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2021年ベスト映画ランキングトップ10

 初めまして、コンテナ店子と言います。

 今回は、ついに2021年も終わりが近づいてきたので、今年もベスト映画ランキングトップ10を描いて行こうと思いました。もちろん、今年公開された映画の中でもすべてを見れたわけではありません。「ミッドナイトトラベラーズ」や「ビバリウム」のように見たくても見れなかった映画はいっぱいあるし、何なら12月あたりはかなり忙しくてほとんど映画を見れていませんでした。そんな中でも、ランキングに出来るくらいは見ていたので、今年も記事を書くことにしました。

 一応この記事で選ばれる映画の選考基準としては、日本での公開日を基準としています。今年は何故か何年も前に海外で公開されていた映画が日本に上陸することがけっこうありました。そう言う映画も日本での公開が今年だったら候補に入ります。

 そんな中で、選考に入る映画が以下になります。


①見た映画のリスト


劇場公開作品
新感染半島 ファイナル・ステージ/大コメ騒動/イルミナティ世界を操る闇の秘密結社/ファーストラヴ/リーサル・ストーム/太陽は動かない/ある人質 生還までの398日/シャドー・ディール 武器ビジネスの闇/ミアとホワイトライオン 奇跡の1300⽇/クイーンズ・オブ・フィールド/ミナリ/ラーヤと龍の王国/ノマドランド/モンスターハンター/水を抱く女/21ブリッジ/アンモナイトの目覚め/ JUNK HEAD/るろうに剣心 最終章 The Final/スプリー/ジェントルメン/ SNS-少女たちの10日間-/クルエラ/くれなずめ/コンティニュー/るろうに剣心 最終章 The Beginning/ Mr.ノーバディ/クローブヒッチ・キラー/グリード ファストファッション帝国の真実/インヘリタンス/モータルコンバット/ゴジラvsコング/ファーザー/ライトハウス/83歳のやさしいスパイ/プロミシング・ヤング・ウーマン/ブラック・ウィドウ/東京クルド/走れロム/ SEOBOK/ソボク/アウシュヴィッツ・レポート/イン・ザ・ハイツ/ワイルド・スピード/ジェットブレイク/17歳の瞳に映る世界/復讐者たち/ジャングル・クルーズ/ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結/孤狼の血 LEVEL2/明日に向かって笑え!/ Summer of 85/シャン・チー/テン・リングスの伝説/鳩の撃退法/フリー・ガイ/共謀家族/アナザーラウンド/レミニセンス/マスカレード・ナイト/トムボーイ/スクールガールズ/コレクティブ 国家の嘘/ MINAMATAーミナマター/キャッシュトラック/ TOVE/トーベ/護られなかった者たちへ/スウィート・シング/CUBE 一度入ったら、最後/アミューズメント・パーク/燃えよ剣/由宇子の天秤/ DUNE/デューン 砂の惑星/皮膚を売った男/アイス・ロード/リトル・ガール/エターナルズ/ザ・レッド・チャペル/ MONOS 猿と呼ばれし者たち/ディア・エヴァン・ハンセン/ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ/リスペクト/ミラベルと魔法だらけの家/ラストナイト・イン・ソーホー


動画配信サービス
デンジャー・ゾーン/この茫漠たる荒野で/時の面影/ Seaspiracy: 偽りのサステイナブル漁業/彼女/なぜ殺したの?/バーシティ・ブルース作戦: 裏口入学スキャンダル/オキシジェン/レッツ・カーニバル!/コスタ・デル・ソル殺人事件: 生命を奪われた少女たち/スケーターガール/ホタルを見たことありますか?/祈りのもとで: 脱同性愛運動がもたらしたもの/ミーシャと狼/ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ/スイートガール/ SAS: 反逆のブラックスワン/野球少女/ケイト/ THE GUILTY/ギルティ/悪夢は苛む/デッドリー・ハンティング/コンクリート・カウボーイ: 本当の僕は/アーミー・オブ・ザ・デッド/アーミー・オブ・シーブズ/レッド・ノーティス/ tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!/ヤーラ/クリスマスとよばれた男の子/ホーム・スイート ホームアローン/あの夏のルカ


