パンを買いに
短歌 中西まさこ
誰もいない広場で日時計が午後二時を指している
鳥の声もない暑い昼下がり 砂利道を歩く足音だけが響く
日除けの帽子は被ってきたけど顎の下を刺す紫外線
金曜日の午後に歩いてパンを買いに行く 公園の中を通って
初夏は藤色だった棚の緑の下 老人が独り うつむき加減に座している
ところどころ変色した藤の葉の向こうで夾竹桃の花たちが笑う
チリチリン ベーカリーのドアを開ける 涼しい音色のベル
店内が暗い 商品に陽が当たらないよう陳列の工夫 今日気付く
天然酵母の手作りカンパーニュひとつ セーグルふたつ
パンを買って また歩いて帰る道 噴水のしぶきを浴びて遊ぶ母子
初出:『未来山脈』2014年11月号
以前、名古屋市郊外の桃花台ニュータウンに住んでいました。
夫の勤務先の大学にクルマで10分、中央高速道路の IC に近くて週末に八ヶ岳へ行くには便利だったのでそれまで住んでいた三河の刈谷市から転居しました。
私が名古屋大学へ出講する日は都市間高速バスで栄まで行き、そこから地下鉄で通勤していました。
桃花台ニュータウンは、住んでいたマンションの2階のエントランスから出て歩行者専用ブリッジと遊歩道を使うと、一度も信号を渡らずにお散歩やジョギングやショッピングに行けるまちでした。
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