心の傷とゲルマニウム

たとえば、目の前で親がトラックでひき殺された。その子が、おもちゃのトラックで人形をひくような遊びをやっている。執拗に、延々と。周囲の人が心配して、その子を精神科に連れて来たりする。「この子、大丈夫でしょうか?」
目の前で親がトラックにはねられて死亡する。こんな衝撃的な事件って他にない。大人なら救急車を呼ぶとか何らかの抵抗ができるかもしれないけれど、子供はただ眼前に展開される惨劇を黙って見るよりほかない。しかし、やがて子供は、この出来事を乗り越えようとする。「この前は運命に逆らえなかったけど、今度こそ自分がイニシアチブをとりたい。運命をコントロールしたい」と。それでおもちゃのトラックと人形でがちゃがちゃとやっているわけです。
幼い頃に親から虐待を受けたりして幸せな子供時代を過ごせなかった人が、思春期以後、まともな恋愛ができなかったりする。虐待するヤバい男とうすうす感じながらも結婚して、予想通りさんざん殴られて危うく殺されそうな目にあった。あいだに弁護士を立てて、どうにかこうにか離婚したものの、それでもまた次にお付き合いするのも虐待男だったりする。この女性は一体どういう心理なのか?
おもちゃのトラックと人形で遊ぶ子供の心理と通じるものがある。この女性は「乗り越えよう」としているんですね。大きな不幸を経験した人は、小さな不幸の回数を増やすことで、その不幸を薄めようとする。おもちゃのトラックが人形をひく。執拗に、何度も繰り返し。それと同じように、この女性は虐待男に何度もつかまってしまう。あるいは無意識的にそういう人を選んでしまう。同じような状況に身を置いて、「今度こそ克服できるんじゃないか」という思いが深層に潜んでいる。
こういう人がうつ症状を呈して精神科に来たりするわけだけど、はたから見ていると理解不能だろう。つまらない男とばかり一緒になって「自分はなんて不幸なんだ」と愚痴っている。この場合、「もっといい人を見つけなよ」というアドバイスは無効です。この女性の行動は、世間一般的には愚かに見えるけれども、ある文脈では極めて合目的的で筋が通っている。精神科の患者で本当に支離滅裂、まったく理解できないというケースはほとんどない。論理的だから、ちゃんと話を聞けば共感できる着地点が見つかるものです。

