講演会 in 札幌

トリトン、花まる、なごやか亭。さて、何でしょう?
と聞かれて、即答できた人は間違いなく北海道民です(笑)
答えは「回転寿司屋」です。

タクシーの運転手が「北海道の回転寿司はレベルが高すぎて、そこらへんの普通の寿司屋に行くのがバカらしくなりますよ」と言っていて、それほどまで言うならぜひ食べてみたいと思ったけど、ちょうど夕食時だったせいもあって、どこの店も大行列。この光景はちょっとしたカルチャーショックだった(関西の人間にとって回転寿司というのは並んでまでして食べるようなものではないのです)。「1時間も並べへんわ」と思ってあきらめようとしたら、運転手さんが機転の利く人で「お持ち帰りすればいいですよ。そうすればすぐ買えます」と。
その通りで、ほとんど待ち時間なく買えた。買うときに店内に入ったけど、回転寿司なのに職人が握っていた。「ああ、これはレベルが高いわけだ」と思った。ネタは北海道のとれたてで、それをロボットじゃなくてちゃんと職人が握っているとなれば、うまいに決まっている。
かっぱ寿司は北海道へのチェーン展開をあきらめたというが、この回転寿司激戦区で勝ち抜くのは相当困難だろう。
道民にとってみれば、最高にうまい寿司を比較的安価に食べられるのだから、これは北海道に住む幸せのひとつに違いない。

食の幸せということでいうと、札幌の場外市場でたまたま目について入った海鮮丼屋がよかった。

ウニ、イクラ、カニのどんぶり。

こういうのは刺身のうまさと同じで、ウニやイクラなんてそのまま食べても当然おいしいのだから、他の具材が花形選手(ウニイクラ)のプレーを邪魔しないことが大事である。この丼はそういう点をちゃんと守っていて、ちゃんとうまかった。

そのほか、

富良野まで行かずとも、札幌にもラベンダー園があります

ラベンダーを見に行ったり、

サルを見て興奮するこうちゃん

動物園に行ったり、

ウスゲハシンドイという植物名を見て苦笑する筆者

植物園に行ったりした。

途中の移動はすべてタクシーを使ったのだけれど、街の標識とかバス停が、

「北12西5」みたいな感じの看板をあちこちに見かけた。これは「北12条西5丁目」という意味だけど、座標そのものだよね。
これは、関西の感覚からいうと、完全に京都ですね。「河原町四条下る2丁目」みたいなネーミングと同じです。京都は一応千年の歴史が、札幌にも明治開拓使以来百数十年の歴史があるけれども、いずれの街も、計画的に作られた人工都市なのだと分かります。
実際、札幌は京都から見て裏鬼門であり、島義勇が京都を守るための裏京都として札幌を作ったという説もあったりする。

https://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/tra/kishi/construction_Sapporo.pdf

さて、ここでクエスチョン(ふしぎ発見風)。

札幌の街が”座標”だとすると、”原点”はどこでしょうか?
正解はCMのあとで(笑)

さて、単に北海道に旅行に行ったわけではありません。しっかりお仕事(講演)をしてまいりました。

ここ3年ほどあちこちに講演で呼ばれては、コロナのこと、ワクチンのことばかりしゃべっていて、まるで「コロナ芸人」のようでした(笑)
しかし本職は一応医者で、特に栄養のことを(それなりに)詳しくやっております。
ようやくコロナも終わり、そろそろコロナ前の日常、栄養のことをこうやってお話しする日常が戻ってきたなと感じています。

具体的に、何について話したのか?
まず、ウェストン A.プライス博士の仕事を紹介しました。A.プライスといっても、

スーパーの話ではありません(笑)

1925年、今から百年ほど前には、いわゆる未開部族と呼ばれる人がかろうじて存在していました。こういう人たちの歯がいかにすばらしかったか、また、彼らが西洋文明と接し、西洋的なライフスタイルを取り入れることでどんなふうに歯がダメになっていったのか、プライスはそのことをこの上なく明瞭な形で提示しました。
説得力のあるすばらしい仕事ですが、ここでは詳しくは触れません。

ただ、北海道つながりということで、イヌイットについて少しだけ。

イヌイットネイティブの女性ですが、顔のタトゥーや服の模様に注目。

一方、これは木製のゴーグルをつけるイヌイット。スキーをする人は分かると思うけど、太陽光と雪の反射ってすごい強烈で、紫外線で雪眼炎になるのは今も昔も変わらない。だから、彼ら、こういうゴーグルをして目を守っていたわけです。
さて、こういうのを見た上で、

