ケイ素学会 in 名古屋
きのうはケイ素学会の講演で名古屋に行ってきた。
ケイ素が著効したと思われる症例(コロナ(疑い)、認知症、リウマチ、骨粗鬆症、コロナワクチン後遺症など)を供覧し、これらの症例になぜケイ素が効いたのか、そのメカニズムについて説明した。
ただ、ありきたりの説明ではおもしろくない。そんな情報はネットに山ほど落ちている。せっかく僕を講演に呼んでくれたのだから、ちょっと毛色の違うことがしたい。そこで、元素転換(transmutation)の観点からケイ素の機序を説明した。
まず、元素転換とは何か、から始めた。
ラボワジエ以来、化学の世界では「化学反応の前後で元素の種類と物質量は不変」という質量保存則が支配的だった。しかし19世紀末になって、放射線(アルファ崩壊、ベータ崩壊など)が発見され、この法則の絶対性が崩れた。たとえば、アルファ崩壊によってポロニウム(210)が鉛(206)とヘリウム(4)になる。
つまり、ある元素から別の元素が生じる元素転換が認められたわけだ。しかしこれはあくまで特殊な環境下で起こることであり、通常は起こらないとされている。
しかし実際には、元素転換は我々の身近で常に起こっている。この現象なくして生命現象は成り立たないとさえ言えるし、すでに工業分野で実用化されている。当ブログでも以前、塩化銅から金を作る大政龍晋博士や、三菱重工の岩村康弘博士のことを紹介した。
https://clnakamura.com/blog/5480/
https://clnakamura.com/blog/1743/
カルシウムをまったく摂取していないはずの鶏が非常に丈夫な殻の卵を産むことに疑問を持ったケルブラン(1901~1983)は、様々な実験の末、生物学的元素転換(biological transmutation)の着想を得た。
鶏は雲母(カリウム、ケイ素含有)を好んでついばむ。このカリウムやケイ素が何らかの機序でカルシウムに変換されたのではないか?
たとえばカリウム(39)に水素(1)がくっつけばカルシウム(40)になるし、ケイ素(28)に炭素(12)がくっついてもカルシウム(40)ができる。
K(39)+H(1)→Ca(40)
Si(28)+C(12)→Ca(40)
従来の質量保存則で説明できない現象は、自然界に無数にある。
ケルブランは、サハラ砂漠の肉体労働者を対象とした研究で、摂取するカリウム量よりはるかに多くのカリウムが排出されていることを見出した。同様のことはマグネシウムにも言えた。
生存には塩(ナトリウム)が必須と言われる。これを生物学的元素転換の観点からいうと、「生きるということは、ナトリウムを燃焼させてカリウムやマグネシウムに変換すること」と解釈できる。
Na(23)+O(16)→K(39)
Na(23)+H(1)→Mg(24)
カニの甲羅は頑丈なカルシウムの塊である。しかし、カニはこのカルシウムをどこから得るのか?海水のカルシウム濃度は400 mg/kgと薄く、これだけでは甲羅を形成するだけのカルシウムを得ることはできない。しかし、これより3倍濃いマグネシウム(1272 mg/kg)を利用できるとなれば、話は違ってくる。
Mg(24)+O(16)→Ca(40)
発芽の前後で、種の成分に違いがあるか調べた。その結果、マンガンが鉄に変化している可能性が示唆された。
Mn(55)+H(1)→Fe(56)
第4周期の元素は、横一行に並べるのではなく。原子番号順に上下上下と並べると(メタルループ)系統的に把握できる。
ガス溶接工にCO2中毒が多発することにケルブランは興味を持った。空気中には酸素と窒素しかないはずなのに、なぜCO2中毒をきたすのか。Cはどこから来たのか?様々な検証の結果、N2がCO2になる元素転換が行われていると結論した。
さらにケルブランは、窒素とケイ素は異性体(isomer)であるとさえ言っている。窒素≒ケイ素という大胆な仮説だ。
N(14)+N(14)→Si(28)