 以上になります。ちょっと合計本数も書こうと思ったのですが、けっこうな数なので、数えられませんでした。ごめんなさい。

 早速ランキングに入る前に、惜しくも、ランキング入りできなかった映画を3つ紹介します。今回は紹介が軽くはなってしまいますが、こちらもかなりおすすめな映画です。



②惜しくもランキング入りを逃した映画3選


 まず1つ目が「スケーターガール」です。


 この映画は、インドの田舎町で育った少女が、世界旅行をしているヨーロッパ人が持ってたスケボーと触れ合うことでだんだん自分の殻を突き破っていくようなストーリーです。すごくシンプルで割とありきたりだし、人によってはポリコレ映画って思うかもしれませんが、素人がかなり素人っぽかったし、主人公の女の子内面の変化の波をよく映していたので、決して退屈はしませんでした。

 もっと上位に組み込まなかった理由が、主人公の女の子から話の焦点がズレるタイミングがあってそこでちょっと映画が退屈になってしまったからです。

 ネットフリックスオリジナル作品はけっこうピンキリで、いい映画は割りとアートに近い感覚があります。このコーナーで紹介する映画の1個下くらいにいる「時の面影」という映画もそうです。
 ただ、この映画は人間ドラマ要素が強い一方、わかりやすいストーリーでスケートを滑っている姿が楽しそうなこともあって、明るい雰囲気でもあるから、今年出てきた映画の中で最もお勧めしやすいネトフリオリジナル映画だと思います。


 2つ目は「ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結 」です。


 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」も作ったジェームズ・ガンがまたしても笑えて楽しいコメディアクション映画を作ってくれました。単純に楽しいという気持ちを今年で最も満たしてくれた映画だし、笑った映画でした。

 前作のスースクはあんまり好きじゃなかったですが、今作ではかなりトーンも映画の色合いも明るくて楽しくなりましたし、けっこうリアルなグロめなアクションも好きでした。キャラクターもみんな楽しくて主要メンバーはみんな大好きです。

 ガーディアンに比べると少しキャラクターの内面の部分が少し弱く感じますが、娯楽映画という括りならこれくらいでちょうどいいのかもしれません。ドラマ版のピースメイカーもどんな感じになるのかとても楽しみです。


 そして、最後の3つ目が「リトルガール」です。


 これは、精神女性で肉代男性であるトランスジェンダーの小学生とその母親の様子を追いかけたドキュメンタリー映画です。ドキュメンタリー映画ってけっこうここ問題ですよみたいな感じで、説教臭くなっちゃうことがあります。でも、この映画ではそう言う側面もありながら、主人公である子供の日常を撮影していることが多くありました。
 恐らく、トランスジェンダーも他の子どもと変わらない人間なんだと言うことをこの映画では伝えたかったのだと思います。それを、かわいそうという気持ちなしに表現したのは素晴らしいと思います。

 また、リアルな日常を映している分、トランスジェンダーって聞くと、最近運動が日の目を浴びるようになって大変そうって勝手に思っちゃう一方で、具体的にどういう問題に直面しているのかという所を掘り下げられることが少ないから、そこをより深く知ることが出来ました。
 作中でも割と焦点が母親に行くことが多かった一方で、主人公の子供にもしっかりと感情を読み取れる部分が多く、子供の割に感情表現が少ないのに、今年で最も人間性に深く踏み込んでいたドキュメンタリーだと思います。

 ドキュメンタリーだし、ちょっとお堅い部類に入ってしまう映画なのかなとは思いますし、好みもけっこう別れると思います。ただ、勉強って感じよりも、主人公の日常を垣間見る感じなので、映画が好きだけど、ドキュメンタリーにはそこまで触れたことがないみたいな人もけっこう好きになれるのかなと思います。

 というわけで、ここからベスト映画ランキングに入っていきます。それじゃあ行きます。 



③年間ランキング:第10位



 まず第10位は「ミアとホワイトライオン奇跡の1300⽇」です。

 これはアフリカのサバンナでサファリパークみたいなことをしている家族の娘と、そこで生まれた白いライオンの絆を描いた青春ドラマです。自分は青春ドラマが大好きです。一番好きな映画ジャンルです。今年はけっこう硬い感じの映画が多かった一方で、明るいトーンの作品の中ではこれが一番好きでした。

