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【きららファンタジア】イベント「無人島アイドル生活」レビュー

 初めまして。コンテナ店子と言います。

 今回はゲームのきららファンタジアでやってたイベントの「無人島アイドル生活」をレビューします。一応言っておくとシナリオだけです。ゲームバランスとかマーケティングとかはここでは一切取り上げないことにします。


 自分は一応ハナヤマタのファンだと思っています。非常に魅力的な青春ドラマです。青春ドラマ自体すごく好きで、その中でも表現とか素晴らしいし、キャラクターの設置とかも興味深いです。

 そんな中で、本編ではないですが、ある程度お金がかかってて、ハナヤマタを取り扱ったシナリオとしては、けっこう久しぶりに出て来たので、いいにしても悪いにしても自分の目で見てレビューしたいなと思ったので、きららファンタジアを起動することにしました。

 きららファンタジアは長らくプレイしていませんでした。というか、ゲーム自体あんまりやらないです。だから、そこまでゲームの知識はないです。というわけで、これからのレビューは、自分が1人ぼっちなだけかもしれないです。

 あと、同人誌のレビューの時にも言いましたが、面白かったから全部いいとか、つまんなかったから全部だめとか、そう言う訳ではないです。レビューに説得力を持たせるためにも、両面的に見るべきです。
 そして、いいにしても悪いにしてもなんでそう思ったのかを構造的に理解する必要があります。これは、創作する側はもちろん、そうじゃない人にとっても大切なことです。ただ面白い、つまらないと言うだけであればだれでもできます。

 別にいい作品だからと言って、誰もが好きになれるわけではないです。ハナヤマタもそうだと思います。個人的には素晴らしい青春ドラマだとは思っていますが、けっこう色を薄くする光のようなものを使っていたり、中学生を主人公においていたりなど、詩的でおとぎ話のような雰囲気があります。だから、そのトーンが合わない人も結構います。そんな感じで、なんでいいか悪いかを構造的に理解することで、よりレビューを見る人が自分に合うかどうかをより深く理解することが出来るようになります。

 前置きが少し長くなってしまいましたが、それでは行きます。

①あらすじ


 本シナリオでは、ハナヤマタのよさこい部のメンバーと、おちフルの主人公5人と他のアニメのキャラクターが3人出てきます。この13人で無人島生活を撮影してテレビでオンエアすると言うストーリーです。おちフルは一応知っています。原作も自分が把握してる範囲であれば全部持っています。

 ただ、作者が同じというだけでトーンは全然違います。映画で例えたら、『ブレードランナー2049』とかけっこう信ぴょう性があるトーンでかなり重めの作品を作るドゥニヴィルヌーヴと、『マイティ・ソー バトルロイヤル』みたいなコミカルで楽しい作品を作るタイカワイティティくらい違います。だから、きららファンタジアの公式としてはコラボさせたら面白いだろうと思ったのは何となく理解できますが、ちょっと不安だなと思っていました。



 トーンとしては完全におちフルのようなバカで笑いを取ることを目的とした物でした。特にキャラクターの内面を掘り下げるようなこともなかったですし、一応おちフルのへもが主人公だと思うのですが、なんか本編で見たことあるような感じでした。
 彼女がいのへの愛をこじらせてそれが変なことに発展していくみたいな感じの話です。別にそれ自体は悪くないと言うか、へものキャラクターが割といのの事が異常に好きということ以外あまり中身がなく、それをとがらせると言う意味では、へものファンは気に入るかなと思います。



 全体を通してみた感想としては、特に言うことがあんまりないです。キャラクターがめっちゃ多い割にはほとんどのキャラクターが何もしていなかったというか、ハナヤマタのキャラクターは全く何もしていませんでした。特に何もストーリーが与えられてなかったです。

 キャラクターがやたら多くて、でなおかつ島が舞台で、漫画が原作で、コメディの作品と言えば、ジェームズガン監督の「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」があります。あれでは、一応主要の7人にはみんな見せ場があって笑えるポイントがありました。どのキャラクターを好きになっても、かっこよかったり好きになれるポイントがありました。


 それに対して、このシナリオでは、へもが好きじゃないとあんまり楽しめないです。一応へもっておちフルの中でも持ちネタが一番はっきりしてて、トーンがいきなりガラッと変わる感じが何だか面白いので、個人的には割と楽しめたと言えば楽しめましたが、ちょっとバランスが悪いなと思いました。

 あらすじとしてはそんな感じです。こっから先は技術的に良かったなと思った部分と悪かったなと思う部分を語って行きます。

②好きだったところ:一部のコメディが良かった


 上でもちょっと言いましたが、けっこうお笑いが好きでした。そこまで腹を抱えて笑うと言う感じではないですが、くすっとくるような笑いが多かったです。それも、おちフルの設定や雰囲気に合っていてなんだか見ていて、たぶんおちフルが好きな人はこのシナリオも好きになれると思います。

