鉄と酸化ストレス

ワクチン後遺症研究会で、犬房春彦先生がこんなことを言っていた。
「コロナワクチン接種により、心筋炎がなぜ若年男性、特にアスリートに多発するのか?これは医学的に興味深い問題ですが、まず、性差について。
一般に女性は男性よりも長寿命です。平均寿命を比較すると、男性は81.64歳、女性は87.74歳、差をとるとおよそ6年、女性の方が長生きします。
なぜなのか?
この差はそのまま、生理の有無の違いであるという主張があります。1回の生理が5日続くとして、これが1年で12回ある。5×12=60、つまり年に60日は生理です。
さらに、仮に15歳から生理が始まったとして、閉経の平均年齢は50歳。35年生理があります。つまり、5×12×(50-15)=2100日≒6年
一生のうちの生理の日数分が、男女の平均寿命の差と一致します。女性は生理の日数分だけ寿命が長いわけです。
生理というのは、その内実はともかく、少なくとも外形だけを見れば、血液の排出です。この際、体内から相応の鉄が失われます。体内において鉄はフリーラジカル源です。女性は生理により鉄を定期的に排出することが可能であり、このおかげで酸化ストレスが軽減し、結果、長寿命なのかもしれません。
かつて西洋でも東洋でも、瀉血という医療行為が盛んに行われていました。というか、今でも行われています。NASH(非アルコール性脂肪肝)やC型肝炎の治療では、瀉血は下手な薬物治療よりよほど有効ではないか、という先生もいます。

皆さん、鉄をたくさんとれば健康になると思っています。しかしこれはサプリ屋の大嘘です。
鉄による腎臓癌の発生機序について、名古屋大学の研究チームがクリアなデータを出しています。
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/FENTON.pdf
さらに、鉄は肝臓にどのような影響を与えるのか。鉄が肝細胞癌の発生に関与していることを示す研究は無数にあります。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1046/j.1440-1746.2001.02430.x

C型肝炎の治療にインターフェロンを使いますが、昔から、インターフェロンにまったく反応しない患者がいることが知られていました。しかし、その理由は長らく不明でした。
三重大学の足立幸彦先生の仕事ですが、インターフェロンが効かない一群のことを調べたんですね。ライフスタイルや食習慣を含め徹底的に調べた。そうすると分かったことは、その一群はウコンを大量に摂取していました。ウコンは、皆さんご存知のように、「肝臓にいい」と宣伝されている。皆さんのなかにも、大酒を飲んだとき、二日酔いの軽減のためにウコンを飲んだことがある人も多いでしょう。
肝臓が悪かったり肝炎があればウコンを飲めばいい。皆さんはそういう刷り込みをされているわけです。それで、このC型肝炎の人たちも習慣的にウコンを摂取していた。それも、ドリンク剤のような少量ではありません。沖縄から秋ウコンだか春ウコンだかパウダーを取り寄せて、あれを毎日大量に飲んでいたわけです。
ウコンの効果はクルクミンによるもので、クルクミンの生理作用は、、、みたいな話はここでは立ち入りません。ここで言いたいことは、ウコンはショウガ科の植物で、ショウガ科の植物は大量の鉄を含んでいます。つまり、インターフェロンが効かなかった人は、ウコンを通じて大量の鉄を摂取していた。これが真相です。
先ほど言ったように、ある種の癌、たとえば肝細胞癌は鉄をエサにして増殖します。このタイプの癌治療の第一選択は、当然ながら、鉄の除去です。鉄のキレート剤が肝臓癌の治療薬として用いられています。
鉄は酸化ストレスを惹起し、癌を含む様々な疾患を引き起こします。鉄が多いことは決して好ましいことではありません。

瀉血は中世の欧州で、医療行為として800年ほど続きました。当時、体調の悪い人は床屋に行ったんです。床屋が医者みたいなものでした。床屋に行って腕を出せば、太い静脈をカミソリで切ってくれる。こうして一定程度血を抜いて、それで治療完了。
デタラメだと思いますか?
違います。根拠のないデタラメ治療なら800年も続きません。相応の効果があったからこそ、続いたんです。
瀉血により、赤血球が減り、血液中の鉄が減る。フリーラジカル源としての鉄が減るおかげで、慢性炎症が減る。それで体調がよくなる。献血マニアがいるわけです。純粋に利他的な目的ではなく、「血を抜けばすっきりする」と本能的に感じている人もいるはずです
瀉血は過去の遺物ではありません。NAFLDやNASHのガイドラインをご覧ください。治療指針のなかに、瀉血があります。「鉄を下げるべき」ときっちり記載されています」

井上先生「鉄は2価、3価と荷電が変わることで、OHラジカルを出す機能が高いメタルなんですね。生体のなかの鉄は、ヘモグロビン、ミオグロビン、あるいはフェリチンなど、タンパクに結合したものが99.99%です。遊離鉄はかなり危ない。
肉食が多い→鉄の摂取量が増加→大腸癌の増加、のように、鉄と癌の関係を示すデータが古くからあります。鉄により活性酸素が生じて、そのためにゲノムが酸化されて、発癌するわけです」

以前、コロナ患者では体内のフェリチン濃度が極端に高いことを紹介した。コロナワクチン後遺症者においても、フェリチンの高いことはマイナスに作用すると思う。
僕は鉄欠乏性貧血の女性に鉄剤を投与することは躊躇しませんが、基本的には、できるだけ鉄剤を使わない方法を模索したいと思っています。フルボ酸なんかで上手に”鉄分”を補うのが理想じゃないかな。