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夜話

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みたま市という架空の街で怪異を収集する大学生たちが体験した、恐怖譚・日常譚。10,000〜15,000字程度の中長編が多いので、お時間のある際にどうぞ。 ※「眠らない猫と夜の魚」…
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2023年12月の記事一覧

夜話 『落下と移動』

『自殺者の霊が、同じ場所で自殺を繰り返す』  この手の怪談はよくある。先日、小夜が仕入れてきた怪談もその系統で、飛び降り自殺者の霊が同じ場所で飛び降りを繰り返すというものだった。テンプレと言ってもいい話だ。  でも小夜の話にはひとつだけ、テンプレと異なる箇所があった。     *  五月も半ばを過ぎて、吹く風は綿毛のようにあたたかい。海は凪いでいて、いつもは等間隔に並んでいるサーファーの姿も、今日はほとんど見えなかった。かわりにシロギスを狙う釣り人の姿がちらほらと。