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團十郎白猿襲名 特別公演の弁慶が良かったらしい

私は見られなかったが、信頼できる複数の人たちの感想をまとめるに、特別公演の「勧進帳」はかなり良かったらしい。

彼が市川新之助時代に初役で演じた浅草公会堂の「勧進帳」の弁慶や、18歳で演じた歌舞伎座の「外郎売」での鮮烈な印象は忘れられない。

あの時は友人たちと「これで歌舞伎はあと50年は安泰だね」と言葉を交わし合ったものだ。そのくらい、新之助の存在は光り輝いていた。

思えば海老蔵を名乗るようになってからの彼は必ずしも順風満帆ではなかった。むしろ苦しい時間の連続であったようにも見える。父を失い、妻を失い、自らも事件に巻き込まれるなど見ていてつらくなることも多かった。

その後はお家芸の荒事は良いとして、他の芝居では独自路線が私を含めた旧来の歌舞伎ファンからは評判芳しくないことも増えた。歌舞伎座にほとんど姿を見せず、ほぼ一門で固めた芝居に立て篭もるような姿は敵も増やした。休演日を設けたり、若手に研鑽の場を与える自主公演主催などの大きな功績すら見ぬふりをする“アンチ海老蔵”の風潮はなかなか収まらないまま、この特別公演を迎えた感があったというのは衆目の一致するところかと思う。

その中で仁左衛門、玉三郎という大先輩を迎えて二日間限定の「勧進帳」には、やはり特別な緊張感があったのでは?と。

その舞台で、十三代目團十郎白猿の弁慶は、過去に引き比べてとても良かったという。なんせアンチ海老蔵の友人ですら「意外なことだが、とても良かった」と言うのだから、信用して良いと思う。

新之助18歳、あれから20年以上が経ち、十三代目として再びあの日の夢を現実のものにしてくれるのだとすれば、こんなに嬉しいことはない。

11月の本興業は昼夜とも観に行くので、團十郎白猿として踏み出した彼の姿が楽しみでならない。

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