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狂う

ここ1週間ほどタスクに追われ、心と身体のバランスが優れなかったが、ようやく自分の時間を作ることができた。

時間があったので書店を歩いていると、一冊の本が目に入った。

『劇画ヒットラー』(水木しげる著)

『ゲゲゲの鬼太郎』以外で水木しげるの名を聞くのも初めてだったが、表紙の迫力に惹きつけられ、購入を決めた。

内容は50年以上前の1971年に少年誌にて連載されたヒットラーに関する伝記作品であるが、古さなど微塵も感じることなく、一気に読み終えてしまった。

考えてみると、ヒットラーという人物は、日本の教育において大量虐殺を行った独裁者としか学ばない。

しかし、この漫画の中においては、何の取り柄もなかった1人の男が“愛国心”ひとつで駆け上がり、一瞬の成功を手にして破滅するまでの物語が描かれていた。

彼の行った行為は、80年近くに及んで世界中で検証され続けており、もはや私が何かを意見するつもりはない。

だが、「何かに狂う」ことが世界にこれほどまでの衝撃を与えるのだというその影響力だけは、どんな自己啓発本よりも深く心に刺さった。

自分自身、いまの仕事における満足度は、20代の7年間を狂ったように仕事に捧げたことが理由であると自覚している。

だが、ヒットラーの国に対する想いは私のそれとは比べ物にならないほど強かった。

何をやってもうまくいかなかった浮浪者同然の男が愛国心ひとつで第一次世界大戦で狂ったように活躍し、認められる。だが、ドイツは戦争に負け、国はボロボロに。そんな状況に耐えられず、狂ったように政治活動に邁進。弁論を武器に政権を奪取したあとは、自分達の民族のことだけを考え、狂ったように侵略を行い、世界を震撼させた。

何かに狂っている人間は時間の使い方も普通ではなくなる。

きっと、なんでも器用にこなそうとする人間には一生見えないような景色を見ていたのだろう。

「狂う」ということだけに関しては、彼を超える人間を僕は見たことがない。

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