 青春ドラマとは言っても、主人公の感情の変化という部分よりもライオンとの絆に焦点を当てていました。それは、口ではライオンと一緒にいたいと言いながらも、家族のことも大切みたいな複雑な感情をほとんど説明なしに表現していて興味深かったし、感情に触れる部分がちょっと薄めとはいえ、年相応の無鉄砲さだったり反抗期だったりをリアルに捉えていました。
 そのおかげで、この映画で起こる出来事はそこまで大がかりではないのですが、それでも、まだ未成年の彼女には大変であることが伝わって決ました。

 あと、この映画はライオンも素晴らしかったです。本物のライオンを使ったらしいので当たり前と言えば当たり前なのですが、本当にリアルでした。
 ライオンなので、人間の事が好きだからと言ってそれに対していちいち媚びたり仲良さそうにしたりしないのが本来の姿です。だから、この映画は主人公が抱き着いててもライオンは明後日の方向を向いているし、一緒に遊んでてもそこまで息が合っているようには見えないですが、それのおかげで映画全体に信ぴょう性があります。だから、それでも主人公が楽しそうにしているのが本物っぽいので、お互いの間に絆を感じました。

 それと、この映画にはある社会問題が出てきます。その存在を自分は知らなかったし、珍しいアイデアを取り上げたと言うだけでも興味深いですが、この映画ではそれの伝え方が素晴らしかったです。
 全然説教臭くないどころか、ストーリーの中盤までその要素は全く出てこないのに、かなり自然な形でそこから投入されていました。キャラクターの内面にもかなり影響を与えていたと思うし、全くこの問題に関心がない人でも、全然映画を見れると思います。

 こうやって話してるとちょっと重くて玄人向けみたいな映画に感じるかもしれませんが、ある種の勧善懲悪みたいな感じの要素もあって、誰でもわかりやすくて楽しい映画になっていたと思います。
 暗くないけど吸収できる部分もあるし、映画として目を見張る部分もしっかりあるから、ある程度の年齢になっていれば誰でも楽しみやすいと言えます。



④年間ランキング:第9位



 続く第9位は「プロミシング・ヤング・ウーマン」です。

 自分はけっこうエッジが効いたぶっ飛んだ映画も好きです。それ系の中で今年一番好きだったのはこの映画でした。あんまりそう言う映画が今年はなかったのもあります。ただ、一番ハラハラしたり、一番先が読めない映画がこの作品だったのは間違いないです。

 何より説明と言える説明が全然なくて、主人公が一体何のために何をしているのかがわからないから、それなのにけっこう他人に迷惑をかけるようなことをしているのかが、興味を惹かれましたし、緊張感がありました。
 それに、この主人公は普通に失敗することもちょいちょいあるというか、大体のスリラーってミスする時は、最後の一線を超える時だったり落ちを付けるためだったりします。
 でも、この映画ではちょいちょい主人公が予期しない出来事が起きるから、そのおかげで、逆に映画がどこへ向かうかわからなくなっていたし、主人公の内面がだんだんわかるにつれて人間らしさを知って好きになれました。

 あと、話も二転三転します。あんまりそう言う部分って個人的に高く評価しないのですが、この映画では大好きでした。理由は簡単です。キャラクターの内面に対して大きな影響を与えていたからです。特に、最後の方は、かなり複雑な感情が入り混じってて、その中でも主人公が出した結論という所に親身になれたし、その重さから成功して欲しいと言う気持ちをかなり持てました。

 ちょっと語ってる感じ人間ドラマっぽい感じになってしましたが、基本スリラーです。スリラーなんだけど、怖い感じではなくて、怖いと思ったシーンはありませんでした。
 ただ、人間性に触れてる部分も多いから、説明がなくても、なんでこのキャラクターがこんなことをしているのかという所や、どれだけ真剣にやっているのかがわかるから、そのおかげで緊張感がありました。

 そこまで怖くないけど、緊張感がある感じなのでスリラー映画が苦手な人も楽しめます。これも、おすすめです。



⑤年間ランキング:第8位


 第8位として紹介するのは「スクールガールズ」です。

 この映画にはストーリーと言えるストーリーはないです。主人公には何も目的がないし、最後まで見ても、何か大きな成功や失敗がある訳でもないです。ただ、この映画は今年見たい映画の中でももっともリアルな人間の生活を映していました。
 本当に、主人公が通う学校に転校生が来て、そのキャラクターと仲良くなって色んな事をしている様子を眺めているだけの映画です。でもそれでも、主人公の演技が素晴らしいし、キャラクターもしっかりと生きている人間に見えたので、一切目が離せませんでした。

