十字式健康法

以下は、僕の治療成功例ではない。
ただ、結果的には「なぜかうまくいっている」という症例である。

40代男性
慢性疲労症候群疑い
「自分でいうのも何ですけどね、僕はうつになるタイプではありません。メンタルだけは人一倍強いつもりです。
そういう僕が、数か月前からやたらと疲れて、何とも言えない重だるさを感じるようになりました。
気持ち的には働きたいんです。気力は全然あります。でも、体がついていかないんですね。一体これは何なんでしょう?
症状には波があって、いいときはいいんです。でも調子が悪いときは、朝起きてからずっと肩や首が重い感じです。
気づいたんですが、便通のいいときは調子もいい。逆に下痢のときは、体が重くて、仕事にも行きたくないぐらいです」

生来健康な男性が、こういう異常な疲労感を訴えた場合、どう考えるか?
まず、体の酸化による症状を疑う。血液がアルカリに保たれていれば、こういう症状は起こり得ない。
とりあえず、「何か薬を飲んでいませんか?」と一本釣りの狙いで聞いてみる。「そういえばコレステロールを下げる薬を最近飲み始めました」なんてのが出てきたらビンゴ。
スタチン誘発性の抑うつと横紋筋融解症と考えて、治療は投薬の中止と抗酸化サプリ(たとえばコエンザイムQ10あたり)を出しておけばいい。しかし、そうそう滅多に当たるもんじゃない。

「そういう症状が出る前後の頃から、何か生活の変化はありましたか?」とぼんやり探りを入れると、
「妻と離婚するかしないかでもめて、去年離婚が成立しました。確かにストレスでしたけど、最終的には、なんというか、円満離婚で、特に今でもその影響を引きずっているつもりはないです。
あと、離婚後、個人で店をやり始めました。だから、今、僕がつぶれるわけにはいかないんですね。そういう意味でも、働かないといけないんです」
対人関係に起因するストレス、は一応原因としてあり得る。さらに、住環境、労働環境の変化を経験している。
店を開業されたということだから、たとえばシックハウス症候群に起因するカビ毒など、環境要因はけっこう疑わしい。
「失礼ですが、ご職業は?」
「喫茶店を始めました」
ここでピンときた。まだ確定ではないが、直感的にはまずこれだろう。
コーヒーはパニック障害を誘発することが分かっている。
『パニック障害患者およびパニック発作を伴ううつ病患者におけるカフェイン負荷による症状誘発テスト』
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0010440X06001416

こういう論文があるものの、個人的には、カフェインが絶対的な悪だとは思っていない。たとえばちゃんとした有機栽培の緑茶(カフェイン含有飲料)は、こういう患者が飲んでも全然問題ないと思う。
カフェインが悪いというより、たとえば粗悪なコーヒー豆に含まれているカビ毒とか、コーヒー豆に残留する農薬成分が悪影響を及ぼしていることのほうが多い印象を持っている。
しかしこの人の場合、コーヒーのテイスティングがかかせない職業だから、「コーヒーはやめてください」とはなかなか言いにくい。
原因の除去が第一だが、それが叶わないとなれば次善策として、抗酸化の栄養素やサプリを勧めた。また、本人の希望から、抗不安薬を処方した。
次回来院時、患者がいう。
「調子はまぁまぁですね。やはり、いいときもあれば悪いときもある、といった感じです。
何が効いたかって?それはもちろん、ソラナックスですね。え、薬以外で?
うーん、どうでしょうね。
ナイアシンはちょっと効いたかな。でもその他は微妙ですね、正直。
ああ、そうそう。先生、十字式健康法って知っていますか?
術者にこう背中を向けて、気みたいなのを送ってもらうんですね。
いえ、マッサージではないです。ほとんど触りません。気みたいなのを送って、背骨のゆがみをとる、ということらしいんですけど、これがね、ものすごく効きます。ソラナックス以上に効いていると思います。
これを受けると、三日は疲労感なく、楽に過ごせますね。何日かするとまた疲れてきて、施術をしてもらわないといけないのですが。
一回2300円。これだけ払って三日間楽に過ごせるのなら、安いものです。キリスト教というか、ちょっと宗教っぽい雰囲気がありますが、別に勧誘されるわけではないです。
三宮にやってくれるところがあるので、先生も一度行ってみてはどうですか?
もし本当に行かれるのであれば、ちょっとした注意があります。術者が三人ぐらいいるのですが、技量の差はばらばらですね。いや、術者と患者の相性のせいなのかな、その辺はちょっとわからないけど」

僕の治療によって改善したというよりは、十字式健康法なる施術によって回復したようだ。
この治療法は初耳だったので、調べてみたところ、北海道出身の獣医師安久津政人氏(1927~2015)によって編み出された治療法で、多くの慢性患者を救ってきたという。
興味がわいたので、本を買ってみた。

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いわゆる「気」の存在については、個人的には当然あるものだと思っているから、この本の内容はおおむね素直に納得することができた。安久津氏は自身の創始した十字式を、糖尿病や癌などの慢性疾患に対しても有効だとしていて、その理由を以下のように説明している。

「癌の原因として、外因性にはタバコなどの発癌性物質を体に入れて、細胞がそれに抵抗できなくなって癌になる。もう一つは僕の仮説だが、背骨のゆがみによって、各臓器に伸びる神経がずれ、その結果、その臓器の血流が悪くなって邪気がたまる。そうすると、そこの細胞の遺伝子が異常を起こし、最後に癌となる。ここに念力をいれて、悪い部分の血液循環を回復させ、癌のもとの邪気を抜くと、癌は死滅する。癌になる前の症状なら、我々の第4の力(念力)で抜けるが、一度癌になってしまったら、第5の力(聖霊による癒やし)を使わないとダメだ。癌になった基本原因は第4の力で改善できるが、癌そのものを取り除くには聖霊によるしかない。信仰のない者にはできない方法なんだ」

前半はともかく、後半のほうは「ちょっと何言ってるかわからない」(サンド富澤風)という感じなんだけど^^;、結果を出している安久津氏の言葉である。

上記患者は、僕には治せなかった。でも、十字式は治せた。結果を出しているという重みには、かなわんよねぇ。