コロナウイルス検査

罹患率の低い疾患(10万人あたり数人とか)に対して、感度や特異度がすごく高い検査を行なったとしても、あまり意味がない。検査で仮に陽性だったとしても、偽陽性の確率が高いからだ。
特にこういう新型ウイルスで陽性の患者が出ては、現場が混乱する。偽陽性だったとしても、陽性であることを前提に対処せざるを得ない。ベッドが瞬く間に偽陽性の健常者で埋まって、本当に必要な患者が入院できなくなるかもしれない。

罹患率の低い疾患に対する検査の無意味さは、医者なら誰でも知っている。このあたりは国家試験に頻出だから、みんな学生時代に勉強するんだよね^^
だからテレビで「できるだけ多くの人に検査をして感染拡大を防ぐべきだ」みたいな主張をするコメンテーターは、医者じゃない人(文系の人)が多いでしょ。まずは疫学の基本を勉強してから発言したほうがいい。

今回の新型コロナウイルスについて、実際にどの程度偽陽性が出ているのか、中国から論文が出た。2020年3月5日発表の論文だから、ごく最近のものだ。

『COVID-19患者と濃厚接触した"無症候性感染者"中の潜在的偽陽性率について』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32133832/?fbclid=IwAR3LHLplRtmPZED3jt_Hjf2ZKysmDcXMU5LgVgNPcqNAtb9EzcQBKMtCIoI
【目的】COVID-19の予防と感染拡大防止への努力が行われるなかで、患者と濃厚接触した人に対する核酸スクリーニングテストが中国の多くの地域で行われている。
しかし現在のところ、そのスクリーニングテストどれくらいの偽陽性が生じるのかについて、報告はない。COVID-19の感染拡大防止と予防のために、スクリーニングテストの偽陽性率を把握しておくことは極めて重要である。
【方法】は省略して、【結果】濃厚接触者の感染率、報告結果の感度、特異度を点推計として考えると、このスクリーニングの陽性反応的中度はわずか19.67%であり、陽性結果の偽陽性率は80.33%だった。
【結論】COVID-19患者と濃厚接触した人に対して核酸スクリーニングテストを行って「無症候性感染者」とされた人のうち、半数近くあるいはそれ以上が偽陽性だった。

どうでもいいような話だけど、濃厚接触って、 何かエロそうな響きがしませんか?実際医学的にも性感染症の文脈でよく出てくる言葉だけど、今回の騒動で連呼されたせいで、なんか聞き慣れたね^^;
濃厚接触はもともと英語のclose contactの訳なんだけど、見比べると、個人的な印象としては、英語は"あっけらかんとしてドライ"、日本語のほうは、"ディープでウェット"な感じがするんだよねぇ´д`

さて、上記の論文はなかなかおもしろいことを言っている。
「新型コロナの罹患者と濃厚接触しても症状が全然ない人を対象に検査をして、仮に陽性になったとしても、半数以上が偽陽性だよ」ということだ。
こんな検査は現場の無用な混乱を招くから、無意味に乱発してはいけない。せめて、症状(発熱何度以上とか、咳がずっと続いてるとか)によって検査対象者をしぼらないといけない。

すでに多くの感染者が出て、臨床症状が出そろってきている。核酸によるスクリーニング検査よりも、そういう症状に注目するほうが、精度が高い診断ができそうだ。
たとえばこんな記事。
『「味と匂いがなくなる」〜新型コロナ感染患者が強調』
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2485
この症状はかなり特徴的だ。
亜鉛不足によって味盲になることは、特に栄養療法の実践医でなくとも知っている。
新型コロナウイルスに罹患すると、体内の亜鉛がウイルスと戦う免疫系に優先的に供され、味を感じる味蕾細胞への供給が後手後手にまわるのかもしれない。
オーソモレキュラー学会が、今回の新型ウイルス予防に推奨するビタミン・ミネラルとして亜鉛を挙げているのは、やはり正しかったと言えそうだ。

しかし、志村けんやチャールズ皇太子まで新型ウイルスに感染したとは、すごい話だ。
こんなふうに誰もが知る有名人が罹患するぐらいだから、おそらく世間には、コロナウイルスのキャリアでありながら偽陽性の人(無症候性感染者)が、すでに山のようにいるに違いない。
無症候性感染者と接触した人のごく一部(栄養状態とか免疫状態の悪い人)に、新型コロナ特有の激しい症状が現れる、といことだろう。
すでに僕も、そしてあなたも、無症候性感染者になっている可能性がある。
もはや感染経路の検証とかは無意味で、イギリスが対処方針として掲げている「集団としての免疫を手に入れる」という路線で行くしかないような気がする。