![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/140393093/rectangle_large_type_2_83412f38de958931f057332b04cc24d7.png?width=800)
運弓と運指
運弓、運指は、校訂者の思考の追体験。
最近は(といってもこの10年くらいそうかもですが)、
皆さんよくYouTubeで浚っている曲の演奏を観ています。
そこで、あれ?レッスンでならったやり方と違う。
おや?楽譜に書いてあるやり方と違う、ということがよくあると思います。
コツコツと教本に従って楽器に習熟していくと、
こういうところで初めて「あれ?」がやってきます。
指導者は生徒さんに対して、バイオリン演奏の全体像について
早いうちから説明するべきだと思います。
ヴァイオリン演奏にこだわる作曲家は運弓、運指を指定しているケースもありますが、ほとんどの作曲家は指定していません。
音色、音の質感は、弾く人の指の太さ、関節の動き、長さのバランス、
腕の長さ、太さ、重さ、個々の楽器の特性...
色々な要素により成り立ちます。
音と音の関係は、弾く人が楽譜の情報をどう読み取るか、によります。
バイオリンの場合、弦は4本、指も4本、同じ音程を出す方法が複数あるため、欲しい結果に対して、効率面や欲しい音色質感の面など
たくさんの要素を整理して演奏することが必要です。
基本、現代では原典版の楽譜がある場合、原典版の楽譜を使用するのが理想です。
原典版という種類の楽譜は、研究者による整理のみで、
校訂者による演奏への口出しはありません。
運弓、運指とも、自分で考えなければいけません。
指定された運弓、運指がないという状態は、
その曲に取り組むときに「これは、こういうもの!」という思い込みを無くすためにとても大切なことです。
演奏には流派の違いを含めて歴史や伝統があります。
名人がその先生に教わった土壌からさらに「より良い方法」を閃いた工数を考えると、
そういった情報にできる限りアンテナをはり、咀嚼して、使いこなせるようになるべきです。
どうやったところで、数百年積み上げられたより良い方法を、
人1人の一生でやってのけられる可能性は低い。。
積み上げられた情報をどうやって得るか、がレッスンですし、
その基盤になるのが「その先生がどの教本、版を指定するか」です。
その上で運弓、運指の指示に従うときに「なぜ?」を考えることが必要だろう、ということです。
どういうことかというと、
数学で公式や定理をそのまま丸暗記するのと、自分でそれらを導けるようになることとの違いと同じです。
これなしに、自分でよりよいやり方を探し、見つけ、ふるいにかけるのはほぼ無理です。
レッスンで説明を受けるだけでは不十分。
なぜ、こうやるのがいいのかと質問する前にまず、自分で考えないといけません。
そのレベルに至る前、バイオリン演奏の仕組み、全体像をきちんと伝えることに妥協は禁物です。
そんなことなにも聞いてません!という経験者の方にも、一から全部説明しています。
その人の関心事を起点に説明すると、毎度説明の経路が違っていくのが面白いところです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?