 キャラクターもそうですが、この映画は音響が素晴らしかったです。自然の音やキャラクターが動いた際に聞こえる音なども美しくて、細かい音とかも本物のようにしか聞こえませんでした。音楽とかもほとんどないし、音がリアルで聞こえている環境音だけで構成されたこの映画の世界にいる人間がよりリアルに見えるようになっていたと思います。

 本当に、人間や世界観がリアルであると言うところ以外に言う所がない映画ですが、その部分を突き詰めていました。最初に言った通り、この作品はほとんどストーリーがないし、このシーンが素晴らしいみたいなのもないし、特別な何かを持った人間が出てくるわけでもありません。
 それに、上映館数も相当に絞られてて、存在自体も知っている人も少ないですが、青春ドラマが好きな人からすれば探して見る価値だいぶあると思います。だいぶ好みが別れる感じですが、個人的には大好きです。



⑥年間ランキング:第7位


 そして第7位は、こっから先は今までの3つよりもまた1段階上という感じがあります。「るろうに剣心 最終章 The Beginning」です。

 ファイナルももちろん好きでした。アクションはスピード感に溢れてたし、何よりヴィランの縁がとてもかっこよかったです。ただ、映画としての満足度はこっちの方が上でした。よりキャラクターの内面に寄り添っていたと思いますし、アクションも派手でないながらも、トーンが他のシリーズ内の作品以上に重めなので、命にも重みがありました。

 キャラクターというか、剣心と巴が互いになんで惹かれあうのかという所が説明なしにもかなり伝わってきました。特別2人が恋に落ちるエピソードがある訳でもないし、なんで好きなのかとか説明もされないのですが、2人の物悲しげな演技が素晴らしくて、互いに自分の居場所をお互いへ求めあっていると言うか、ここで心の平穏をようやく見つけた感じがありました。

 上でも言いましたが演技も素晴らしかったです。剣心はいつも通りでしたが、巴を演じた有村架純が何よりも素晴らしかったです。元から邦画にしてはけっこうセリフが少ないシリーズでしたが、今回はそれにかなり拍車をかけていて、かなり静かな映画だったので演技力が相当に必要な作品でしたが、それに応えていたと思います。特に、彼女がある決心をするシーンは表情だけでそれを読み取れて素晴らしかったです。

 後はアクションも好きでした。今までのようにかっこいいと言う感じではないですが、感情が一番籠っていました。今までで一番精神的に剣心が追い詰められていたと思うし、それのおかげで、時系列的に負けないとわかっていても、本当に負けてしまうのではという気持ちが強かったです。元は血とかも出るけっこうバイオレンスな映画だったので、生死に重みがあってよかったです。

 原作ではファイナルとビギニングの順番が逆みたいですが、本作はどちらかというと、ファイナルの前日譚というよりはるろうに剣心全体の始まりの話という感じになっていて、縁もそこまで活躍しないし、剣心が人切りを辞めると言う所に話の焦点が合わさっていました。
 娯楽映画としてはけっこうアート寄りで、視聴者が読みとならなければならない要素が多い異質な感じの映画ですが、個人的には、今年の娯楽系の中では一番好きでした。



⑦年間ランキング:第6位


 そして、そんなるろうに剣心を抑えた第6位は「スウィート・シング」です。

 アル中の親父に育てられてる姉弟が主人公で、その親父が刑務所に入ったのをきっかけに離婚したクソやろうの妻の所に移住すると言う話です。

 白黒映画だから、上で紹介した「スクールガールズ」以上に相当とっつきにくいと思いますが、個人的には素晴らしかったです。非常に人間らしい人間の様子を見せていたと言うか、本当に人間っていい要素と悪い要素の両方が詰まっています。
 例えば1人の人を思い浮かべてもその人に対して好きなところもあれば嫌いな所もあると言ったような感じです。この映画はその姿を映すのが非常に上手でした。
 主人公の少女はもちろんのこと、それ以外の登場人物も、他の登場人物に対してプラスの感情とマイナスの感情が混じり合ってて、その間で揺れ動く姿だったり、大人と子供の中間くらいの年齢なのもあって、人とどう接していいのかわからない難しい感情を完璧に捉えていました。

