CBDオイルと痛み

痛みは不快なもので、この不快感こそが人を病院受診へ駆り立てる。病院のほうも心得たもので、鎮痛薬のラインナップはばっちりそろえている。
まず、痛み全般に効くアスピリン、イブプロフェンから始まって、各種の頭痛薬、神経痛にはリリカ、慢性痛にはトラムセット、癌性疼痛となればコデイン、モルヒネなどのオピオイドまで。
しかしこれらの薬で痛みの問題が万事解決するかというと、決してそうではない。痛み止めには、副作用がつきものだ。
アスピリンは頭痛持ちにはありがたい薬だけど、連用すれば胃潰瘍などの消化器系に不調を生じるし、癌の痛み止めにオピオイドを使っている人では便秘が必発だ。

"副作用のない痛み止め"などという、都合のいいものが果たして存在するだろうか?
この答えは、「イエス」。存在します。それもひとつふたつではなく、たくさんある。CBDオイル、有機ゲルマニウムはもちろん、ハーブ、スパイスの類には鎮痛作用を発揮するものが多い。虫歯の痛みには昔からクローブが使われてきたし、「ターメリック(ウコン)500 ㎎にはアセトアミノフェン2000 ㎎相当の鎮痛効果がある」とする研究もある。
そもそも、痛みとは何か?
痛みとは炎症の一形態である。「発熱、発赤、疼痛、腫脹が"炎症の4兆候"」。だから抗炎症作用のある物質が熱を下げたり痛みを和らげるのは、ある意味当然のことだ。

以下、CBDオイルのオンライン勉強会でのやりとりである。

「CBDオイルは痛みに効くということで、当院では線維筋痛症など一般病院の治療では疼痛管理が難しい患者にCBDオイルを出しています。
これまで15人の患者を見てきましたが、そのうち4人から「全然効かない」と言われました。CBDオイルの限界、ということでしょうか。それとも何か他に問題があるのでしょうか」
「当院でも失敗した経験があります。リウマチ性多発筋痛症の人にCBDオイルを処方しましたが効かず、結局その人にはステロイドが効きました。
線維筋痛症や多発筋痛症など、CBDオイルが本来著効するはずの疾患に対し、効かない人がいるのも事実です。これは使い方(量、濃度、タイミングなど)の問題でしょうか。あるいは栄養の問題が背景にあるのでしょうか」
「確かに、栄養の問題はあると思います。たとえば線維筋痛症で多いのは、ビタミンB群、ビタミンD、マグネシウム、鉄などの不足です。細胞のエネルギー産生が低下している人にはCBDオイルが効きにくいのかもしれません。
そもそも、たいていの薬は血中でアルブミンと結合して運ばれます。アルブミンの少ない人では薬の主作用よりも副作用が前面に出やすいということは、多くの先生が経験されているのではないでしょうか。
どんな治療を受けるのであれ、まず、グルテン、カゼイン、砂糖をやめることは必須です。これだけで腸の炎症が軽減し、結果、全身の炎症傾向も低下します。そこに栄養的に何か加えるなら、まず、脂溶性ビタミン。特にD。血中ビタミンDが高まると、自前のステロイド産生が増えて、ステロイド服用者なら減量に寄与します。脂溶性ビタミンが充足すれば水溶性ビタミンの利用効率も高まり、エネルギーが充足し、CBDオイルも効きやすくなるように思います」
「キレーションをやると線維筋痛症の痛みが軽減した症例をいくつも経験しています。カルシウムEDTAを2クールするだけで、たいてい治ります。線維筋痛症と水銀などの重金属(ワクチン、薬、調理器具などに由来)との関係が言われています。虫歯の治療でアマルガムが口の中にあるのもリスクですね。ここから逆算して考えると、重金属によって内因性カンナビノイドが低下するのかもしれませんし、CBDオイルには重金属のキレート効果があるのかもしれません」

成功例の供覧だけではつまらない。学校の定期テストは、解けない問題をあぶりだすことにこそ、意味がある。同様に、失敗した症例こそ最高のテキストだ。ただ、一般の学会で失敗症例がこのようにあけすけに語られることはあまりない。医者のプライドが邪魔をするせいだ。
しかしこのオンライン勉強会では、失敗談もポンポン飛び出す。これこそ真剣さの証だろう。参加者は皆、「CBDオイルというこの新しい治療法を、ぜひ自分の診療スタイルに取り込みたい」と本気で思っている。
自分の失敗談を正直に語るこういう医者を前にすれば、何だかこちらのほうでも「正直にならないと」っていう気持ちになって、「僕のほうで何か少しでも参考になるアドバイスができないかな」って真剣に考える。こういうちょっとした緊張感って、いいものなんだ。