 個人的におちフルの下品なジョークはあんまり好きじゃないのですが、このシナリオで初めてそれがかなりハマってるいいギャグがありました。何より映し方が素晴らしかったです。おちフルのギャグがあんまり好きじゃない理由の1つとして、これはおちフルが悪いと言うより4コマ漫画という媒体自体の問題ですが、ギャグが来るタイミングが予想出来て、けっこう身構えてしまうと言うのがあります。だから、このシーンではここ面白いですよという感じじゃなかったし、けっこういきなりやってきてあっさり流されている感じが、逆に飾ってなくて好きでした。

 ハナヤマタに関しては、ボケてるシーンはあんまりなかったかなと思いました。強いて言うなら、タミがちょっとあったかなというくらいです。それはいいと思います。さっきも言いましたが、おちフルとハナヤマタはだいぶ違います。

 ハナヤマタのキャラクターってけっこう金持ちで上品なキャラクターが多いです。タミは言うまでもないと思いますが、マチは医者の娘だし、普通だと言っているなるの家もけっこう大き目な道場を構えていられるし、距離が近いことを考えれば、タミの家と生活レベルがそこまでかけ離れていないのも明らかです。作品のトーンもそうです。変なお笑いとかも全然ないし、無意味な肌の露出とかもほとんどないです。

 それに対して、知っての通り、おちフルのギャグはけっこう下品です。で、今回は脚本もけっこう下品な感じだったというか、題材自体が下品な感じです。別に下品なギャグ自体は悪口ではないです。別にそれを取り扱うのはいいことだと思います。R指定の映画として異例のヒットを見せたティム・ミラー監督の「デッドプール」はかなり下品な映画ですが、それが本来のヒーロー映画を逆張りしているようだし、偽物感が出ていてそれが面白かったです。もちろん自分もけっこう好きなシリーズです。

 その騒動とかギャグに対してハナヤマタのキャラクターが関わることがあんまりなかったから、被害があんまりハナヤマタに来てなくてそれは好きというか、ちょっとホッとしましたでした。
 トーンが全然違うから、優しくて他人を思いやる気持ちを原動力としているハナヤマタのキャラクターが下品なコメディに巻き込まれるのはちょっと優しさが裏目に出てしまうように感じてしまって、なんだか複雑な気持ちになると思います。

 個人的にいいなと思ったシーンは、ほとんどこの視聴者を笑わせようとしているコメディのシーンでした。だから、素直にトーンが明るくなって楽しい感じに出来てたと思ってましたし、そこは好きかなと思いました。

③好きだったところ:導入がすっきりしていた


 シナリオの冒頭がキャラクターがやたら多いわりにけっこうスッキリしていました。このメンバーで無人島生活をするってだけで、それ以上のことが特に明示されてなくて、そこは好きでした。後々、敵が現れたりなんでこうなったのかを解説していましたが、いきなり情報が一気にやってくるとけっこうついていくのが大変で読むモチベーションが下がったりします。

 これはスターウォーズの続3部作の監督もしていたJJエイブラムスの作風でよく見られます。彼の作る映画では、作中で行う作戦や悪役の陰謀なんかを一気に説明することがかなり多いです。だから、理解が追い付けなくて作品内では今何をしているのかとか、アクションシーンでもどういう状況なのかとかがわかりにくいことがあります。

 ただ、このシナリオでは、冒頭で与えられている情報が誰もいないはずの島にクリエメイトだけが動画撮影のためにやって来たって言う設定しかなかったから、すっきりしていて良かったです。

 あと、この設定が低予算映画とかによくある感じで、なんだか素人感があって楽しかったです。 映画で例えたら『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』とかが当てはまると思います。あれみたいなモキュメンタリーというわけではないですが、撮影のために素人が軽い気持ちで危険な場所に踏み込んで、そこからんどんどん変なことが起こり始めてみたいな感じは、導入としてはけっこうわかりやすくていいのかなと思いました。

 好きな所はこんな感じです。ここからは好きじゃない所を説明していきます。

④好きじゃなかったところ:トーンが合ってないことが多い


 たぶんおちフルのコメディなトーンに合わせてたからだと思うのですが、話の割にかなりお気軽で、基本的には起きてることがどうでもよかったです。何があるかわからない上に閉塞感ある無人島で、人がいなくなってるのにキャラクターもへらへらしてるし、BGMも何かお気軽な曲が流れてて、全然緊張感がなかったです。

 別にコメディ作品だからって全部が全部お気軽である必要はないです。例えばタイカワイティティ監督の映画「ジョジョ・ラビット」はコメディ映画ですが、ホロコーストを題材としていることもあってけっこうシリアスなシーンもしっかりある一方で、監督自身が演じているヒトラーは明るくて面白いです。だから、この作品でも締めるべき所は締める。笑える場所は明るくみたいな感じでトーンのバランスを取るべきだと思います。


