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有識者「公示して2週間足らずで投票って全くふざけてますね」

民主主義のプロセスってなにを意味してるのか知りませんが、国会における議会運営の民主的手続きっていったら「慣例」ですね。国会はめちゃくちゃ慣例を大事にします。慣例の積み重ねが国会のルールと言ってもいいくらい。なんせ「衆議院先例集」っていう分厚い冊子が何冊も毎国会届けられるくらいにはこれを大事にしてます。国会の運営を決定する議院運営委員会が開催されるのは議長応接室だってのは先にも紹介しましたが、その各委員の席にはこれらの先例集がドッサリ積まれてるんです。それくらい国会の民主的運営においては「慣例」「先例」というのが大事。

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で、先例はどうなっているかというと、2000年以降の衆議院総選挙の選挙期間(公示日から投票日まで)は例外なく「12日間」です。これを「ものすごく不真面目」と捉える感性は少し理解に苦しみますね。

そもそも、選挙期間が長ければ長いほどいいってもんじゃないです。
なんせ選挙には金がかかります。選挙期間が伸びれば当然それだけ選挙費用がかさみます。そうなると資金力のある候補者が有利になり、政策や主張、信条といったものではなく候補者の資金力によって当選が左右されるということになってしまいます。現行の公職選挙法の基本理念からしても、それはおいそれと承服し難い方向性と言えます。また、中選挙区制を小選挙区比例代表並立制に改革したときの「金のかからない政治」というこの30年くらいの政治における一貫した原則とも違背します。

車もろくにない、電話も持ってる人が少ない、インターネットなんてもちろん存在しない、あまつさえそれでいて現行選挙区の数倍の広さと選挙民を相手にする、そういう時代はもう少し選挙期間は長かったです。だってそうしないと選挙区を廻りきれないからね。でも今は違いますよね?この期に及んで選挙期間の延長とか、時代の流れに逆らうにも程があるのでは?

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というかですね、この想田和弘さん、この程度のことも知らないってさすがに健忘症かなんかなんですかね。だってこの人、『選挙』ってドキュメンタリー映画撮った人ですよ?

舞台は2005年の川崎市議会議員補欠選挙。
川崎市宮前区から川崎市議会議員として長年活躍し、川崎市議会議長まで勤め上げた小泉昭男氏が2004年に参議院に転出し、空席となった1議席を争う補欠選挙が2005年10月に行われました。そこに立候補したのが山内和彦さん。ごく普通の青年でした。で、市議会議員の補欠選挙ですから普通は注目もされない選挙なんですが、運がいいのか悪いのか、この選挙は違いました。
2005年といえば真夏に郵政解散総選挙が行われ小泉自民党が大勝利を飾った年です。その熱気冷めやらぬ10月に、参議院神奈川選挙区の補欠選挙も同じく行われることになりました。この参議院神奈川選挙区補欠選挙に立候補したのが、小泉政権で民間人ながら初代環境大臣、外務大臣を歴任し、その交渉力から「タフ・ネゴシエイター」と称された川口順子氏。主要閣僚を民間人閣僚として務めた後の、満を持しての国会転身。もう大注目ですよ。小泉純一郎自身も力の入れようが凄まじく、(そりゃ自分の重臣が選挙に出るんですからねぇ)小泉旋風の余勢を駆って選挙戦に突入するわけです。

そこで同日10月23日投開票の川崎市議会補欠選挙ですよ。一地方議会の一補欠選挙のはずが、いつの間にやら神奈川は日本中の注目を浴びることになってしまいまして。ちなみになんですが、小泉純一郎といったら横須賀が地盤というイメージが強いと思いますが、実は川崎市も小泉純一郎の選挙区なんですよね(中選挙区時代)。するとどうなるか。神奈川参議院選挙も、川崎市議会選挙も、どっちも小泉純一郎としては自分のお膝元。党からは「二人とも絶対に通せ」の大号令です。「参議院選挙と川崎市議会議員選挙はセットで戦え」「全国会議員は川崎に入れ」と。おかげで私も何度も神奈川に入りましたよ。

(ここまでくると、山内和彦氏も小泉旋風で当選できた幸運というより、荒波に揉まれた悲運の方を感じてしまいますねぇ・・・)

まぁそういう状況で、運命に翻弄された一人の青年候補者をカメラで追いかけた映画なんですけど、詳しく知りたいと思った方は自分で見てください。岸田内閣で経済再生担当大臣に任命された山際大志郎氏の、その若かりし頃も映像に残っています。2002年の補選で破れて獣医の白衣着て選挙にアピールしたりしてた頃ですね。2003年に新18区で当選してるのでこの選挙のときには既に衆議院議員ではありますが、まだまだ「近所のお兄ちゃん」って感じが抜けきらないイメージでしたね。

前置き長かったですが、

2005年当時の神奈川新18区(高津区・宮前区)の支部長であり、宮前区の川崎市議会議員補欠選挙の総責任者になるのが山際大志郎氏。その彼が映画の中で印象に残っているのが、山内和彦氏の通帳を預かるシーン。候補者の通帳預かって有り金全部選挙に突っ込むんですよ。もちろん候補者本人は嫌がるんですが、そんな甘えた考えでは選挙に勝てないってことで選対本部長だったのかどうか覚えてませんが、山際大志郎氏がそれを預かってしまうんですね。一般市民の感性からすると信じられないシーンですよね。10月14日告示で10月23日投開票の9日間の選挙期間で有り金全部いっちゃうんです。そのシーンをカメラに収めていた想田和弘氏が、立候補者の預貯金がすべて消え去る選挙戦を知っていながら、これを延ばせとは・・・。健忘症ですか?

サラリーマンやってコツコツ貯めた資産。切手蒐集を趣味にする普通の青年の全財産。それがたった9日間の選挙でパーッと使い切られるんです。怖いですよ。そんな恐ろしい期間をな、簡単に延ばせとか言うな。

以上。

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