 他にも、映画全体のけっこう重めのトーンに対比するような儚い幸せというか、トーンがたまに明るくなるタイミングがあって、そこがかなり好きでした。そのキャラクターの演技とかも含めて、ほんのわずかな、寝ている時に見るような夢の中にいる感覚が他の映画にないような感覚で大好きでした。キャラクターが楽しそうにしているのが見てて嬉しい反面、どこか釈然としないような感覚が素晴らしいです。

 青春ドラマ要素もありました。自分の家族や身の回りが上手く行ってないから悪いことだったり、自分が周りに理解されないと思ったりする姿は、やっぱり青春ドラマとして見た時に見ごたえがあります。毒親みたいなところがメインでもある一方で、そう言う被害を題材にしながらもその中で生きていく子供たちの本来の姿も見ることが出来ました。

 他の映画にはない複雑な二面性が混じり合っていた絶妙な映画だと思うし、子供たちの演技もそれに見合う自然な物をしていました。さっきも言いましたが白黒映画だし、話に強弱がある訳でもないので見る人はかなり選ばれるとは思いますが、個人的にはかなりおすすめです。



⑧年間ランキング:第5位


 そして、第5位は、けっこう「スウィートシング」と似たような映画ではあるのですが、より技術的に素晴らしいと思った「ミナリ」です。

 一攫千金を夢見てアメリカで農家を始めることにした韓国人の父親とその家族を映した映画です。この映画も「スウィートシング」や「スクールガールズ」のようにそこまでしっかりとしたストーリーはないけど、でも、映っている物が素晴らしかったです。

 この映画に映っている世界感は本当にリアルでした。何より演技が素晴らしいです。どのキャラクターも、いい意味で美しくない一般人のようでした。
 普通に生活していて家族しか見ている人がいない時、人間はそこまで他人にどう見られているかとか気にしないです。でも、映画によってはそれでもやたら家が綺麗だったり、ヴィジュアルがかっこよかったりするのですが、この映画は、主人公たちが町から離れたところにいるのもあって、かなり素の人間らしさを見ることが出来ました。細かいしぐさとか話し方が一般人らしく上品さがなくて、そこがリアルでした。

 ちょっと話は被りますが、演技も素晴らしかったです。みんな素晴らしいですが、子供役を演じたアラン・キムが本当にすごかったです。今年出てきた子役の中で断トツ1位の演技でした。無口な性格であんまり言葉を発しないのですが、そんな中でも感情が高ぶった時には子供らしさを見せていたり、表情とか動きだけで喜怒哀楽をしっかり表現していました。
 それに、かなり子供らしかったです。感情をうまくコントロールできない様や子供ならではの無邪気さが彼のキャラクターにはありました。今年も色んな子役が出てきましたが、その無邪気さに着色が合って不自然だったりすることも作品によってはちょいちょいある中で、この映画では本当に演技しているようには見えませんでした、

 あと、この映画は他にない美しいトーンを持っていました。上でも言っている通り非常にリアルな映画なのですが、同時に照明がかなり強めに使われていたり、音楽が特徴的で、詩的でもありました。全く真逆の要素が同時に混ざり合ってるし、それも、ポンジュノの映画みたいにどこかでトーンががらりと変わる感じじゃなくて、同時に2つが表現されています。さらに、それがけっこう違和感なくて、体にいいもの食べてるのに甘いデザートを食べてるような、本当に不思議な映画体験でした。

 アカデミー賞で作品賞を取るかもと言われていたようですが、それも納得です。演技も素晴らしいし、日常を垣間見ているだけなのにキャラクター皆興味深いしで、他にない魅力をたくさん持った映画だなと思っています。映画が好きな人であれば絶対に気に入る映画だと思います。おすすめです。



⑨年間ランキング:第4位


 おそらく「ミナリ」は今回紹介するランキングの中で1番注目されていた映画だと思いますが、そんな映画よりも素晴らしかった第4位は「17歳の瞳に映る世界」です。

 この映画では、妊娠した17歳の少女が堕胎の手術をしに行く数日間の様子を追いかけています。本当にそれだけの話ですが、演技とトーンが本当に素晴らしかったです。

 この映画では、その尺の多くをただ主人公が何かを眺めているだけの映像に使っています。それが興味深かったです。その間映っている物は一切変化しないのですが、その表情で今どんな気持ちなのかを深く感じ取ることが出来ました。それに合わせるように映画の中の会話もほとんどなくて、キャラクターがただ何かをしているだけみたいなシーンも多かったけど、その撮影だったり演技が素晴らしいから一切退屈することはありませんでした。

