コロナ禍の夏とセミについて考えた話

はじめに

今年はコロナの影響で、お祭りや花火大会などのイベントが軒並み中止になったりオンライン開催になっています。花火の無観客の中継なんて最初は「んなアホな!」とか思ってましたが、全然ありになってきました。むしろ密が避けられない観客ありのイベントは下手な軽犯罪より叩かれてしまいますね。

そういうわけで「人為的だが自然発生的に感じる夏」を全く感じなくなってしまいました。依然としてコロナにコントロールされている我々人類ですが、そんなことはおかまいなしに夏を提供してくるやつらがいます。

それがセミです。やつらはイベントが中止になろうが、人類がクソ暑い中マスクを付けようが、そんなことは関係ありません。およそ7年地中に籠もり、その鬱憤を晴らすかのように昼夜を問わず1週間ほど鳴き続け、そして死ぬのです。

僕はやつらが嫌いです。突撃してきても死体が落っこちていてもビビることはありませんが、とにかくうるさくて存在そのものが嫌いなのです。チャリに乗っていると一方的に体当たりしてきて勝手にダメージを受けているのもなんかむかつきます。こっちは無傷なんですがね。そして、セミが嫌いな人に相当な精神的ダメージを与えていることに腹が立ちます。マンションの部屋の前にセミが転がっているのが苦手な人がいますが、そのストレスはセミではなくマンションの管理人や隣人に向けられることが多いでしょう。非常に理不尽ですが、セミにキレても何の解決にもなりません。やり場のない怒りにみんな困っているのです。

個人的にむかついているセミですが、今年は特に存在感が強い(と勝手に思っている)ため、やつらをレビューしてみることにしました。セミといってもいろんな種類がいますから、嫌いなセミの中にもそこそこ許せるやつと絶対に許せないやつがいるかもしれません。今回は僕が捕まえたことのある5種を①レア度②見た目③鳴き声④鳴き声のグルーヴ度⑤夏度の5項目に分け、それを合算した総合点を設けてレビューしました。ちなみに僕は東京23区内在住なので、地域による評価の差があることをご了承ください。※画像付きなので苦手な方は半目でやり過ごしたあとに文章をお読みください。


note 区切り 濃グレー 1px


アブラゼミ

画像4

名前も見た目も暑苦しく、99%のセミがこいつ。探していなくても見つかるほどレア度が低い。鳴き声が退屈で、抜けの悪い周波数のくせに数の暴力により主張が一番強いため不快。羽が不透明で見た目も全くそそられない。こいつなくして夏らしさが得られないところも腹が立つ。
王道の良さよりクソさが上回っているため非常に嫌いなセミである。しかし小学生の実験という名の虐待による犠牲者は最多であろう。嫌われ過ぎてかわいそうになってきた。

レア度:☆☆☆☆☆
見た目:★☆☆☆☆
鳴き声:★☆☆☆☆
鳴き声のグルーヴ度:★☆☆☆☆
夏度:★★★☆☆
総合:★☆☆☆☆


ミンミンゼミ

画像4

鳴き声がそのまま名前になってしまったセミ。言語化しやすい鳴き声はわかりやすく不快指数は低い。アブラゼミに比べて個体数が少ないが、鳴き声の周波数は抜群に抜けが良いため存在感は圧倒的。そのため、ドラマやアニメでセミの鳴き声といえばこいつの声がサンプリングされていることが多い。見た目は、胴体がきれいなみどり色をしており、羽が透明で涼しげな印象がある。上述の通り鳴き声が目立つため見つけるのは簡単だが、探さないと見つからない。

