も常の演奏でクラシック曲を取り入れられてますが、よくある「クラシックのジャズアレンジ」ではありません。
鍵盤楽器界隈では「ポストクラシカル※」という言葉が使われますが、広義な意味で私はそういう大きな展開への可能性をも感じています。
真砂氏が書かれていたまさに「これからの音楽」。
本当に楽しみです!!

※スタイル的にはアンビエントに近くアコースティック+エレクトロニカを指すようですが、そうでない方・曲も包括する


※鬼籍に入った歴史的人物は敬称略