法医学者の話

「死因の見落としというのは珍しくない。医者が見落とすこともあれば、警察が見落とすこともある。また、見落としといっても、本当にうっかり気付かないときもあれば、意図的に“見まいとした”ような見落としもある。
時太山事件ってあったでしょ。名古屋場所。確か犬山市だったかな、場所中に時太山という力士が亡くなった。愛知県の事件なので愛知県警の管轄で解剖になったんだけど、愛知県って、なぜか解剖件数が少ないんです。警察庁の統計を見ればすぐわかるんだけど、人口の割合からして、不釣り合いに少ない。時太山の事件も、警察の見落としがありました。実際にはリンチまがいのしごきで亡くなって、全身あざだらけだった。警察の嘱託医が、ろくに解剖もせずに、急性心不全と診断した。この力士、新潟出身の人で、遺体を見た遺族が、「これはおかしい」と思って、地元の警察に行った。新潟大学で承諾解剖が行われた。先生も学生時代にやったでしょ?系統解剖の実習。あれと同じで、死体解剖保存法という法律に基づいて、遺族の承諾を得て、法医学者が解剖したわけです。すると、死因は急性心不全ではなく、挫滅症候群と訂正された。
よくよく調べてみれば、死因が別物だった。そういうことは当然あり得ます。
筧千佐子の事件もそうです。保険金詐欺事件。あれも殺された人のほとんど全員が病死とされて、司法解剖されなかった。たまたま被害者の血液が保管されていた。後になって、あの女が関わった男性が次々と死んでいることが発覚し、それでその血液を調べたら、青酸カリが検出された。後になって死因が変わることは稀ではありません。
こういう事件を教訓にして、少し前に死因調査法という法律ができた。これは時限立法なんだけど、期間を延ばして、これに基づいて今も解剖が行われている。でも、この解剖結果に基づいて、必ずしも警察が動くわけではありません。たとえば、コロナワクチンの接種が原因で死亡したと私が診断しても、ファイザー社を被疑者として捜索する、なんてことはありません。警察が相手にするのは、法人ではなくて個人ですから。
別に警察は、死因を究明しようという高い理想を持っているわけではありません。彼らにとって一番の失態は、刑事事件の見落としです。それを避けるために、「万が一に備えて解剖してください」という手続きなので、我々法医学者の提出する報告書も実に簡略です。

この60代男性A氏の件についてお話しましょうか。
https://note.com/nakamuraclinic/n/n90d181a3aee9
状況としては、こうですね。ファイザーワクチン2回目を接種後、毎朝の習慣である散歩に行けなくなった。労作時の息切れを訴えていて、接種から5日目の朝、あまりにも苦しいのでかかりつけの医院に電話し、それから自転車でクリニックに向かった。自転車をこいでるときに、意識を消失した。
この発症機転は、当然血栓によるものです。私が実際に解剖して、確認しました

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心膜を逆Y字型に切開し、心臓を持ち上げて下大静脈、左右肺動静脈、大動脈と切り離していくのですが、このとき、肺動脈を切ると血管内に血栓が見えました。解剖のときには必ず、どの事例においても、左右の肺を手で押して、肺動脈に血栓がないかどうかを確認するのがルーティンですが、この方の場合、手で押す前から目視で血栓を確認できました。次にするべきことは、この血栓の由来を調べることです。胸を縫合して閉じ、ご遺体を腹臥位にします。膝下部からメスを入れ、ふくらはぎにかけて切開する。

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皮膚を筋膜からはがして、アキレス腱を切断し、そのままめくり上げると、深部の後脛骨静脈が見える。左側の下肢に血栓は見られませんでした。静脈を追いかけて、大腿静脈まで確認しましたが、やはり血栓はなかった。次に右の下肢を同じように見ていくと、多くの血栓がありましたソーセージのような巨大な血栓です。特徴的な所見なので、写真にも撮りました。
これらの所見から、私が考えた筋書きはこうです。恐らく接種2日後あたりから、小さい血栓が生じていた。なぜコロナワクチンの接種によって血栓が生じるのか、そのあたりについては私より先生のほうが詳しいでしょう。この小さな血栓が肺に飛んだ。そのために、肺の有効換気面積が減少し、息苦しくなった。病院に行こうとして、自転車をこぎ、その労作により左側の下肢静脈に滞留していた血栓が肺にとんだ。器質化していない柔らかい血栓なので、はがれやすいんです。この血栓閉塞が致命傷になった。そういう機序が医学的に最も考えやすいと思う。