 なのに、本作ではトーンもずっと一定で別に何かがあってもどうせ何とかなるだろうという感じが凄かったですし、戦闘シーンのような危険な状況でもけっこうお笑いを入れていて、キャラクターが危機的状況に置かれている様に見えませんでした。

 あと、これは予算の問題だと思うのですが、キャラクターの立ち絵やボイスが状況と全然合ってないことが多かったです。軽いいじりくらいのノリで話しているのに、キャラクターは泣きながら顔を真っ赤にしてて、大きな声を出してる時とか、狭い場所にいるはずなのに明らかに背景が大きかったり、視聴覚的にシナリオと合ってないことがとりあえず多かったです。

 それに、いのとかへもとかもそうなんですけど、無人島でけっこう手付かずの自然が残っているような場所にセクシーな格好で行くのも意味が分からないというか、特に、マチはこの日のために準備をしてきたと言う発言をしているのに前が大きく開いている格好をしているのはすごく疑問です。エトワリアの生態にはあまり詳しくないですが、蚊に刺されて感染症になる可能性とかもあるのに、ちょっとおかしいなと思いました。

 そんな感じで予算が足りないなら予算がないなりの作りをすべきなのに、それをしなかったのはちょっと良くないなと感じました。予算がなくても別にいい作品は作れます。ここ最近見た映画の中ではエリザヒットマン監督の「17歳の瞳に映る世界」とか低予算ながらも素晴らしい表現を見せています。低予算でも脚本だったりを工夫すればいくらでも面白い作品は作れるので、つまらない理由にはならないと思います。

⑤好きじゃなかったところ:ハナヤマタの魅力を全く活かせていない


 これは、トーンを完全におちフルの方に寄せていたから仕方がないのかもしれませんが、ハナヤマタのいい所を全く活かせていませんでした。ハナヤマタは風景とかの表現が詩的で美しくて、表情なんかが素晴らしくて、キャラクターの内面の変化が興味深いから評価の高い青春ドラマ作品だなと思っています。だから、そのいい所がちゃんと据え置きになっていなければ、ハナヤマタを使っても何の意味もなくなってしまいます。

 これはきらファンで以前のハナヤマタが絡むシナリオを見ていた時からずっと思っていましたが、ハナヤマタを取り扱っていればなんでもいいと言う訳ではありません。別にキャラクターがいるからと言って好きになれるわけでもありません。ストーリーでちゃんとキャラクターの内面が掘り下げられていたり、表現方法の美しさが素晴らしいと思った時に、初めて好きになることが出来ます。

 おちフルをメインにしているから、その美しさを再現できないのは何となくわかります。だったら、ハナヤマタを出さない方がいいと思います。無意味に原作のファンからがっかりされるだけです。作者が同じだから混ぜたら喜ぶだろうと言う目論見もわかりますが、ハナヤマタとおちフルはトーンが違い過ぎて全然合ってないです。この2つを混ぜると本当にちぐはぐになってしまいます。

 たぶんですが、他の作品とも全然違くて、それのせいでハナヤマタは運営からしても使いにくいのかなというような印象を受けます。ただ、別にハナヤマタでいい作品を全く作れていないと言う訳ではないです。以前あったタミが主人公になってた「お姉ちゃんズ11」はかなり良かったです。ちゃんときらファンの世界にしかできないアイデアだったし、タミの内面を深く掘り下げていたし、やたら菓子を食べるところとか、原作のちょっとした要素も拾われていて、あれはハナヤマタの魅力をわかっている人が描いているなと強く感じました。

 
 それに対して今回のシナリオに出て来たハナヤマタは、原作と同じように自分のアイデンティティとの葛藤を見ることもなければ、何かに対して深い挫折や悩みを感じるシーンもなければ、誰かに対して無償の優しさを見せて役に立ちたいと思っているようなシーンも特になかったです。だから、別にハナヤマタである必要がなかったというか、もうちょっとおちフルのトーンに似てる、もっとアホでお気軽なノリの作品を起用すべきだと思いました。今回の作品もハナヤマタの扱いに、ライターが困っているようで、いまいち活躍させられていないなと感じました。

⑥まとめ


「無人島アイドル生活」の感想についてはそんな感じです。前回のハナヤマタが絡んだ「お姉ちゃんズ11」はかなりよかったので期待していたのですが、作品全体の感想はさておき、ハナヤマタの扱いはちょっと良くないなと思いました。たぶんきらファンがターゲット層にしているユーザーと自分はそこまで合致していないのかなと感じるので、自分が1人ぼっちなだけだと思います。


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