縄文土器とかアイヌ模様を見れば、どうですか?
土偶の特徴的な顔はゴーグルを模したものであったかもしれない。また、ひょっとしたら、縄文を作った人々は、アイヌやイヌイットと共通の先祖を持つかもしれない。

実際、アイヌというのは現地の言葉で「ヒト」という意味で、イヌイットにも同様の意味がある。

3万5千年前には、ユーラシア大陸と北米は地続きだった。縄文を作った人たちのうち、北海道にとどまった人がアイヌ、ベーリング海峡を越えて北米大陸にまで行った人がイヌイットと呼ばれているのかもしれない。
しかしこの200年ほど、イヌイットにとって受難の時代でした。

カナダ政府により、辺境に追いやられ、狩りを禁じられ、名前ではなく番号で呼ばれ、そりを引く犬を殺され、子供たちを半ば拉致された。
猟もできず、生きがいもない。かといって、自殺もできない。そんなとき、手元に強いアルコールがあれば、人間は飲まずにいられない。

『アラスカネイティブのアルコール問題』

こうして酒におぼれ、社会的にますます落伍していくことになる。
このようなイヌイットの姿を見て、少数ながら問題意識を持つ白人もいた。「これ、やばくない?俺らがやってることって、文化破壊そのものじゃないか?」
だからこそ、こんなドキュメンタリーが作られたりした。
https://www.youtube.com/watch?v=W9oIYE4iWMk
1959年に作られたカラーフィルム。文化破壊をする当の白人自身に、ある種のやましさがあったと思う。そういう意識がなかったら、こんなふうに記録に残しておこうとはならないだろう。

プライスは南米にも行っている。栄養と無関係のことだけど、クスコにある石壁を見て驚嘆したと著書にある。

12の角がある石で、石と石のすきまには、ナイフの刃ひとつ通す隙間もない

日本の城の石垣を見るといい。石と石のあいだは、ガバガバのごわごわで、クスコの石壁を作った技術力とは比べ物にならない。
古代インカの人々は一体どのようにしてこの石壁を作ったのか。
これが今なおまったく分からない。スペイン人が原住民を殺しまくったこともあって文化的な伝統が完全に途絶えてしまった。
UFOなどの地球外生命体が作ったという説がまことしやかにささやかれているが、そういう説を信じたくなるほど、この石壁の技術は人知を圧倒している。

かつて、ヤーガン族という原住民が南米にいた。

南米って、どちらかというと南極が近いぐらいだから、かなり寒いんだけど、

ヤーガン族は基本的に裸族だった。

母と子

これ、すばらしい写真だ。

しかしヤーガン族は去年絶滅した。

2022年純血のヤーガン族女性クリスチナ・カルダーソンさん(93歳)が死亡した。これに伴い、ヤーガン語を話す最後の一人が地球上から絶滅した。
2017年に行われたインタビューで、このような質問があった。
これからあなたの民族はこの世から消滅します。生き残った人類たちに言いたいことはありますか?
なんというか、超上から目線で、こんなに失礼な質問も他にないだろうけど(笑)、この質問に対して、カルダーソンさん、このように答えた。
「酒は飲むな。自分の民族の男たちは酒がなかったことはよく働いていたが、酒を飲むようになったことで男たちは全員が働かなくなった。それで淘汰されてしまった」

アルコールで壊滅的なダメージを受けた原住民は他にもいて、たとえば、

このネイティブアメリカンの部族では、成人の3分の2がアルコール依存症だという。

しかし、ヤーガン族最後の女性の警告に反対するようだけど、個人的には、酒だけが原因で部族が滅亡するとは思わない。酒がそんなに危険な物質なら、日本酒という文化を持つ日本人はとっくの昔に滅びているのでは?
おそらく、上記のイヌイットの例にあるように、
(生きがいの消失)×(アルコールの害)=無限大
ということじゃないかな。
つまり、酒が危険なのは、他に楽しみとか生きがいを失った人に対してであって、日々やるべきこととか人生の充実がある人にとっては、それほど危険ではないのでは?
ということをヤーガン女性に言いたいところだけど、彼女を含めヤーガン族自体がこの世から消滅してしまいました。