 あと、この映画はけっこう話が行き当たりばったりと言うか、唐突に言ってることが急に変わったりしたりするのですが、それが、まだお金も録に持ってないし頼れる人もいない17歳の少女が主人公の映画にはけっこう生々しくていいなと思いました。
 主人公の少女は一緒に付き添ってくれた従妹以外には頼れる人が他にいなくて、2人だけでは知らない場所で1日外泊することになっただけで一苦労です。そんな、ちょっとしたことでも苦労するし、それに冷め切ったような冷たい態度をしているようでも細かい演技から感情が溢れてしまう感じがトーンと演技の技量を感じました。

 あと、ネタバレになってしまうのであんまり語れないですが、あるシーンは本当に素晴らしいです。映画が数日間しか映さない上に完全に時系列通りに話が進むので、主人公が今までどんな生き方をしてきたのかというのを見ることができないです。ただ、このシーンだけで具体的な物はなくてもその内面を完璧に知ることが出来たと言うか、なんでこんなトーンの映画とキャラクターが出来上がったのかをそのシーンだけで完璧に捉えていました。

 かなり視聴者に解釈を投げられてて、見る人によって受け取り方が変わりやすそうだし、誰もが好きになれる感じではありません。ただ、青春ドラマが好きだと言う気持ちと、芸術性が高い作品も好きだと言う気持ちのどちらも満たしてくれたのはこの映画が一番でした。嫌いだと言う人もいるとは思うので、予告編を見てみるべきです。



⑩年間ランキング:第3位


第3位は、「Seaspiracy: 偽りのサステイナブル漁業」です。

 今年はいつもよりネットフリックスで映画を見ていることが多かったですが、その中でこの映画が1位でした。そして、ドキュメンタリーも楽しみにしていた物がいっぱいあった中でも、この映画が一番好きです。

 今年見た中で一番暗い気持ちになる映画だったし、見終わった後のどうしようもない感じもすごかったです。去年これを一番感じたのが「娘は戦場で産まれた」でしたが、今年はこれでした。自然面で見ても社会面で見ても、漁業にまつわる悪い部分を数多く見せていて、たった1つの業界だけでもここまで悪がはびこっていると言うことに衝撃を受けました。

 あと、題材も良かったです。どんな問題でも取り上げて題材にするのは素晴らしいですが、この映画ではなんでこの問題を取り上げたのかを監督である人物が出てきて解説していました。
 そのバックボーンと密接にかかわっているから、彼という人物を通して、その深刻さを再体験することが出来ました。あと、監督が自分1人で撮影をしている感じを全面に出していて、その素人感が好きでした。より彼に親密に感じるのもありますし、命の危険を感じるような撮影にも視聴者も一緒に危機を感じることが出来ました。

 それと、この映画は海外で作られた映画ですが、日本の漁業の問題についても取り上げている点があります。これは仕方ないことですが、どうしても海外の問題を見ていると、遠くの出来事に感じてしまいます。それが悪いとは思いません。ただ、この映画では日本に限らず、世界中の色んな所へ出向いて取材をしているので、どこかしらで自分に親身に感じれる部分はあると思います。

 見てて辛くなる映画ですし、人によっては目をそむけたくなるようなシーンも度々あるような作品ですが、ドキュメンタリーなので実際に起こっている事ですし、客観的データや起こっていることを視覚的にわかりやすく説明するVTRも多くてわかりやすかったです。ネットフリックスオリジナルなので、ちょっとハードル高いですが、登録してみてみる価値だいぶあります。



⑪年間ランキング:第2位


第2位は「由宇子の天秤」です。

 あらすじを紹介します。塾講師の手伝いをしながらドキュメンタリー番組の監督としている主人公女性は、父子家庭で暮らす貧困層の女子塾生が妊娠していることを知ります。それと同時進行で、いじめと教師からの不純異性交遊をきっかけに自殺をした少女の番組を作っていく中で、どんどん正義感が揺らいでいくと言う感じです。

