グルタミン酸と自閉症1

なぜ自閉症になるのか。その機序はだいたい分かっている。
自閉症について知ることは、実は、神経疾患全般を知ることにもつながっている。実際、以下に見ていくように、自閉症とアルツハイマー病の関係性は、発症年齢の違いだけであって、「ほとんど同じ病気」と言ってしまいたいくらいに病態生理が似通っている。「アルツハイマー病は高齢発症の自閉症であり、自閉症は幼年発症のアルツハイマー病である」と指摘する学者もいるほどだ。
さらに、自閉症と統合失調症も同じような病気である。社交性の欠如とか注意力散漫とか、表面上の類似だけではない。「妊娠第二期のインフルエンザ感染(あるいはインフルエンザワクチン接種)によって、児の自閉症および統合失調症の発症率が上昇する」という具合に、疾患の発症機転自体にかなりの共通点がある。この点についても後で詳しく見ていこう。
「自閉症≒アルツハイマー病≒統合失調症」
このあたりの神経疾患の類似性については、僕みたいに栄養療法をやっている人なら、薄々感じているんじゃないかな。というのは、使うサプリがだいたい同じだから。ナイアシンとか亜鉛とかヤマブシタケとか。「一見違う病気だけど同じサプリがどちらにも効くんだから、そもそも同じような病気なんじゃないの?」という素朴な直感が、案外当たってるっていう、そういう話をします。
ただし、フォーカスは自閉症に当てます。というのも、自閉症を含めた発達障害は親の知識次第(ワクチンに対する認識など)でかなりの部分防げる病気だから。

自閉症に関する研究は多い。多すぎるから、研究論文を片っ端から読むという勉強では、それだけで一生が終わってしまう。たとえば「自閉症児ではグルタチオン濃度が低い」とか「脱メチレーションが起こっている」とか。なるほど、こういう個別ばらばらの研究にも、それ相応の事実が含まれているに違いない。
しかし、その全体像は?自閉症の根本的な発症メカニズムは何か?体内で何が起こっているのか?多くの細切れの事実を統合する理論はいかなるものか?
「脳の炎症こそが核心だ」などという。しかし、腕やら尻に打ったワクチンが、なぜ脳で炎症を起こすのか。そのあたりの説明は、みなさん、あまり聞いたことがないだろう。
自閉症の原因は、一言で言うと、immunoexcitotoxicity(免疫興奮毒性)である。イミュノエキサイトトキシシティーというのは英語ネイティブにとっても舌を噛みそうな言葉だけど、これはRussel Blaylock博士の造語である。広く医学会に認められた概念ではないから、一般的な医学の教科書には出てこない。しかし自閉症の原因をこれほど簡潔に表した言葉を、僕は他に知らない。
これは要するに、自閉症には免疫と興奮毒、二つの要因があるということである。しかしこれらは別物ではない。同時に起こるものであり、病態の経過そのものである。

まずは興奮毒(excitotoxin)について。
神経伝達物質などと聞くと、セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、アセチルコリンなどが思い浮かぶだろう。でもグルタミン酸のことはあまり聞いたことがないかもしれない。昔、「味の素を食べると頭がよくなる」という俗説があったのをご存じですか?某有名大学の教授が唱えた説で、要するに「味の素=グルタミン酸ナトリウム→グルタミン酸が脳を刺激→頭がよくなる」という話。世間の教育ママはこの説を信奉して、我が子にたっぷり味の素を食べさせたものだが、後で見ていくように、実際には過剰のグルタミン酸は興奮毒として脳にダメージを与える。
グルタミン酸は、すべての神経伝達物質のなかで最も重要である。最も豊富に存在し、かつ、最も使用頻度が高い。他のすべての神経伝達物質の合計よりもさらに多くの仕事をしている。
脳皮質の神経伝達の90%を、ニューロン(神経細胞)全体の神経伝達では50%を、グルタミン酸が担っている。それだけではなく、他の神経伝達物質の調整をしたり、脳の発達にとっても極めて重要である。子宮内にいるときから生後3,4年まで、グルタミン酸が果たす役割はとてつもなく大きい。

