上野とゲイ・タウン

上野に対するイメージ

 東京のホームレス街と言えば、どこをイメージするだろうか。新宿中央公園や上野公園に群がるホームレスの存在を知っている人からすれば、新宿と上野の名を挙げる人が多いのではないかと思う。
 上野という街に対するイメージは、受け取り手により千差万別である。ある人は文化資源が潤沢な街であると主張するだろうし、また、別のある人は、路上で生活する貧困層が多い地域であると主張するだろう。このように、ひとくちに上野といっても、様々な顔を併せ持つ街である。文化や芸術の街である一方、スラム的な色合いも残る地域でもあるという、程度の差が非常に激しい街なのが上野である。先日、上野公園で寝泊まりをして一夜を過ごした。寝袋を地面に敷いてそこを寝床として生活したのだ。アスファルトに直に触れているせいか、アスファルトの硬い部分がダイレクトに体に伝わってくる。こうした環境は快適な睡眠環境とは程遠いものであったが、眠りの質はとてもよく、ぐっすりと眠ることができた。しかしある一声により、その心地よい睡眠が妨害され、びくっと目を覚ますことになってしまった。

翌朝の出来事


 翌朝、目を覚ますと、自分の目の前に黒い物体が立ちはだかっていた。よく見ると人で、風貌から40代くらいの中年男性と推察された。そんな彼が開口一番、あなたの○○○を舐めてもいいですかと言ってきた。この人はいったい何を言っているのだろうかと一瞬戸惑った。もしかすると前日ひどく酔っ払っていて、摂取したアルコールがまだ十分抜け切っていないのではないかと自分は考えたが、当の本人はいたって真面目にこのようなことを言うので本心でこのようなことを言っているのだということを確信した。しかし、なぜこのような性的な誘いをストレートに伝えてくるのだろうか。自分は上野がどのような街かをしばらくの間、考えた。ここは誰もが知るホームレス街で、ホームレスの人が数多く住むところだ。しかし、彼はそのような人種とも一味違う。そこでネットで上野の街の特色を調べてみると、ここが男娼で蔓延る街だということを初めて知った。 

同性愛の街・上野


 Wikipediaによると、このような記載がある。上野は戦前から男娼が集まったゲイ・タウンとしても知られる。上野・浅草エリアは都内では新宿二丁目に次ぐゲイタウンである。男らしい野郎系や年配者、ふくよかな人が集まる店が多い(若専の店もある)。上野 上野駅の入谷口界隈にゲイ・タウンがあり、同駅と昭和通り(首都高高架)に挟まれた上野7丁目と、高架の外側(浅草側)の東上野3・4・5丁目を中心としたエリアにゲイバーなどが多く集まっている。上野エリア全体ではゲイバーだけで95軒に達し、ゲイ系店舗トータルでは123店になる。この内、高架を挟んで近接したこのエリアだけで102店(上野7丁目58、東上野3~5丁目44)が集中している。このほか上野駅から少し離れた御徒町駅や稲荷町駅周辺などにもゲイ系店舗がいくらか点在している。また駅前の一般向け書店でもゲイ雑誌やゲイ写真集が比較的大きなスペースで置かれていることがある。(参考文献:Wikipedia)こうしたように上野はゲイ・タウンとして有名な街なのだ。だから、あの中年男性が卑猥な言葉を自分に投げ掛けてきたのも十分合点がいく。彼はおそらく男娼者として生活していたのだ。そして、誘いに乗ってくれそうな人間を探していたところ、たまたま公園にいる自分の姿を発見して、いいターゲットの格好を見つけたと思って、自分に声を掛けてきたのだろう。文化や芸術、ホームレス、ゲイなど上野には多種多様な人たちが数多く存在する。この世界には様々な人がいることを知ったのが、上野で学んだことである。そして、多様性という観点から見れば、上野はとても面白い街である。