井穴刺絡

「この3連休、兵庫と大阪の行き来は自粛するように」という異例の呼びかけが出ている。
普段別に旅行好きでもないくせに、こういう自粛ムードのなかでこそ、あえて旅行するというね^^;
そういうわけで、「じも」に行ってきました^^

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門司は九州の端っこと本州の端っこを結ぶ中継地点。
そういうつなぎ目みたいな町で、春分という真ん中のこの日に夕日を拝むのも、何かの縁かもしれない。

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最高の天気で、最高の夕日だった。
こういう日に自粛して家でじっと閉じこもっていては、かえって病気になりますよ^^外に出て、しっかりお日さんに当たろう。
門司港にある地ビール屋にいって、売っている4種類のビールを一通り飲んだ。
バイツェンが一番うまくて、次にペールエール。サクラビールとピルスナーは正直あんまりおいしくなかったな^^;

なぜ、門司に来たのか?
知り合いの鍼灸師さんの施術(鍼灸、刺絡、カッピング、瀉血など)を受けるためだ。
西洋医学的な診察なら慣れている。慣れるというか、僕がそういうのをする側だからね^^;
しかし、東洋医学的な診察を受けるのは初めてのことだった。
一番最初、脈をとるだけで、こんなことを言われた。
「脈、皮膚の感じから、肺と腎臓が弱いですね。声が鼻声というか、虚弱な感じです。
でも機能はきちんと保たれていて、日常生活的には何ら問題はないでしょう。こうやって体を触ったりお灸の反応を見ているだけで、分かります」
おもしろいね。
脈をとるにしても、西洋医学はテンポ(速さ、整/不整)にしか興味がない。東洋医学は脈の速さだけではなくて、強さや深さにも注目する。
達人の域になれば、脈拍をとるだけで妊娠しているかどうかを言い当てられるという(妊婦の脈拍は特殊で、特に「滑脈」という名前がついている)。
望診(視覚による診察)で舌を観察したり、聞診で声やにおい(!)さえも観察する。西洋医学にはないアプローチがおもしろい。一般の内科医にも使える技術があると思う。
さらに、こんなことを指摘された。
「背骨が曲がっていますし、筋肉に張りがない。
いや、筋トレをしてるのはもちろんわかります。そういう意味ではなくて、人間が本来持っているべき筋肉のしなやかさが、ちょっと弱いようです。
先生は本来、虚弱な方なんでしょうね。でも、日々の心がけや知識でご自身の健康を維持されている。そういう人こそ、医者に向いていると思います。『生まれついての健康体で、ろくな病気をしたこともない』という人は、患者の気持ちが分かりませんから」
見抜かれちゃしょうがない。そう、僕はもともと健康的なほうではないと思う。小さいときはアトピーだったし。
そして僕は、そのような生来の病弱さに対して、西洋医学が無力であることを知っている。
僕のところに来る患者は、「一度は西洋医学にすがったものの、全然改善しなかった」という人が多い。確かに、西洋医学の限界を知る僕だからこそ、できるアドバイスがあるかもしれない。

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施術を受けた後、一番驚いたのは、顔のむくみがとれたこと。治ってみて初めて、「俺の顔はむくんでいたんだな」と気付かされた。
施術後、鍼灸師さんが、セルフケアとして、どこを押せばどういう効果があるのか、簡単に教えてくれた。
そのなかで、「井穴刺絡(せいけつしらく)」という言葉が出てきて、興味を持った。嫁に不倫された落語家のこと?それは立川志らくですね。
井穴刺絡のことは安保徹先生の本に出てくるから、何となく知っていた。
しかし、こうやって現役の鍼灸師さんからその何たるかを直々にレクチャーしてもらうのは初めてのことだった。
長い話を短くすると、「指の爪の付け根あたりを強く押すと、何かとありがたい効果があるよ」という感じだけど、これは単なる経験知ではなく、十分な科学的裏付けがある。
たとえばこんな論文。
『井穴刺絡覚え書~浅見鉄男』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ryodoraku1986/38/3/38_3_69/_pdf
どの指の爪の付け根の、どの部分を押せば、どのような効果があるかが、綿密に調べられている。
体の一部を圧迫することにより、迷走神経反射(副交感神経反射)が起こり、徐脈や血圧低下が起こることは西洋医学でも認められているが、東洋医学ではこの作用がもっと深く研究されていて、かつ、治療にも応用されている。
指先をもむことによって自律神経系の働きが整い、結果、慢性的な症状(肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、胃腸症状など)が軽快する、という具合だ。

ただ、どんな不調も必ず改善する、などと大きなことは言えないと思う。
たとえば症状が食品由来(精製糖質、グルテン、添加物、農薬など)に由来するものであった場合、その原因の除去なくして根治はあり得ない。しかしそういう場合にも、井穴刺絡を行うことで、症状を緩和する効果は充分に期待できるだろう。