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基礎的なことを確認しておこう。神経伝達とは何か。シナプスで行われる脳細胞間のコミュニケーションのことだ。ニューロンの末端からグルタミン酸が放出され、それが隣接するニューロンにある受容体に結合する。そうすることでインパルスが伝達される。
さて、グルタミン酸の受容体には以下のように複数ある。
どの受容体が優勢かは脳の発達段階で違うし、受容体の感受性も異なる。感受性が強いときもあれば弱いときもある。

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たとえばAMPA型グルタミン酸受容体は後シナプス膜にあって、休眠状態では何もしないが、免疫刺激によってグルタミン酸の流入が増加する。つまり、免疫系が神経の感受性を高める。このためにごく微量のグルタミン酸でもインパルスが生じる。
問題なのはこのインパルスの過剰で、過剰なグルタミン酸はシナプス全体を破壊する。これが興奮毒性である。グルタミン酸は脳内で最もありふれた神経伝達物質でありながら、同時の最も毒性が強い。
いいですか、もう一度言いますよ。「最も豊富でありながら、最も毒性の強い神経伝達物質」これがグルタミン酸です。

脳はこのグルタミン酸の毒性を制御するために、非常に手の込んだシステムを備えている。このシステムを制御できなくなると、様々な症状が出ることになる。たとえば自閉症では、ほぼすべての症状(てんかんなどの神経学的症状も含めて)にグルタミン酸が関与していると言っても過言ではない。

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「グルタミン酸が受容体と結合すると、細胞内にカルシウムが流入する」わけだが、この過程をもう少し詳しく言うと、グルタミン酸の作動にはグリシンやDセリンも必要。グリシンは適量なら睡眠補助剤(グリナ)になるが、過剰では興奮毒を悪化させることがあるのはこれが理由である。
マグネシウムと亜鉛はこの興奮毒を抑制する方向に作用する。マグネシウム濃度が高いと、グルタミン酸のNMDA受容体に対する過剰反応が抑制される。逆に、マグネシウム濃度が低いと、けいれんが起こりやすくなる。ADDやADHDの人ではてんかんを併発している人が多いものだけど、これを科学の言葉で説明すると、「マグネシウム不足によってNMDA型グルタミン酸受容体の感受性が高まっているため」ということになる。

マグネシウム不足があるのは、何も自閉症患者に限らない。
まぶたが突然ぴくぴくとけいれんする人や夜寝ているときにこむら返りになる人は、まず間違いなくマグネシウム不足がある。
「採血でマグネシウムを調べたけど、全然問題なかったよ」という人もいるだろう。しかし血中のマグネシウムが低下し始めるのは、マグネシウム欠乏の末期の末期である。
「生物は海から発生した」という説をご存じですか。生物は海から陸上に進出するにあたって、いわば、「体の中に海を閉じ込めた」。それが証拠に、海水の成分と血液の成分は極めて類似している。息を吸ったり吐いたりのリズムは潮が満ちたり引いたりのリズムで、僕らは海の記憶を体内に蓄えて、地上に進出してきた。
血液成分のうち、ナトリウムやカリウム、カルシウムはそれほど不足することはない。しかし現代の食生活において、マグネシウムは不足しがちである。血液というのは、内なる海である。海の成分が変化しては、そこに住む生物(白血球、赤血球など)にとって一大事である。だから体は、組織のマグネシウムを犠牲にしてでも、血中のマグネシウム濃度を保とうとする。
だから、採血で血中マグネシウム濃度がオッケーでも、それでマグネシウムが足りていると即断してはいけないよ。

【参考】
Dr. Russell Blaylock “Vaccines and Immunoexcitotoxicity”