人のために祈ること

コロナが始まって、嫌なことも多いけど、いいこともある。そのひとつは、新しい人間関係ができたことだ。コロナがきっかけで疎遠になった人もいれば、逆に、コロナが縁で新たな付き合いも生まれた。鵜川和久さんもその一人だ。

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鵜川さんの人生は波乱万丈で、映画の2、3本でも作れると思う(笑)高校時代にラグビーの日本代表に選ばれたり、闇社会の人と交わって心に深い傷を負ったり、工場労働者として働いて人の優しさに触れたり。いろいろと紆余曲折あって、現在はタイ式マッサージサロン(「バーン・ハナ」)を経営している。
https://hana-group.asia/
もともとは足裏マッサージのサロンを経営していたが、タイで本場のタイ式マッサージを経験するうちに、その魅力にとりつかれた。鵜川さんが感心したのは、タイのマッサージ師のホスピタリティだった。タイ式の技術的な側面にも見るべきもの感じたが、それ以上に、マッサージ師が客を思いやる気遣いがすばらしいと思った。本来、マッサージは手当てだった。苦しんでいる人に寄り添い、そっと手を当てて、元気づける。すべての原点は相手の幸せを思い、願い、祈ることである。その本来の形が、タイ式マッサージには残っているように感じられた。
「日本にタイ式マッサージを取り入れたい」そこで、タイに日本人のためのタイ式セラピスト養成学校を作った。圧のかけ方、指の当て方など、タイ式の技法を徹底して訓練する。1週間の訓練を終えてタイ式を習得した卒業生が、日本でもタイ式を実践した。
鵜川さんは京都、大阪、兵庫を中心に「バーン・ハナ」を複数店舗経営している。一定以上のクオリティの施術を提供できるように、スタッフ教育は徹底している。どの店のどのスタッフが担当しても、お客さんがしっかりタイ式を満喫できる。それが理想ではあるが、しかし経験年数など、スタッフの能力に多少のばらつきが出ることはやむを得ない。
ある店舗のスタッフに、異様に指名率の高い人がいた。客にはいろいろな客がいるもので、特に施術スタッフにはこだわらないリピーターもいれば、「ぜひまたこの人にお願いしたい」と再指名する客もいる。鵜川さんは、某店舗の某スタッフの再指名率が突出していることに気付いた。経験年数は浅い。技術的に特に突出したものを持っているわけでもない。不思議だ。なぜこんなにリピートされるのだろう。そこで、本人に直接聞いてみた。「なんでこんなに指名率高いの?」
「分かりません。ただ、多少他の人と違うところがあるとすると、それは常に祈っていることかもしれません。施術をしながら、相手のことを祈っています。疲れが取れますように。幸せになりますように、と」
この答えに、鵜川さんはハッとした。そう、相手のために祈る。それこそがタイ式マッサージの核心だった。店舗を拡大するうちに、スタッフの技術面の指導が優先されて、つい精神面での指導がおろそかになっていた。いや、率直に言って、技術面での指導は可能だとしても、祈ることは教えられない。もちろん、スタッフにその重要性を説くことはするが、その祈りを実践するかしないかは、スタッフの胸ひとつである。結局のところ、心は目に見えない。鵜川さんとしても「もっと祈れ」とスタッフに指導することはできない。
ただ、客は感じている。30分なり60分なりの施術を受けるうちに、スタッフの手から発散される何か目に見えないものを、心に感じている。そして施術後、長らく感じたことのない不思議な幸せを感じる。それは、幼いころにケガをして、母親がそこに優しく手を当ててくれた、あのあたたかさに似ている。そして客は、ほとんど無意識のうちに求め始める。「あのスタッフの手当てをもう一度受けたい」と。

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当院は毎週木曜日、休診となっていますが、来週以後の木曜日、「バーン・ハナ」のスタッフが当院に施術に来て頂けることになりました。病気を治す、というようなものではなく、体のアンバランスを整える施術です。ギューギュー押すだけのマッサージにうんざりしている人は、一度ぜひ試してみてください。

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最後に告知です。
2月27日高知で講演会をします。元理研の研究者コバヤンとカタカムナ文字の研究者赤間えり子さんとの共同講演です。
僕は最近、断れる講演はできるだけ断っています。講演をやるとなれば本気でやりたいし、そうなればスライド作りに忙殺されて、仕事が回らなくなる。だから基本、そもそも受けない。ただ、ある事情から、この高知講演は引き受けようと思いました。
講演内容はコロナ関連です。最近の講演はゲルマニウムとかチャーガとか、コロナ以外が多かったので、コロナ関連で話すのは久しぶりです。お近くにお住まいの方はぜひいらしてください。