50代女性
「子供の頃の記憶といえば、酒乱の父のこと。仕事もせずに毎晩飲み歩いていて、母に暴力をふるってた。物心ついたときからずっとそういう父を見てきて、私はずっとおびえていました。考えていたのは、二つだけ。早く大きなってこの家を出たいってことと、お母さんが苦労しないためにはどうすればいいかなってこと。
夜の10時11時になると、母がいつも言う。「今日は父ちゃん、何時ごろ帰ってくるかな」って。で、たとえば夜の1時に父が酔っ払って帰って来て、母に怒鳴る。「ラーメン作れ!」とか。要求が通らないと荒れ狂って、暴力が出る。私は布団の中で泣いて、神様か何かに祈っていました。
もちろん、周囲に助けを求めました。祖母や親戚に。でも話をはぐらかして、知らないふりをする。誰も親身になってくれなかった。父はいつもお金に困っていました。母の財布から盗んだり、私がこっそり貯めていたお年玉を持って行ったり、祖母にせびったり。
父の横暴に耐えかねて、母と一緒に家を出て、親戚の家に避難したことがあります。すると父が探しに来て、親戚を脅して私たちを連れ戻そうとする。追いかけられて叩かれました。そんなことが何度かあって、そのたびに恐怖で震えていました。
今になって思います。私の人間性の根幹はすべて、そういう地獄の幼少期に作られたんだなって。「自分でちゃんとお金を稼がないといけない」「母を安心させてあげたい」「男は信用しちゃいけない」「酒はよくない」誰に教わったわけでもありません。自分で、人生を生き抜く覚悟として、こういうことを学んだんです。
私のような子供時代を過ごした人が、思春期を迎え、異性と恋愛をするようになると、どんな恋愛をするか、先生、分かりますか?
自分で言うのもあれだけど、若い頃はもてました。それで、求愛してくる人をとことん困らせました。精神的に追い込んだり。とにかくわがままでした。いや、細かい内容は聞かないでください。先生、引いちゃうと思うので(笑)
こういうのがトラウマの影響だというのは分かります。子供のときに愛情を受けなかったせいだろうな、って。
私、看護師なんですけど、病院で若いご夫婦が幼い子供を可愛がっている。そういう『大人から優しくされる子供』を見ると、複雑な気持ちになります。私は厳しくされてばかりで、優しくされた記憶がない。私の人生は、父を避けて『母を守らなきゃ』だけだったから。子供の頃、母を見ていつももどかしく思っていました。「なぜ戦わないのか」あるいは「なぜ逃げないのか」って。
今なら分かるんですけど、母、肝炎なんです。私もそうです。恐らく産道感染で、生まれたときからのB型肝炎です。
父がことあるごとに脅して、避難してもどこまでも探して、見つかっても母は戦おうとしない。仕方なく家に帰る。働けないので、ぐったり寝てる。当時は肝炎のせいだと分かっていませんでした。「なぜこんなに寝てるんだ」と祖母からもバカにされて。母は肝炎で人生を狂わされました。
でもゲルマニウムを飲み始めたことで、奇跡が起きました。ゲルマウォーターを飲んで、すぐに効果を実感したみたいです。まず、長年の便秘が治りました。「こんなにいい便が出るのは自分の人生で初めてだ」と。基本買い物以外、外出しなくて、いつも横になって引きこもっているのですが、それが最近は前よりも積極的になってきました。「ゲートボールに行ってこようかな」なんて言い出して、以前ならこんなこと、冗談にも言わなかったから。明らかに、やる気がわいています。週に2回、整骨院に通い始めました。今までは腰痛にロキソニンと湿布だけで、ほとんど意味がなかったのですが、かといって、根本的な治療に取り組む意欲なんてなかった。でも、整骨院に行って、「インナーマッスルを鍛える」とか言ってます。
私は若くして結婚しましたが、失敗して、5年前に家に戻りました。子供もいません。私としては、まず母に幸せになって欲しい。70代ですが、これから自分の人生を満喫して欲しい。そういう母を見ることで、私も希望が持てると思う。
私もゲルマニウムを飲み始めて、人生に対して前向きになりました。これまでの抑圧とかつらい記憶、当然ありますよ。消えることはありません。でも、「それはそれとして、こだわっても仕方ないな」、というもう一人の自分が出てきた感じです。「新しいことをやろうよ。楽しいことを増やそうよ」って、本当にそういう気分なんです」

トラウマに効くサプリ、っていくつかあると思っています。まず、ナイアシン。拙訳『オーソモレキュラー医学入門』に、こんなエピソードがある。若い頃日本軍の捕虜になった白人男性。そのトラウマのせいで、戦争が終わって何十年もまともに生活できていなかったけれども、ナイアシンを飲み始めてから普通の生活が送れるようになった。
あと、アサイゲルマニウムがトラウマに効くことについては、何例か経験していて、過去記事でも紹介したことがある。
誰かを憎みながら人生を生きるとすれば、こんなきついことってない。「あいつのせいで俺の人生はむちゃくちゃになった。一生許さない」みたいな感情って最悪です。怒りは、その人の心身をむしばむ。誰かを恨みながら幸せになるって絶対にあり得ない(竹中直人のネタで「笑いながら怒る」っていうのがあったけど(笑))。
憎悪とか怒りは、その感情を抱える人にとってもきついはずなんです。できれば、手放したい。許したい。受け入れたい。ゲルマニウムは、そういう過去のトラウマを解消する手助けになります。エビデンスはありません。あくまで僕の臨床経験(つまり患者の声)から言っているだけですが。

【参考】だめんず・うぉ~か~10(倉田真由美著)