レア度:★★☆☆☆
見た目:★★★★☆
鳴き声:★★★☆☆
鳴き声のグルーヴ度:★★★☆☆
夏度:★★★★☆
総合:★★★☆☆


ヒグラシ

画像6

ミンミンゼミと見た目が似ているが、鳴き声により判別が容易である。路上に転がる死体を見かけたことはないが、もしかしたらミンミンゼミだと思ってスルーしているだけもしれない。
鳴き声は非常に趣があり、良さが解るようになったら大人である。夏の夕方の代名詞と言えるが、そのわりにそんなにしょっちゅうは聞こえてこない。アブラゼミやミンミンゼミに比べて圧倒的にレアなため、基本的に子どもか子を持つ親しか肉眼で見ることができない。

レア度:★★★★☆
見た目:★★★☆☆
鳴き声:★★★★☆
鳴き声のグルーヴ度:★★☆☆☆
夏度:★★★★☆
総合:★★★☆☆


ツクツクボウシ

画像8

ミンミンゼミ同様、鳴き声がそのまま名前になってしまったセミ。言語化の忠実性という意味ではミンミンゼミに軍配が上がるものの、一度聞いたら絶対に忘れない絶大なインパクトを放つ。加えて、非常にグルーヴィーな鳴き方で、鳴いたあとに飛び去る姿には刹那を感じる。見た目はヒグラシと似ているが、こちらも鳴き声で判別可能。捕まえた者はヒーローになれるほどレア度と人気が高いが、耳を澄ますとアブラゼミやミンミンゼミに混じって鳴いていることは少なくない。絶対数的な意味ではレアなセミとは言えないのかもしれないが、捕まえるのは中々難しい。この人気の秘密は鳴き声の良さとグルーヴ感によるものであると私は考えている。

レア度:★★★★☆
見た目:★★★☆☆
鳴き声:★★★★★
鳴き声のグルーヴ度:★★★★★
夏度:★★★★☆
総合:★★★★☆


ニイニイゼミ

画像10

非常にレアなセミである。私は成人してから一度も見かけたことがない。強がりな小学生が「これはアブラゼミのメスだ!」と意地を張って抗議してしまうぐらい、捕まえた者は讃えられる。見た目も小柄で、ミンミンゼミなどの透明な羽を持つセミに比べて落ち着きを感じ、アブラゼミよりもオシャレな印象のある独特の模様をしている。
しかし、鳴き声はチューニングの合わないラジオを不快にさせたような美しさのかけらもないノイズそのもの。おまけに、途切れること無く発声するためグルーヴに関しては皆無である(ただし上級者がこのグルーヴの無さの中にグルーヴを見出す可能性は否めない)。
個人的にはあまり好みのセミではないが、鳴き声が完璧だった場合、他のセミに大差を付けてトップに君臨するため鳴き方が変わらないことを祈るばかりである。

レア度:★★★★★
見た目:★★★★☆
鳴き声:☆☆☆☆☆
鳴き声のグルーヴ度:☆☆☆☆☆
夏度:★★☆☆☆
総合:★★☆☆☆


note 区切り 濃グレー 1px


レビューは以上です。はじめはアブラゼミがダントツで嫌いだと思っていましたが、数値化するとニイニイゼミもそこそこ嫌いでした。しかし感覚ではアブラゼミが圧倒的に嫌いです。なんてったって名前と見た目がね。ダサすぎる。

ふと思ったのですが、桜は多くの人が毎年楽しみにしており「あと何回桜を見れるか…」なんて冗談半分で高齢者が言っているのを耳にしたりしますね。ところがセミに対してそう感じている人には出会ったことがありません。なぜなんでしょう。虫だからでしょうか。夏の間はずっと存在するため、儚さが足りないんでしょうか。この儚さを「エモさ」と捉えた場合、7年籠もった末に1週間で生命を終えるセミのほうがエモいとは思うんですがね。まあ僕もそうですが、多くの人が好きではないからなんでしょうね。理屈じゃないんでしょう。生理的に無理なんです。

きっかけはコロナ禍の夏でしたが、今年はセミと向き合う貴重な夏となりました。みなさんも、お祭りや花火で得られなかった夏を埋めるためにセミと向き合ってみてはいかがでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?