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今宵の月のように

くだらねえとつぶやいて 醒めたつらして歩く

エレファントカシマシ 「今宵の月のように」

今回の部員日記は経済学部4年の中牟田篤がお送りします。酷暑と言っても差し支えない日々が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

冒頭のフレーズに耳馴染みがある方もいらっしゃることでしょう。エレファントカシマシさんの「今宵の月のように」という曲の歌い出しです。今回はその名曲にまつわる個人的な話をつらつらと書き記していこうと思います。折角ですので、YouTubeのリンクも貼っておきます。夏の涼しくなった時間帯にマッチした良い曲ですので、是非。

さて、「今宵の月のように」と言えば、冒頭の言葉通り名曲というイメージを持たれている方も多いかもしれません。一方で、「いや、私は知らないな」と思った方もいることでしょう。ご安心ください。かくいう私自身も後者の人間で、先日後輩に教えてもらうまで、この曲の存在は知りませんでした。

大学生になる頃ぐらいまででしょうか。私はUNISON SQUARE GARDEN (以下、ユニゾン)というバンドの曲ばかり聴く人間で、流行りの曲や洋楽、勧められた曲というものを取り立てて聴こうとしませんでした。今も昔も斜に構えるところがあるのですが、その根性がにじみ出ていると思います。逆にその点がエッジの効いたユニゾンのようなバンドを好むようになっていった所以なのでしょう。

ただ最近は、随分周りの人が好きな曲を好きになれるようになった気がします。

今ももちろんユニゾンは大好きで、隙あらば布教に口が動くのは変わりありません。ただ他人が好きだという理由で曲を聴き、気に入り、プレイリストに入れる。そんなことが増えました。「今宵の月のように」もそうやって自分の中で定着し、馴染み深くなっていきました。

話は少し変わりますが、私は一度気に入った曲は飽きるまで聴くようなタイプの人間です。そうすると不思議なことに、昔気に入っていた曲を再び聴いてみると、聴いていた当時の日々が色濃く思い出される、ということが多々起こります。浪人時代に聴いていた曲は浪人時代のことを、中学時代に聴いていた曲は中学時代のことを。特に浪人時代の名古屋駅を思い出す曲の多いこと多いこと。

昔よく聴いた曲を聴いて当時を思い出す。もちろんそれも思い出に耽る素敵な一幕になるのは間違いありません。けれども、誰かとの思い出になっている曲というのは、単によく聴いた曲とは違った価値が宿るとも思います。自分視点の日々だけでなくその場にいた人達との思い出が甘美な形で蘇ってくる、ような感じでしょうか。解像度が上がって思い出が長持ちすると言っても良いかもしれません。これは独りでに好きになって、独りでに飽きていった曲には持ちえない実感となるはずです。


今プレイリストには堂々と「今宵の月のように」が並んでいます。私にもいつかこの曲より好きな曲ができて、この曲がいたところにまた別の曲が居座ることでしょう。けどいつか、何かの拍子で再生ボタンを押したり、どこからか聴こえてきたりすることがあるはずです。

そんな時、後輩との何気ない一瞬が色鮮やかに私の脳内で蘇ることでしょう。きっとそんな小さくても濃密な、心がさざめくような一瞬が、生きていく上での宝へとなってゆくのかもしれません。



見慣れてる町の空に 輝く月一つ
いつの日か輝くだろう 今宵の月のように

エレファントカシマシ 「今宵の月のように」



大学生の若造がわかったような口をきいてみました。今後とも慶應義塾体育会ソフトテニス部をご贔屓によろしくお願いいたします。