自然界にはこのように考えたほうが筋の通る現象が数多くある。たとえば、穀物類の茎には大量のケイ素が含まれているが、これは根から吸収しただけでは説明がつかない。また、珪藻類が大量のケイ素を排出し、これが時に湖沼や川をせき止めることさえあるが、一体これらのケイ素はどこから来たのか?空気中に豊富に存在する窒素から生成されたとケルブランは考えた。
クロロフィルの分子式とヘモグロビンの分子式を見比べて、その相同性に驚かない人はいない。植物が植物たるゆえん、葉緑素の中核を担うクロロフィルと、我々の赤い血液を形作るヘモグロビンが、こんなにも似ているなんて、偶然ではあり得ない。何か理由があるに違いない。
象やキリンなど、草食動物を見るといい。彼らは、その名の通り、葉っぱばかり食べているが、見事な体躯をしている。あの骨格、あの筋肉は、植物が血肉となって作られたと考えるしかない。これを元素転換的に見るならば、核心はマグネシウムである。マグネシウムが鉄に元素転換された。
さて、僕は医者なので、このような元素転換的な見方を、臨床に少しでも活用できないか、と考える。
たとえば骨粗鬆症。「骨がスカスカになっている。カルシウム不足が原因だろう」という方針のもと、カルシウム製剤の投与などが行われてきたが、カルシウムの積極的摂取(サプリや牛乳も含め)は、有害であることが多くの研究で示されている。
そもそも、骨粗鬆症患者の動脈を見よ。動脈硬化があるに決まっている。カルシウムが血管内壁に沈着しているということだ。つまり、骨粗鬆症の病態はカルシウムの不足ではない。カルシウムを骨にアンカーできなくなっていることが病態の本質なんだ。
では、どうすればいいのか?元素転換の図をもう一度見てみよう。
カルシウムを直接的に補うのではなく、遠回りのようだけど、Mg、K、Siを補う。そうすると、体が適宜必要に応じてこれらをCaに元素転換する。そういうふうにしたほうが、体に負担が少ないようだ。さらに言うと、サプリよりも食事で摂るほうがベターで、Mgはワカメ、昆布など色の濃い海藻、Kは生の野菜や果物、Siは雑穀などから摂るといい。ケイ素については、当院でも扱っている液体ケイ素もオススメです(笑)
アルツハイマー病の発症や進展にはアルミが深く関わっている。ベーキングパウダー、胃薬、調理器具、水道水、ワクチンなど、現代社会はアルミがあふれている。元素転換的なアプローチとしては、何らかの条件を整えることで、AlをMgやSiに変換してやることができないか、と考える。たとえば日光浴とアルツハイマー病による死亡率には負の相関がある。太陽には、アルミの脳内蓄積を減らす何らかの作用があるのかもしれない。
いろいろと生物学的元素転換の例を紹介したけど、別にこれが絶対的な真実である必要はないと思っている。科学的な法則というのは、常に、永遠の作業仮説である。絶えず疑われ、検証され、確認されねばならない。そういう検証のなかで、最も蓋然性が高いもの、「恐らくこれが正しいだろう」「この原理原則なら多くのことを矛盾なく説明できそうだ」というものの集積が「科学」である。何も科学は、絶対的真理の集合体というわけではない。
少なくとも質量保存則では、卵の殻のカルシウムがどこから来たのかさえ説明できない。いい加減、そろそろラボワジエの呪縛から解放されましょうよ。
きのうの学会で、愛知医科大学の福沢嘉孝教授の講演がおもしろかった。
「ケイ素が体にいいことは分かっている。ケイ素の投与によって症状が改善したという症例報告は無数にある。ただ問題は、EBMがないことだ。ケイ素投与群と非投与群で、症状の改善に違いが生じるかどうか、そのあたりを検証した研究がこれまでなかった。そこで、2019年、脂肪肝の患者を相手に臨床試験を行った。世界で初めての試みということになる」
脂肪肝の患者40人に対し、水溶性ケイ素を1日9ml飲んでもらい、6か月間経過をフォローした。結果、体重(腹囲)減少、採血にて各種マーカー(アディポネクチン、PAI-1、AST、ChE)の改善、肝機能の改善が見られた。(ChE高値は内臓脂肪の蓄積を示唆)。
ケイ素は患者によく勧めるし、僕自身飲んでいるけれども、「何となくいいもの」程度の認識しかなかった。でもこのデータを見てしまうと、それどころじゃないよね。ものすごくいいものなんだということが、改めて分かった。