 今まで脚本が薄いけど技量が素晴らしいと言う映画を多く紹介してきましたが、この映画は脚本も素晴らしかったです。とんでもないどんでん返しがあるみたいな感じとか、クリストファー・ノーランみたいに科学考証が素晴らしいとかそう言う感じではありません。主人公の感情の変化や周囲のキャラクターとの関係だったりが多種多様に飛んでいるのに、それが1つの筋に沿って描かれてたから、一切違和感はなかったですし、キャラクターにも多様な深みが産まれていたと思います。

 また撮影も素晴らしかったです。ドキュメンタリーが題材になっていると言うだけあって、ハンドカメラでブレさせながら撮影していたり、定点カメラでキャラクターが遠くへ行っててもそのままにしていたりしていることが多くて、この映画自体が1人の本物の人間を追いかけたドキュメンタリーの様でした。それのせいで目にくくなってしまっていると言う部分はありますが、それはそれで自分たちが触れられない向こう側の世界で人間が生きている生々しさがありました。

 そして、この映画はラストも素晴らしさに溢れていました。他のシーン以上に説明が少ないせいで、非常に解釈が分かれるような感じでした。キャラクターがしている行動もけっこう疑問が残る感じになっていて、映画全体への解釈が人によって分かれるようになっていて、マイナーな映画だけど語れる部分に溢れていたと思います。

 今年出た映画の中で最も考えさせられるストーリーや表現が出来ていた映画だったと思います。ドキュメンタリー監督の話だし、けっこう硬い映画なのかなと感じる人もいるかもしれないし、実際そう言う側面もあると思います。
 なので、好き嫌いはけっこうあると思いますが、けっこうヒューマンドラマ要素もあるし、人間同士の絆とかも描かれてるから、そこまで硬い映画に興味がない人にもおすすめです。


⑫年間ランキング:第1位

 そして、今年2021年の映画で一番素晴らしいと思った映画は、「アンモナイトの目覚め」です。

 この映画は本当に素晴らしかったです。あまり多くを語るような映画ではありません。ストーリーも無駄を限界までそぎ落としたような感じで、ジャンルとしては強いて言うならラブロマンスという感じです。

 研究を横取りされたせいで心を閉ざした女性と夫との愛が冷めてしまってうつ病になってた女性の2人が互いの居場所を見つけて愛を深めていくと言う感じの脚本です。

 会話も極力少なくなってて、キャラクター同士が微笑み合ってるだけあったり一緒に海を眺めてるだけみたいなシーンが多くて、動かない物をただただ映している様子が多いですが、どちらの女性も演技が素晴らしすぎるので、表情だったり細かい動きだったりで感情が高ぶったり落ち込んだりしていたり愛が深まっているのを読み取ることが出来ました。

 撮影も素晴らしかったです。光の美しい使い方によって、演技だけでなく視覚的にも彼女らの感情の変化を的確に表していました。それだけでなく、セリフがほとんどない詩的なトーンに合わせたような雰囲気にもなっていて、映画全体の印象に強く貢献していました。

 音響とかもほとんど音楽を使ってなくて、自然や海の音だけで感情を表現していて、彼女ら2人以外がほとんど背景になってしまっている2人だけの世界を映している様にしか見えませんでした。それのおかげで、より2人の愛が深くなっているのを感じました。

 今年見た映画の中で最も映画で出せる技術的側面の高さを一番感じた作品だし、個人的な好みである詩的な世界観を深く感じることが出来た映画でした。深いストーリー性やメッセージ性、感情表現などがある訳ではないので、恐らくこの作品を自分ほど気に入る人はいないかもしれません。ただ、個人的にはどの映画よりも素晴らしく感じました。
 素晴らしい技量で作られた映像に浸っているのが好きな人には絶対おすすめです。

⑬まとめ

 以上が自分の2021年ベスト映画ランキングトップ10となります。今年はけっこう似たような映画が上位を占めてしまって、もっとバリエーションを持たせたかったなという感想です。ただ、ずば抜けていい映画が割と多かったので、満足いく1年でした。

 あと、今年出た映画はいい映画も多かった一方で、悪い映画も割とありました。なので、出来るかわからないですが、早いうちに、今年のワースト映画ランキングも作ろうと思います。もしよかったらそっちもお願いします。

 

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