こういう話を聞いて、疫学を専門にしている人なんかは、「一症例だけでは意味がない」っていうんだけど、私はそんなことはないと思う。遺伝因子は多様性があるので、人によって血栓のできやすい人、できにくい人がいるのは当然だろう。それに、実はコロナワクチン接種後に血栓症で亡くなった人を見たのは、この人だけではなくて、他に2人見ている。
もうひとりは、70代女性。PPE(肺動脈血栓塞栓症)の既往があって、高度肥満。これらは血栓症のリスクファクターで、この人は2回目接種後、家族の目の前で、急に足が痛いと言い出した。そして、息苦しいと言って倒れて、救急搬送。蘇生を受けたけどダメだったという人で、私が解剖しました。肺動脈内に血栓は確認できなかったけど、ワクチン接種後なので、念のために肺を丸ごとホルマリン固定して、それから矢状断で切断したものを見ると、肺動脈が全部つまっていた。部分的に病理組織標本を作製して詳しく見てみると、新鮮血栓が確認できました。この人の検案書にもワクチン接種が原因だと、A氏の場合と同じように記載したけど、遺族は動いてないみたいだね。
A氏は血栓症だけではなくて心筋炎も併発していた。このワクチンにより心筋炎が起こるという話はあちこちで聞く。実際、ここの大学病院でも職域接種で接種を受けた学生に心筋炎を発症した人がいます」

鵜川さんが法医学者に、ワクチン駆け込み寺に持ち込まれた症例を示した。
40代男性。ワクチン接種後に亡くなったが、死体検案書の死因は「急性心機能不全症」。
「この検案書を書いた解剖医は、我々法医学医の間で問題になっている人です。毎年3800件とか解剖をしていますが、こんなのあり得ない。うちは2人で現場を回していますが、きちんと解剖しようとすると、年間100体が限度ですよ。それ以上はできない。それなのに、この人は個人で、株式会社として、あり得ないほど多くの解剖をやっている。法医学会でも問題視されています。

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死体検案書の書き方も非常に雑です。まず、こんな死因をつけるのは許されない。誰でも死ぬときは心不全です。あと、死亡までの期間に「急死」と書いている。これは死に様であって、期間ではない。さらにいうと、所属。個人でやっていて、しかも株式会社。何ですかそれ。
こういう法医学者を放置しているのは、神奈川県警の体質なんです。基本的に、警察にとって重要なのは、事件か、事件じゃないか、それだけなんです。医者から事件性がないことのお墨付きがもらえれば、あとはどうでもいいわけです。
所見欄の記載もひどい。「左右冠状動脈硬化狭窄、右側狭小化、左側一部で狭窄著明、両肺うっ血、心肥大、心内血暗赤色流動性」とあるが、これは病理組織を見て、再灌流障害の所見を確認しないとダメ。狭窄していたくらいで心筋梗塞は起きない。一般的な内科的記述では、プラーク破裂とか動脈硬化を起こしたところの内皮がはずれて、そこに血小板が集まって、という所見が見られるはず。
非常にずさんな検案書です。できれば解剖をやり直したいところですが、組織を保存しているかどうか。
できれば肺と心臓、最低限心臓の病理組織を見たい。臓器がないとお手上げです。臓器の保管は場所をとります。私もある程度の期間が過ぎれば、焼いてもらっています。保管場所の問題には、どこの法医学教室も頭を抱えています。
神奈川には横市、聖マリ、北里、東海大の4つがあって、この4つはどこもしっかりしているから、このあたりの法医学教室なら臓器の保管はされているはずです。
この案件は、すでに警察の手を離れているので、弁護士を使うしかないと思う。弁護士法に基づいて、臓器の提出を求める。そういう方法しかないと思います」